法律家6団体の代表が共同声明
改憲問題対策法律家6団体連絡会が3月17日、「アメリカ及びイスラエルによるイランに対する攻撃に抗議し、即時停戦を呼びかける」と題する声明を発表した。同連絡会は、日本国憲法の理念に基づく政治の実現を求めて活動している法律家の団体で、社会文化法律センター、自由法曹団、青年法律家協会弁護士学者合同部会、日本国際法律家協会、日本反核法律家協会、日本民主法律家協会が加盟している。法律家の団体の声明とあって、米国、イスラエル両国の今回の行為を法律の面から厳しく糾弾している。
声明は、まず米国・イスラエルがイランに対して行っている攻撃を仔細に記述した後、「この行動は、明白に国際法に違反する武力行使(戦争)である。……アメリカやイスラエルの『自衛のためだ』という主張は根拠がなく、これ自体が国連憲章51条に違反する『武力の行使』に当たる。そもそも、国連憲章2条4項は、武力の行使及び武力による威嚇を禁止している。紛争当事国は、国連安保理会その他の外交チャンネルを通じて、紛争を平和的に解決すべき国連憲章上の義務があるにもかかわらず、これを踏みにじったものであり、これを容認することはできない」と断じている。
次いで国連の安保理事会の動きを取り上げ、「安保理事会の議長国が英国(2月担当)から米国(3月担当)に変わる節目に、今回の侵略行為が行われたたことは、国連憲章の明白な違反行為であっても、これを何としても押し通そうとする陰険な意図がうかがわれ、かつ、計画的な企みである可能性も否定しがたい」と指摘している。
さらに、声明は「アメリカは、今回の軍事攻撃について議会の事前の承認どころか、説明すらせずに、適法な国内法上の手続きを経ていない。これは法治原則に対するあからさまな侮蔑に他ならない」と批判している。
末尾で、日本政府に対して「国際法遵守の立場を堅持し、『力による国際法秩序の変更』を認めないこと、関係国からのいかなる働き掛けがあっても、国際法違反の軍事攻撃に日本が加担することはないことを、明確に宣言して、軍事攻撃の即時停止と再発防止に全力を傾注すること」を求めている。
声明全文は次の通り。
アメリカ及びイスラエルによるイランに対する攻撃に抗議し、即時停戦を呼びかける
改憲問題対策法律家6団体連絡会
社会文化法律センター共同代表理事 海渡雄一
自由法曹団団長 黒岩哲彦
青年法律家協会弁護士学者合同部会議長 田村優介
日本国際法律家協会会長 田中俊
日本反核法律家協会会長 大久保賢一
日本民主法律家協会理事長 稲正樹
私たちは、改憲問題に取り組む法律家6団体をそれぞれ代表するものである。
2026年2月28日朝(イラン時間)、アメリカ及びイスラエルは、イランの首都テヘランほかイラン国内の軍事拠点などを空爆した。地中海及びアラビア海に展開していたアメリカ原子力空母の艦載航空機による空爆だけでなく、アメリカ本土からB2爆撃機が出撃し、また横須賀を母港とする駆逐艦も出撃してトマホークによる攻撃に参加したと伝えられている。イラン国内では現在までに2000 名を超える死者が記録され、その大部分は非戦闘員であると言われている。また、イランの国家元首兼政府首 班であるペゼシュキアン大統領は無事であるが、イスラム教シーア派最高指導者ハメネイ師ほかかなりの数の指導層(いずれも国際人道法に言う非戦闘員)が殺害され た。他方、イラン革命防衛隊は、湾岸諸国に展開するアメリカ軍事基地やイスラエルの都市などに対してミサイルやドローンによる反撃を行い、ホルムズ海峡の通行を制限する措置をとっている。さらに、キプロスに向けてミサイル攻撃があったとされているが、これが事実であれば、NATO全体に対する攻撃とみなされて、戦火は飛躍的拡大することになる。
アメリカのトランプ大統領は、今回の攻撃が「アメリカの権益を守る軍事行動」にすぎず、イランが核兵器を製造する可能性があるので「先制防衛した」と強弁している。 また、イスラエルのネタニエフ首相は、イランが核兵器をもてば取りかえしのつかない脅威となるのを防止するためと説明している。イランがこの時点で、アメリカやイスラエルに対して武力の行使または武力による威嚇を行った事実はない。
この行動は、明白に国際法に違反する武力行使(戦争)である。スペイン政府は、かかる理由を挙げて、アメリカ軍への軍事基地の提供を拒絶した。アメリカやイスラエルの「自衛のためだ」という主張は根拠がなく、これ自体が国連憲章51条に違反する「武力の行使」に当たる。そもそも、国連憲章2条4項は、武力の行使及び武力による威嚇を禁止している。紛争当事国は、国連安保理会その他の外交チャンネルを通じて、紛争を平和的に解決すべき国連憲章上の義務があるにもかかわらず、これを踏みにじったものであり、これを容認することはできない。しかも、安保理事会の議長国が英国(2月担当)から米国(3月担当)に変わる節目に、今回の侵略行為が行われたたことは、国連憲章の明白な違反行為であっても、これを何としても押し通そうとする陰険な意図がうかがわれ、かつ、計画的な企みである可能性も否定しがたい。
アメリカとイランの核施設に関する協議は、直前の2月26日まで実施され、継続協議が予定されていたにもかかわらず、事前通告もなく協議がキャンセルされ、軍事攻撃が開始されたことは、看過できない。さらに、アメリカは、今回の軍事攻撃について議会の事前の承認どころか、説明すらせずに、適法な国内法上の手続きを経ていない。これは法治原則に対するあからさまな侮蔑に他ならない。
また、目標への接近や目標の識別について生成AIの技術が使用されたことは、先端AI技術の軍事利用に関して保持しなければならない閾(しきい)を踏みにじる行為であり、さらに生成AIの利用が拡大され、殺傷や破壊を拡大し、かつ、その精度が上がるおそれがあり、科学技術の平和利用と互恵の精神を著しく損なうことが危惧される。実際にも、イランでは、軍事目標ではありえない小学校が標的にされ、戦闘員ではありえない小学生が160名以上も殺傷された。これ自体、国際人道法に違反し、国際刑事法(国際刑事裁判所のローマ規程)に違反する戦争犯罪である。さらに、特定の宗教集団の殲滅を目的としたものであれば、ジェノサイド犯罪(集団殺害犯罪や人道に対する犯罪を構成する。また、体制変革(レジーム・チェンジ)を狙ったものであれば、侵略犯罪に相当する。
すでに世界各地で、この戦争に対する反対・抗議・糾弾の声が上がっている。アメリカ国内においても、「戦争にわれわれの税金を使うな!」という声が上がり、「戦争で高い石油を買わせるな!」という切実な声が上がっている。
80年以上も前に世界的な規模での戦争を体験した日本に住む一員として、私たち法律家は、「政府の行為による戦争の惨禍が起こることのないようにすること」を改めて決意し、関係当事国に即時停戦と平和的解決を呼びかける。また、日本国政府に対して、私たちは、アメリカとイスラエルのイラン攻撃が、明白な国際法違反であり許されないこと、日本政府は国際法遵守の立場を堅持し、「力による国際法秩序の変更」を認めないこと、関係国からのいかなる働き掛けがあっても、国際法違反の軍事攻撃に日本が加担することはないことを、明確に宣言して、軍事攻撃の即時停止と再発 防止に全力を傾注することを求めるものである。
初出:「リベラル21」2026.03.20より許可を得て転送
http://lib21.blog96.fc2.com/blog-entry-7009.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion14735:260320〕









