★反ファシズム戦争勝利70周年にあたって―映画を観て討論する
●3月28日(土)13時 ~ 16時30分
フランス=イタリア作品『かくも長き不在』
(1960年アンリ・コルピ監督・98分)
上映と解説・討論
解 説 = 岡野奈保美(文化活動家)
会 場 : HOWSホール
TEL:03-5804-1656
HP:http://www.hows.jpn.org/
E-mail:<hows@dream.ocn.ne.jp>
参加費=1500円(学生1000円)
はたして戦争は終ったか
『ニュールンベルク裁判―人民の裁き』(1946年ソ連)に続いて、今回は、はたして戦争は終ったのかを静かに問いかける『かくも長き不在』を上映する。
《パリでうらぶれたカフェを営む女の所に、ある日突然現れた浮浪者。驚愕する女主人。彼は戦場にいったまま行方不明になっていた彼女の夫に瓜二つだったのだ。しかし浮浪者は過去の記憶を全て失っていた‐‐‐。戦争によって人々が受けた深い心の傷を重厚な心理ドラマとして描いた秀作。下町の空を通過する軍用機の編隊のショットが、死への不安感を象徴して鮮烈。カンヌ映画祭パルムドール受賞。》(『世界映画大事典』)
武井美子さんは、カンヌ国際映画祭に行った今村昌平監督の新聞記事で読んだ談話からひとつのエピソードを紹介している。《隣りに座ったのが『かくも長き不在』の監督だった。「あれは良い映画だった」と言うと、アンリ・コルピ監督はほろりと涙を流した、という。時代も変わり映画も変わり、40年近く前の作品を覚えている人は少なくなったであろうカンヌの雰囲気が伝わってくるような話だった。》(『社会評論』NO.119‘99秋「映画再見」)
武井さんが映画の背景として説明しているつぎの点を忘れてはならない。《1960年7月14日(巴里祭)の場面から始まるのだが、空には祝賀の花火とともに軍用機が飛ぶ。地上には戦車と迷彩服の兵士の行進。アルジェリア戦争のパラ(落下傘部隊)の兵士たちだ。パリ郊外の小さなカフェで、客たちが話している。「フランスでは、平和的だと言っていながら、20年来戦争ばかりやっている」。1954年の対ベトナム戦からアルジェリア戦争へと、フランスは植民地を維持するための戦争を続けていたのだった。戦争を遠く離れた日本の戦後とは違うのだ。》(同上)
また映画の評価として、「戦争の傷痕と愛の記憶という哀切なテーマを、単なるメロドラマにはしていない。声高ではないが反戦の意志がしみじみと胸にしみる、みごとな作品である」(同上)との指摘に頷くひとも少なくないのではないでしょうか。
みなさんのご参加をよびかけます。
■アンリ・コルピ監督(1921‐2006年)について
編集・監督。スイスのブリグ生まれ。1950年代から活躍し始め、アラン・レネ作品の編集や詩情豊かな作品の監督で知られるフランスの映画人。50年からおもに編集の仕事に携わり、レネの『夜と霧』(1955年)『二十四時間の情事』(59年)などを担当。その後、マルグリット・デュラス脚本の長編第一作『かくも長き不在』を撮り、カンヌ国際映画祭グランプリを受賞。