共産党の再生は可能か(その7)

立憲民主党の安保・原発政策の変質を批判した共産党が、なぜリベラル層の「受け皿」になれなかったのか

衆院選投開票日から2週間余り、各紙では高市自民党の圧勝と中道大敗の原因についての分析が続いている。前者についてはもう言い尽くされているので省略するが、後者の方はさほど見るべき分析がない。その中で、落選した元立憲民主党の重鎮たちが語った日経新聞のインタビュー記事「大敗の中道、どう生きるか」が目に留まった(「ニュースぷらす」2月20日)。

【馬淵澄夫・中道前共同選挙対策委員長】
――中道路線というコンセプトは間違っていなかった。比例で1043万票を取ったのは新党の大きな成果だ。これだけの民意を得ているんだから中道の灯を消しちゃダメだ。政権交代を叫び、与党に対峙した民主党の姿勢は古い政治だと思われてしまった。政策実現のための政策集団でスタートを切る以外ないと考えた。中道結成で一番争点化すると思われたのは原発と安全保障政策だ。両党の政調会長が知恵を出して皆さん賛同して参加し、ここは問題ないと思っている。だが、選挙戦は思うようにいかなかった。本当にあっという間に無党派が離れていく感覚だった。希望の党騒動では駅頭で怒鳴られ、罵られたが、今回は全くない。今までと同じ選挙では戦えない。必ず雪辱を果たして再起を期す。中道で活動を続ける(抜粋)。

【岡田克也・元外相】
――敗因は3つ感じている。まず政策論争が不十分で、争点がない選挙になった。次に中道は衆院解散の1週間前に結成したばかりで、党名や何をする党なのかという主張が浸透しきれなかった。中道という言葉は含蓄のある言葉であるものの、分かりづらかった。短期決戦において比例票が増えない理由になったかもしれない。立憲民主党の支持者による公明党への距離感もあっただろう。中道結成に際し、立民が安全保障法制に関して現実的な主張に立ったことも浸透しきらず評価に至らなかった。政策を真ん中に寄せたことがマイナスだったとは思わない。第3に、SNS上の誹謗中傷の問題は深刻だ。私や安住淳氏も集中的な個人攻撃の影響を受けた。中道の小川淳也代表には政権交代を目指すことを、ぶれずに中心に据えてもらいたい。あくまでも大きな固まりをつくっていくべきだ。国民民主党やみらいなどと協力する立場に立つ必要がある。中道に合流していない立民や公明党の参院議員も同様だ(抜粋)。

【吉田晴美・元立民代表代行】
――新党が衆院選の直前にできて「どういう党なのか」という声が多かった。「立憲民主党の吉田」でずっと活動してきたので、「吉田さんは変わったのではないか」と言われることが多かった。憲法や安全保障、原発といったリベラル系の支持層が一番気にする政策が不安材料になったと思う。小川淳也代表には党の組織運営の方針を早く出してほしい。焼け野原になったと言われるが、向き合うしかない。100人以上落選した元議員が言いたいことを言い、敗因分析しなければ次のステップを踏めない。私は若い世代が大事だと思い活動してきた。一番難しいのは、難しい議論をいかにシンプルにするか。それをきちんとやれるかが若い層に訴求できるポイントだ(抜粋)。

同じ党の要職にありながら、3人3様で言うことがそれぞれ違う。中道の理念、安保・原発政策変更に関する評価、今後の党運営に関しても各人各様の異なる主張が展開されている。そこには新党の理念や政策を十分煮詰めず、各候補者がバラバラで選挙戦に突入せざるを得なかった様子がよくあらわれている。これでは、立憲・公明両党の支持者が戸惑ったのも無理はない。とりわけ、立憲民主党を支持してきたリベラル層の戸惑いは大きかったのではないか。高市首相による衆院解散という「奇襲攻撃」と「推し活選挙」が相まって、空前の「高市人気」が沸き起こり(引き起こされ)、馬淵氏が言う如く、中道は「あっという間に埋没」してしまったのである。

もともとリベラル層とは縁の薄い野田佳彦氏が立憲代表に選ばれ、「中道リベラル」ならぬ「保守中道」を目指していたことは周知の事実だった。野田氏が公明の連立離脱を好機と捉え、新党結成に動いたのは当然の成り行きだった。だが、公明の連立離脱が「反自民」の空気を伝えるものとして予想外の反響を呼んだことから新党結成への期待が高まり、マスメディアや専門家の間でも「ひょっとすると」の観測が流れた。だが、今となって見れば、この期待は全くの「的外れ」に終わった。政党政治への不信と苛立ち、民意の流動化の影響の方がはるかに大きかったのである。

前回衆院選(2024年)と今回衆院選の投票先を聞いた毎日新聞の世論調査(2月21,22日実施)によれば、中道大敗の原因となった有権者の投票行動の変化がよくわかる。以下は、その骨子である。

(1)回答者全体の35%を占める無党派層の今回の小選挙区投票先は、自民20%、中道16%、国民民主5%、維新3%、共産3%。前回の小選挙区投票先は、立憲16%、自民12%、維新4%、参政党3%、国民民主3%だった。

(2)前回の小選挙区で立憲に投票したと答えた人のうち、今回、中道に投票したのは66%、12%は自民に投票したと回答。前回、公明に投票した人は約7割が中道、約2割が自民に投票したと答えた。前回小選挙区で立憲、公明が獲得した票のうち約3分の1が他党に流れ、3分の2程度しか中道に投票しなかった。

(3)ただ、自民が強い「数の力」を持つことには慎重な意見も多い。衆院選前の1月調査で自民の単独過半数が好ましいかを聞いた質問には、「望ましい」27%、「望ましいとは思わない」42%だった。2月調査でも、自民が単独で3分の2超の議席を得た結果について、「よかったと思う」30%、「よかったとは思わない」39%だった。

世論では、衆院選前には自民が単独過半数を占めることについて「望ましいとは思わない」が多数を占め、選挙後は自民が単独で3分の2議席超を占めたことについても「よかったとは思わない」が多数を占めているにもかかわらず、自民が圧勝したのはなぜか。私はその原因の一つに、共産党が新党結成に失望したリベラル層の「受け皿」になれなかったことがあると考えている。事実、毎日世論調査では、前回衆院選小選挙区で「立憲に投票した」人の12%が今回は自民に投票し、共産はその対象にならなかったのである。

紆余曲折はあったが、市民と野党の共闘が2016年に成立して以降、現在まで4回の衆院選が行われてきた。この間、立憲民主党の比例得票数・得票率は、2017年1108万4千票(19.8%)、2021年1149万2千票(20.0%)、2024年1156万5千票(21.2%)と得票数は1100万票台、得票率は20%前後の高台を維持してきた。これに対して共産党は、2017年440万4千票(7.9%)、2021年416万6千票(7.2%)、2024年336万8千票(6.1%)と減少の一途をたどってきた。選挙結果から言えば、共産は野党共闘に貢献したにもかかわらず票を減らし、立憲はその成果を「独り占め」してきたと言える。立憲支持層は(京都選挙区でも見られたように)もともと「非自民・非共産」の体質が強く、候補者を立てない選挙区でも共産に票を回すようなことはなかった。今回の衆院選では立憲が解党したにもかかわらず、共産はそれに失望した立憲支持層3分の1の「受け皿」になれなかったのである。

市民活動家が意見交換するネットの「市民フォーラム」では、立憲が壊滅し、共産が衰微する一方の政治情勢の下で、革新勢力の再興を図るための意見や提案が飛び交っている。その中には共産党に対する「民主集中制」党規約の改革や党首公選制の提案も含まれている。さまざまな意見や提案が交錯する中で、最近注目すべき見解が示された。以下、少し長くなるが、哲学者・碓井敏正氏のコメントを紹介しよう(市民社会フォーラム、2月20日)。

――皆様、初投稿をする碓井敏正と申します。皆様のご意見に賛成ですが、共産党の抱える問題は想像以上に深刻です。この問題は、すでに100年以上前にドイツ社会民主党の幹部で社会学者のミヘルスが『現代民主主義における政党の社会学』(1911年)で、また最近ではパーネビアンコが『政党』で明らかにしたように、一般の組織以上に、政党組織は固有の問題を抱えているからです。それは、①組織は一旦成立すると、本来の目的よりも組織の維持を自己目的化する、そのため社会変革より勢力の拡大(党員や機関紙増)を重視するようになる。②幹部が組織と自己を一体化することにより、寡頭的支配が強まり、異論を受け付けつけず排除する。民主集中制がその根拠となる。松竹、鈴木氏の除名問題はその現れでしょう。

これらの傾向は専従幹部の自己利益と結びついているため、改革は容易ではありません。特に反体制の社会主義政党は、専従幹部は組織外で生活できないため、この傾向が強くなります。これらの問題について、私の専門は哲学ですが、経営組織論を参考にして、これまで『日本共産党への提言』(2023年)、『日本共産党、再生への条件』(2025年、いずれも花伝社)において論じてきました。また今年中に(来年1月の党大会までに)花伝社から3冊目の著書を出す予定です。なおこの点について、2年前に松竹氏とユーチュブで対談をしています。視聴者は1万人を超えていますが、参考にしていただければ幸いです。

ただ今回の総選挙の結果は、共産党だけの問題ではなく、深刻です。特に若者層を中心とした社会意識の変化、すなわち戦後の平和主義や憲法理念を当然視しない国民が増えているという事実が、背景にあるのではと思っています。それだけに今後の日本の革新運動は、これまで以上に困難になる気がします。その点でまず求められるのが、国際情勢の変化(特にアメリカの一極支配の終焉、中国の台台など)をはじめ、現状の分析だと思います。

拙ブログにおいても碓井氏の見解はその都度紹介してきたが、今回のコメントはそれらのエッセンスとも言うべき内容が簡潔に述べられている。碓井氏の著書に対する共産党の反論はまだ出ていないが、今年3月の第7回中央委員会総会あるいは来年1月の第30回党大会ではこれを黙殺することは許されないだろう。共産党の再生の第一歩は、今回衆院選の総活をどう打ち出すかに懸かっているからである(つづく)。

初出:「リベラル21」2026.03.03より許可を得て転送
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〈記事出典コード〉サイトちきゅう座  https://chikyuza.net/
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