「法律が変わり、『御薬手帳』が義務づけられました。」

 先日の夕刻、勤務からの帰途に病院に寄り、短時間の診察の後、近くの保険薬局で調剤してもらい代金を払おうとしたところ、「御薬手帳」の所持を問われて、云われたのが表題の言葉でした。 確か、以前にも同様のことを云われた記憶があり、その際には、医療機関や薬局に、何かと辛気臭いことを義務づけ注意喚起をするのでお役所の中でも「昔からあーせい厚生省と云われていますものね」と笑って応じたのですが、「御薬手帳」等と云うものを持ち歩くのは嫌なので、保険調剤薬局へ持参したことはありませんでした。 
 今回は、はっきりと「法律が変わった」と云われましたので、流石に、無視は出来ず、即座に反論しようとしましたが、他に所要があったので、翌日に当該の薬局へ電話しました。 当日の薬剤師が電話口に出たところで、法律が変わった、と云うのは嘘で、診療報酬の算定方法に関わる告示が改正されて、保険薬局が、一定の義務を履行することを条件に、「薬剤服用歴管理指導料」の点数41点が附加されることになったのであるから、本末転倒した嘘をついたことになる旨を述べましたところ、「言葉が悪かった」等と云われました。 これには、「言葉の問題では無くて、虚偽の事実を云われた」と追撃しましたところ、漸く、謝罪されたので、今後虚偽の事実は述べずに、薬学的な指導に必要なので、出来るだけ持参して欲しい、と患者に正しく説明されるように求めて通話を終わりました。 

当該の「告示」の関係部分は以下のとおりです。

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[告示] 診療報酬の算定方法

10 薬剤服用歴管理指導料(処方せんの受付1回につき) 41点

注1 患者に対して、次に掲げる指導等のすべてを行った場合に算定する。

イ 患者ごとに作成された薬剤服用歴に基づき、投薬に係る薬剤の名称、用法、用量、効能、効果、副作用及び相互作用に関する主な情報を文書又はこれに準ずるもの(以下この表において「薬剤情報提供文書」という。)により患者に提供し、薬剤の服用に関して基本的な説明を行うこと。
ロ 処方された薬剤について、直接患者又はその家族等から服薬状況等の情報を収集して薬剤服用歴に記録し、これに基づき薬剤の服用等に関して必要な指導を行うこと。
ハ 調剤日、投薬に係る薬剤の名称、用法、用量その他服用に際して注意すべき事項を手帳に記載すること。
ニ 患者ごとに作成された薬剤服用歴や、患者又はその家族等からの情報により、これまでに投薬された薬剤のうち服薬していないものの有無の確認を行うこと。
ホ 薬剤情報提供文書により、投薬に係る薬剤に対する後発医薬品に関する情報(後発医薬品の有無及び価格に関する情報を含む。)を患者に提供すること。

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「ハ」には、はっきりと薬局側の義務を明記してありますし、患者側には、何の義務も法定されていません。
 これだけでは、単なる「クレーム」の一つとして処理されてしまいますので何の改善にも繋がりません。 そこで、監督官庁へ要望若しくは陳情として文書を送ろうと思いました。 根が執念深いのでしょうか私は。

以下が要望文書です(一部伏せてあります)。

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○○厚生局 御中

 御公務繁忙時に仔細な事象を御伝えすることを御許し下さい。
 要点を記しますと、保険調剤薬局でのいわゆる「お薬手帳」なるものに関わる虚偽の「説明」について貴管下の保険調剤薬局を御指導賜りたく御願いを致します。
 私自身も、周囲の者もが経験いたしまして、一様に不審な感慨を持っているのです。 それは、保険調剤薬局において、「今年4月から法律が変わりお薬手帳を持参することが義務になりました(加えて、御役所は現場を知りませんから云々とも云われます)」と言われることです。 これは、何処の薬局も同様に言われるので、一定地域の薬局業態の同業者組合か、それに類した団体の「研修会」若しくは何らかの会合において申し合わせがされているようです。 
 私の場合は、当該の保険調剤薬局に対して、「法律の改正とは虚偽であり、そのような義務が新設されたことは無い。 診療報酬の算定方法に関わる告示が改定され、一定の義務を履行後に『薬剤服用歴管理指導料』点数41点が付与されるように改定されたのであるから、保険点数を付加するに相当な説明をされるのが当然である。 所管官庁が悪意のある如く描くのは不当である。 医療従事者として社会的責任を負う身が虚偽を伝えてはいけない。」旨を伝え、改善されるように促しました。 また、薬局名が特定されないようにはするが、○○○○に書くことを伝えました。
 要点に記載のとおり、かなり悪意のある説明方法が採られておりまして、保険点数41点獲得のためにする利己的説明を、所管官庁を盾にして組織的に行っているようです。 これは、仮にも所管官庁の許認可を得て営業しているものとして、社会規範に違背しているものと云わざるを得ません。 また、薬剤師と云う医薬に関わる有資格者を雇用している業態にとっても在ってはならないことと信じます。 
 私は、保険点数の加算を願う業者の欲得より出た医療関係者に有るまじき虚偽の説明を許せません。 係る虚偽の説明を根絶されるように保険調剤薬局(業態全て)を御指導賜りますように御願いいたします。 医療保険財政が危機にある現状からも、係る虚偽による営業利益の最大化は断じて許すべきではないと信じます。 
         
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数日後には、厚生局から、私の指摘は事実どおりであることと、要望を今後の執務に生かすこと等とともに、丁重な謝辞がありました。 たった一人でも要望なり陳情をすることが我々国民の権利を擁護することに繋がると思います。
 同じ経験をされた方は、御自身がお住まいの地域を管轄している厚生局へ要望をメールされれば良いと思います。 東海、近畿、中国と各地域に厚生局はあります。 身近な役所の窓口や、企業のクレーム処理担当者相手に「切れて」いても消耗するだけです。 正規の道筋で要望(陳情)を出して行くことが重要でしょう。 でも、(薬局で)私も見縊られたもの、と思いました。 年格好が痴呆性老人に観えたのか、無知・無学な者に観えたのか。 医療関係者も地に落ちたものです。 ここにも人を騙すことを何とも思わぬ輩が居るのです。