シリアのテロリストにたいする西側援助は終わりの時だ

シリア紛争は混迷の一途をたどり、 すでに何万人もの死者、二百万人を超える国外避難民を生み出している一方で、反アサドに収れんする報道の偏りにあふれています。紛争開始 前から、安易な人道懸念ではなく米国、イスラエルの関与に着目するチョスドフスキーらの論考もいくつか紹介してきました。

タイのバンコクを拠点にオルタナ ティブ・ニュース・ネットワークや反体制メディア・ウェブサイトで発言してきた地政学研究者:トニー・カルタルッチ氏のグローバル・リ サーチ誌の論考を、拙訳ですが紹介いたします。

彼は、ニューヨークタイムズなどの 報道分析から、米国および西側同盟諸国は「テロリズムを下支え」するため「シリア反乱軍」として活動しているアルカイダおよびアル・ヌスラ戦線に「膨大な資金援助、武器供与をしてきた」とし、「米国は、シリアの国境に沿って生じた殺戮、残虐行為、および人道的大惨事に直接 の責任がある」と告発しています。

それにしても一国の国防軍に匹敵する武器を国外から反政府陣営に供与されたら、どんな国家も「内戦状態」になるのは必至です。「内戦から国家転覆」という構図は、米国の中南米侵略の常套手段でした。アフガニスタン、イラク、リビア、そしてシリア、(イラン)へとイスラエル周辺のイスラム国家がなぎ倒されていく構図は、侵略と人種差別の国イスラエルを特別擁護し続ける米国および西側の基本戦略なのでしょう。戦争という殺戮から人類は脱却できるでしょうか。(2013年5月15日記)

※その後、童子丸開さんの修正に よって一部改訳されたものです。

■シリアのテロリストにたいする西側援助は終わりの時だ:「反体制派」は完全にアルカイダに動かされている

Time to End Western Support for Terrorists in Syria: Opposition is Entirely Run by Al Qaeda

By Tony Cartalucci

トニー・カルタルッチ(松元保昭訳・童子丸開修正)

2013年4月28日

グローバル・リサーチ誌より

※【訳者注】報道各紙からの著者の引用文はすべて【 】で括っています。また、rebelは、日本では通常、「反政府勢力」「反政府軍」あるいは「反体制派」などと訳されていますが、実態に即して「反乱軍」としています。oppositionは、「反体制派」。

※出典は以下。
★Global Research  April 28, 2013
http://www.globalresearch.ca/time-to-end-western-support-for-terrorists-in-syria-opposition-is-entirely-run-by-al-qaeda/5333204

★Intifada Palestine  Posted: 04 May 2013 05:46 PM PDT
http://feedproxy.google.com/~r/intifada-palestine/yTiY/~3/jpuFMOVaAQQ/?utm_source=feedburner&utm_medium=email

驚くべき事実だが、ニューヨークタイムズはいわゆる「シリアの反体制派」は完全にアルカイダに動かされていると認め、文字通り次のように表現している。「反乱軍に支配されたシリアには、話題になるような世俗的な戦闘軍などどこにもない。」

シリアの紛争は「民主主義を擁護する」のプロテスターたちが立ち上がっているなどというのではなく、むしろ米 国、イスラエル、およびサウジアラビアがシリア政府に敵対しているアルカイダと連携した宗派主義の過激派たちを武装し指揮するため に、すでに十分証拠がそろっている陰謀を達成することであった。これは地政学的なアナリストには最初から明らかだった。

画像:シリア、イドリブのアルカイダ・テロリストたち。完全武装のいわゆる「反体制派」は、すべてアルカイダによって構成されていると現在ニューヨークタイムズに確認されている。西側および地域の同盟諸国によって 「反体制派」に流された現金および武器の奔流は、空前の残虐行為という数多くの犯罪が列挙されているテロリストたちに直接故意に送られてきたことを意味する。(Edlib News Network Enn, via Associated Press)

これは、ピューリツア賞を受賞したジャーナリスト、 シーモア・ハーシュによるニューヨーカー誌の「再審:反テロ戦争における政権の新政策は敵を利しているか?」と題された記事の中で、2007年―「アラブの春」が始まる2011年のたっぷり4年前に―早くも報道されていたことである。記事は次のことを明確に述べていた。(強調点追加)

【シーア派が支配的なイランに対し て、ブッシュ政権は、イラン転覆策謀を中東における最優先事項として再構築することを事実上決定した。レバノンでは、米政権はイランに後 押しされるシーア派組織ヒズブラの弱体化を意図する秘密作戦でスンニー派のサウジアラビア政府と協力した。また米国は、イランおよびその同盟国シリアを標的にした秘密作戦にも参加した。これらの行動の副産物は、アメリカに敵対的でアルカイダに共感を示すイスラムの好戦的なヴィジョンを採用するスンニーの過激派グループを梃子入れすることであった。】

米国、英国、フランス、サウジアラビア、カタール、ヨ ルダン、およびトルコは、過去二年間、リビア、チェチェン、隣接するレバノン、ヨルダン、イラク出身の札付きのテロリストサイドのシリア 内部に何千トンもの武器と何十億ドルもの現金を送った。「米国およびヨーロッパ、ザグレブ経由でシリア反乱軍に大量の武器空輸」と、電信 記事で報じられている。

【11月以 来、ザグレブ空港から主にヨルダン経由で、旧ユーゴスラビア戦争由来の兵器3000ト ンが75回の空輸で反乱軍へ輸送されていると告発された。】

【先月のデイリー・テレグラフ紙や 他の新聞で報道されたように、オンラインビデオを通じて旧ユーゴに由来する武器が反乱軍の手中に増大している事実が確認されており、以前 疑われていた以上にはるかに膨大な量が流れ込んでいることを示唆している。】

【その積み荷は、シリアに隣接する トルコおよびヨルダンを通して組織的な武器供給の支援が行われ、米国の指示のもとサウジアラビアによって支払われたと伝えられていた。し かしこの報道では、クロアチアからのものと同時に「英国を含む数か国のヨーロッパ諸国から」と付け加えているが、英国が供給もしくは調達 した武器であるかどうかは特定していない。】

【しかし、反乱軍のリーダーやシリア軍の元将校らに訓練を提供しているフランス人やアメリカ人と並んで、英国軍事顧問がシリア隣接諸国の国境で作戦を行っていることはよく 知られている。またアメリカ人も、シリア内部にある化学兵器サイトを確保する訓練を提供していると考えられている。】

付け加えれば、ニューヨークタイムズ紙は「CIAの援 助で、シリア反乱軍に武器空輸の拡大」という記事で次のことを認めている。

【反乱軍司令官の報告および数か国 の将校のインタビュー、さらに航空管制記録によれば、アラブ諸国政府およびトルコはCIAの助けを借りて、この数か月間に、大統領バッシャール・アル・アサドに敵対して蜂起するための装備および機密の武器空輸を拡大し、シリアの反体制戦闘員に対する軍事援助を著しく増強した。】

【2012年 の早い段階で小規模に始まった空輸は、昨秋を通して断続的に続けられ、年末には定着したかなり大量の流れに拡大したことがデータに示されている。ヨルダンから160便以上の 空軍貨物機、そしてサウジおよびカタールの軍用貨物機がアンカラ近郊のエセンボガ空港に着陸し、また便数は少ないがトルコとヨルダンの空港にも着陸している。】

より近いところでは、米国務省が、10億ドル以上の資金援助の目標到達に「合わせる」ようにという同盟諸国の要求に沿う形で、シリアでの戦闘作戦に対 する援助物資、装備や装甲車輛にいたるまで、数億ドルもの追加をすると発表していた。ニューヨークタイムズ紙はその記事で、「米国はシリアの反乱軍に二倍の援助をするとケリーは語る」で、次のように報道している。

【新規援助の約束に伴い、米国からシリア国内の連携・市民グループへの非軍事的援助の総額は2.5億ドルとなる。この会合のあいだ、ケリー氏は国際的な援助として10億ドルの提供を目標に他の国々にその援助を強化するよう迫った。】

この現金、武器、軍事的装備が天文学的規模の奔流と なって西側からシリア内部へ公然と送られていたとき、戦闘のかなり初期の段階からだが、米国務省はシリア内部で展開する最も突出した戦闘 グループはアルカイダ、より正確にはアル・ヌスラ戦線であると認識していた。米国務省の公式プレス声明は、「イラク・アルカイダの別名で あるアル・ヌスラ戦線のテロリスト指定」と題して、はっきりと次のように述べていた。

【2011年11月 以来、アル・ヌスラ戦線は、40回以上の自爆攻撃から小火器 および即席の爆破装置作戦にいたるまで―ダマスカス、アレッポ、ハマー、ダーラ、ホムス、イドリブ、さらにダイール・アル・ザウルを 含む主要都市中心部でほぼ600回の攻撃をしたと主張している。これらの攻撃のあい だ、おびただしい無実のシリア人が殺害された。】

米国務省は、かなり初期の段階からアルカイダがシリア のあらゆる主要都市で何百回もの攻撃を実行してきたことを認めている。ニューヨーカー誌に掲載された2007年のハーシュの記事を読んだものにとって、さらにはシリアにおけるアルカイダの隆盛を目撃したものには明瞭であり、その説明はいたって簡単である。―つまり西側はシリアに足掛かりを得るため故意にかつ組織的にアルカイダに資金を提供し武装させ、次いで空前の宗派間大量殺戮と引き続く人道的破局のなかでシリア政府を転覆する、まさにこれが何年も前に計画されていたことなの だ。

ところがいま、西側の指導者によれば、米国、英国、フ ランス、サウジアラビア、カタール、ヨルダン、およびトルコはシリアに何十億もの現金および何千トンもの武器を洪水のようにあふれさせているにもかかわらず、すべてはもっぱら「世俗的な穏健派」に送ったもので、どうしたことか、アルカイダは「反体制派」のなかで抜群の成果 を上げて依然うまくやっていると、一般の人々が信じるよう期待されているということだ。

どうしてこのようなことになるのか? もし7か国枢軸が「世俗的な穏健派」を後押ししてそれらの軍需物資の全てをその地域に配備しているのなら、それでは いったい誰が、アルカイダを後押しするためさらに多くの軍需物資を配備しているのか? その答えは簡単である。「世俗的な穏健派」などどこにも無かったのだ。ニューヨークタイムズがもう十分に認めている事実である。

「イスラム反政府勢力はシリア政策にジレンマを引き起 こしている」と題された記事で、ニューヨークタイムズは次のように認めている。

【シリアの至る所、反乱軍が支配した地域は、過激派が率いる戦闘集団によって弁護士や聖職者が配置されたイスラム法廷が点在している。その構成が過激グループを脇に追いや ると西側が期待する反乱側包括組織の最高軍事評議会の中にさえ、将来のシリア政府の中にイスラム法を吹き込みたいと願う指揮官たちが存在 している。

反乱軍が支配したシリアでは、話題 にするほどの世俗的な戦闘軍などどこにもない。】

しかしながら、論拠を無視する説明の中で、記事は次のように述べる。

【反体制派のイスラム的性格は反乱 の主要な支持層を反映している。反乱はその開始以来シリア人の多数派であるスンニー派イスラム教徒によって率いられてきたが、彼らの大部 分は保守的な周縁地域に住んでいる。野蛮な内戦に陥ったために宗派間の違いは頑ななものになり、さらにより多くの反乱側主要グループが定 期的な武器供給の確保に失敗したことが、イスラム原理主義者たちにその空隙を埋めて支持者を獲得するのを許してしまったのだ。】

「誰から「定期的な武器供給の確保」するのか? 西側 諸国によれば、彼らは「主流の反乱グループ」に何十億ドルもの現金と数千トンの兵器類を供給し続けてきたし、いまやそのうえに、BBCに よれば、訓練まで提供しているのだ。故意に直接アル・ヌスラの手中に収まるのでなければ、これらの現金、これらの武器、および訓練のすべてはどこへ行ってしまったのか?

ニューヨークタイムズはまた次のように認めている。(強調点追加)

【米国がもっとも懸念しているのは ヌスラ戦線である。その指導者が最近断言したところによると、このグループはイラクのアルカイダと協力しており、さらにアルカイダの最高 指導者で長年オサマ・ビン・ラディンの副官を務めたアイマン・アル・ザワヒリに忠誠を誓っているのだ。ヌスラは、数多くの自爆攻撃は自分たちがやったと主張し ており、国外からシリア内に流れ込むジハード主義の生え抜きグループである。

現在シリア政府は、認知されたアルカイダのテロリスト と公然と戦っているだけでなく、シリア国民ですらないテロリストとも戦っているのだ。

さらに常軌を逸していることに、ニューヨークタイムズ は次のことを十分に認めている。欧州連合は制裁を解いて現在シリアから石油を買っているのだが、まさにその油田地帯が完全にアルカイダに 支配されている(BBCの、「EUは反体制派を援助するためシリアの石油禁輸措置を緩和」を見よ)。つまりこういうことだ。欧州連合はいまや石油と引き換えに、有名な国際テロリストの恐るべき残虐行為に対して意図的に現金を支払っているのである。ニューヨークタイムズの報道では、…。

【他の場所では、彼ら[アル・ヌス ラ]は政府の油田地帯を奪い取り、その従業員を連れ戻して作業させ、そしていまやそこで生産される原油から収益を得ているのである。】

さらに、

【ディル・アル・ズールやハサカと いう石油の豊かな地方では、ヌスラ戦闘員たちは政府の油田地帯を奪い、そのいくつかは部族民兵の支配下に置き、他は彼ら自身が運営してい る。】

続いてタイムズ紙は次のように認める。(強調点追加)

アレッポではヌスラの支配が非常に強く感じられる。そ こで、このグループは元の小児科病院に野営場を作り、隣接する眼科病院の中に別の反乱軍グループとともにイスラム法決定機関を創設して、 市の反乱軍制圧地域の指揮管理をおこなっている。この機関は警察力と、他の国々で一部のシャリアー裁判所が行ってきたような切断や処刑で ないにせよ、鞭打ち刑を含む判決を下すイスラム法廷を動かしている。ヌスラ戦闘員はまた、発電所を管理し、さらに市のパン屋の営業を維持するために小麦粉を分配し ている。

この最後のポイント、「さらに市のパン屋の営業を維持 するために小麦粉を分配している」は、非常に重要である。なぜなら、彼らが「分配」している「小麦粉」は明らかに直接アメリカ合衆国から送られて来るのだから。

ワシントンポスト紙の記事、「米国、シリア人に食糧、 だが内密で」では、次のように述べている。

【アレッポが属するシリア北部州の 反乱軍制圧地域の中心部では、恐れを知らない西洋人の小グループが非常に隠密な任務を引き受けている。小さな田舎の村落で匿名で生活して いる彼らは、爆撃や空爆さらに誘拐の脅威をものともせず貧しいシリア人のために食糧や他の救援物資を配布するため標示のない車で毎日通っ ている。―それらすべては米国政府によって支払われている。】

ワシントンポスト紙は続いて、大部分のシリア人は救援物資を支給するアルカイダのアル・ヌスラを信頼しているとつぎのように主張している。

【「アメリカはわれわれに何もしてくれない。まったく何もだ。」と、モハメッド・フォアド・ワイズィ(50)はアレッポにある自分の小さな食料雑貨店で吐き捨てるように言った。その店は彼が毎日パンを買うパン屋に隣接しているのだが、米国によって支払われた小麦粉がたっぷりと供給されている。しかしワイズィは、米国がアルカイダとの関係ゆえにテロリスト組織と指定した反乱軍グループであるジャバハット・アル・ヌスラを、その地域に小麦粉を供給していることで信頼していた。ただし彼はその小麦がどこから来るか知らないと認めたのだが。】

明らかに、ここでパズルは完成した。確かにモハメッ ド・フォアド・ワイズィ氏は正しかった。米国務省によって登録されたテロリスト組織ジャバハット・アル・ヌスラは、小麦粉を人々に供給し ている。だがこの小麦粉は、シリア内部のテロリストに梃子入れしていることを米国務省自身いつも頻繁に否定し、さらに自らの反テロ法および国際法にまったく矛盾している米国から、故意に毎日直接大量に供給されている小麦粉なのである。

米国およびその同盟諸国は、明白にテロリズムを下支え している。さらにもっと驚くべきことは、彼らがシリアの人々に供給している「救援物資」は、シリア内部の領土を完全に制圧しかつ保持し掌握することを許されているアルカイダによって、政治的武器として使われていたことが明らかに見えてくる。ニューヨークタイムズ自身が認めたことであるが、アル・ヌスラの構成員はまったくシリア人ではない外国人戦闘員で満たされているということをあらためて注目すべきであ る。

顕わになったものは、あまりに狡猾であまりに極悪非道 な陰謀であり、あまりに絡み合う嘘で織られた網である。西側政府はたぶん自国民が、自分たちの税金が野蛮なテロリズムの武器と資金のため に故意に利用されているとは信じない、などと計算しているのだろう。その一方で、宗派間の殺戮を意図的に煽りたて、その死者数は、それを 喧伝する連中自身によって天文学的に膨らみ続けているのだ。カードは切られている。この二年のあいだシリアのアルカイダに資金提供、武装 援助、そして補給活動をしてきたことが公然と暴露された米国は、今度は、その結果としてシリアの国境に沿って生じた殺戮、残虐行為、および人道的大惨事に直接の責任を負うことになる。

米国がシリアのアルカイダに代わって、「化学兵器」と いう見え透いたおなじみの口実を利用して軍事介入の売り込みを企てる一方で、アメリカの軍靴が公式にシリアの領土にほんの少しでも触れる 以前に、すでに歴史的な規模での人道に対する恐るべき犯罪が、シリア人民に敵対する米国およびその同盟諸国によって為されてきたのだ。

(以上翻訳終り、松元保昭訳・童子丸開修正)

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.ne/
〔opinion4627:131104〕