あの悲しい、溺死した少年の写真が、世の人を動かしました。
難民を受け入れたメルケル独首相が、ヨーロッパの首脳たちを動かしました。
戦火のシリアを脱出した人々が、世界の良心と優しさを問うことになりました。 難民や移民への対応で、図らずも各国の本音と根性が露呈しています。人道主義を唱えていたある国は偽善者だったり、愛が売り物だった国が冷血漢だったり、人って、追いつめられると本性をあらわすものですネ。 <脱走する人々>を通して、国際社会の本心を読んでみましょう。
(1)<脱走する人々>:
祖国を脱走した人々は、移民であれ難民であれ、この世の被害者だ。貧困から脱走してヨーロッパを目指すアフリカ移民の加害者は、言うまでもないヨーロッパ元宗主国だ。
戦禍から脱走してヨーロッパに逃げ込もうとするイラク・シリア移民難民の加害者は、アメリカとその有志連合ヨーロッパだ。アメリカの有志連合でありたい日本も、加害者の責任がある。
BBC英国TVによると、今年に入って中東やアフリカなどからヨーロッパに入った移民や難民は、38万人を超えているという。
(2)アンゲラ・メルケル・ドイツ連邦共和国首相:
内戦が続くシリアなどを逃れ、東欧ハンガリーに流入した移民や難民らを乗せオーストリアを出発した特別列車が5日、ドイツ南部ミュンヘンの中央駅に次々と入った。地元当局によると午後8時(日本時間6日午前3時)ごろまでに約6千人が到着したそうだ。
ミュンヘン到着後は中央駅前に設置されたテントで簡単な健康診断を受け、必要な衣類などの物資を手渡された。その後、バスで市内のメッセ会場へ向かった。ミュンヘンには
5日と6日で、約2万人の避難民が殺到し、ミュンヘン当局は悲鳴を上げた。
ミュンヘン当局のSOSに答えて、9月7日、ドイツ連邦のメルケル首相はベルリンで記者会見し、15万人の避難民らを受け入れるため、国内の自治体が臨時施設を設置する費用として、総額60億ユーロ(日本円で8,000億円)を追加拠出すると表明した。同日のZDF独TVでガブリエル副首相も、「ドイツは今後数年間、年間50万人の避難民を受け入れることができる」と、明言した。
第二次大戦敗戦70周年を迎えた主戦国ドイツは、ナチスが犯した戦争犯罪を今も償い続けている。「戦争避難民を見捨てることはできない」と、メルケル・ドイツ首相は語る。「えらいな~」と、ともすれば敗戦の教えを忘れがちな日本の庶民は、西に向かって首を垂れるのです。
(3)イスラエル、ハーレツ 発:
ドイツのナチスに追われて<栄光への脱出>をしたユダヤ人は、パレスチナ住民を追い出してイスラエルを建ち上げ、核兵器を有する最強の国家を作り上げた。移民難民の元祖であるイスラエルは、後続の移民難民をどう思っているのか?イスラエル紙ハーレツから、イスラエルの移民難民対応を探ってみる。
イスラエルの野党リーダー・ヘルツグはイスラエル首相ネタニヤフに、「シリア難民をイスラエルが受け入れるべきだ。数十万の難民が安全な地を求めてさ迷っている時に、同じ運命にあったユダヤ人が知らん顔をするわけにいかない」と、要請した。これに対して、9月6日にイスラエル首相ネタニヤフは「アフリカ人やシリア人の悲劇に目をつむるわけではないが、同じ運命だったとはいえ、彼らを受け入れるには、イスラエルはあまりに狭すぎる。それに、国境を開放すれば、不遜な輩の入国を許すことになる」と、ネタニヤフは難民受け入れを拒否した。ヘルツグは「お前は毛虫の身を忘れたのか?!」と、ネタニヤフに反論した。
一方、9月5日にパレスチナ暫定自治政府は、「シリアに閉じ込められているパレスチナ難民を暫定政府があるヨルダン川西岸に移動できるよう、イスラエル政府に圧力をかけて欲しい」と、UN国連とEUヨーロッパ連合に請願した。パレスチナへの出入国は今も、イスラエルが牛耳っている。
(4)ローマ法王:
9月6日の日曜ミサで、ローマ法王はバチカンのサンピエトロ広場に集まった信者らに対し「欧州に逃れてきた難民や移民らを、欧州の全てのカトリック教区や教会や共同体や修道院などで保護するように」と、説教をした。まずは、バチカン市国内の2教区で、早急に、1家族ずつ受け入れるそうだ。法王の命は、緊急対策として一番早く、一番効果的だ。堂々巡りの会議もなければ、スポンサー探しも必要ないからだ。キリスト教に先を越されたイスラム教も、慌てて<喜捨>という慈善行為を展開することになりそうだ。
(5)ケチな国、チンケな国:
移民難民は一人も入国させないと、イギリスのキャメロン首相はイギリス・マフィアまで動員して、フランスから渡ってくる移民を拒絶した。一方のフランスもイギリスに同調して、二重フェンスを作り警官を増やし、イギリスを目指す移民を蹴散らした。
ところが、その移民難民強行阻止派のキャメロン英首相が、「最大2万人のシリア難民の受け入れを提案する。今後5年間でシリア国境周辺の難民キャンプから、子どもや孤児を優先して受け入れる」と、9月7日の英国議会で演説した。5年?5年も経ったら子供は大人になる。分断された家族の悲劇など、眼中にないのだ。人道主義を唱える手前、嫌嫌だけど条件付きで受け入れるといった、ヒポクリットな首相の性格が滲み出ている。
フランス政府も同日の9月7日、「EU=ヨーロッパ連合の方針だから仕方がない。中東のシリアやイラク、アフリカのエリトリアからの難民を、今後2年間に2万4,000人余り受け入れる」と、表明した。
オーストリアのファイマン首相は5日、「ドイツとオーストリアは、ハンガリー経由でくる避難民らを受け入れる」と明らかにした。彼らのほとんどはドイツ行きを希望している。
避難民らは、ハンガリーの首都ブダペストの東駅から列車でドイツ入りしようとしたが、警察が阻止。避難民らは徒歩でオーストリア国境に向かい、一発触発の不穏な空気が流れた。オルバン・ハンガリー首相はドイツとオーストリア両国の要請を受けて、両国国境までバスを仕立てた。が、ハンガリー通信によると、オルバン首相は「避難民用のバスの運行はコレッキリ!」と、釘を刺し、国境に有刺鉄線を張り始めたそうだ。
9月9日、EUのユンケル委員長は、「移民難民の受け入れ数を16万人に引き上げ、加盟国で経済規模や人口などに応じて分担して受け入れることを義務づけるため、9月14日の臨時内相会議で図る」と、表明した。が、東欧諸国は金がないと、反発している。
(6)やっと出てきた、諸悪の元凶:
「アメリカは来年、シリア難民を10.000人受け入れ用意をしろと、オバマ大統領が命じた」と、9月9日の記者会見でアーネスト・ホワイトハウス報道官が表明した。「難民の到着まで12~18か月はかかる。アメリカはこれまで、40億$(約4,000億円)の緊急物資援助をやっている。薬、食料、水、テントなどだ」と、「アメリカの援助は貧弱」というプレスの批判をかわした。
問題はプレスが問う支援の大小ではない。シリア難民を生み出したシリア戦争の仕掛人で戦争犯罪の主犯は、アメリカということが大問題なのだ。アメリカはシリア難民を全員受け入れ、ぶっ壊したシリアの国土と建造物を修復して、罪の償いをすべきだ。
「日本が得意とする分野で、引き続き中東の平和と安定のために貢献していく。住居や教育、女性や子どもの支援などだ」と、9月8日にパリで開かれた中東情勢を話し合う会議で、園浦外務政務官は、約33億円の拠出を表明した。
アメリカに言われるまま金を出せばいいという心根が伺える。 しかし、私たち庶民は、一銭たりともアメリカの肩代わりなどしたくない。
オリンピックをきっぱり止めて、その費用をシリアとアフリカの移民や難民の支援に、そして、東日本の復興に回しましょう。 オリンピック招致の時、何と言って審査員の票を集めましたか? 「東日本大震災からの復興とオリンピック」を結び付けて、アピールしましたよね? その後、東日本大震災復興の方はほったらかしにしています。 そして今、東日本は大水害という、自然災害に襲われました。 願ってもない啓示です。 東日本大震災の復興に向けて、舵をきりましょう。
「オリンピックの費用を、移民難民そして東日本大災害の支援に。」わ~、これで日本は間違いなく国際社会の喝采を浴びることが出来ます。
もしかしたら、国連安保理常任理事国の席を用意してくれるかもしれません?
文:平田伊都子 ジャーナリスト、 写真構成:川名生十 カメラマン
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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