NHK集金スタッフがやってきた
おひな祭りの日だったか、「NHK受信料の件で」と訪ねてきたのは、受信料集金人だった。差し出した名刺には左肩にNHKの赤いロゴが付いているものの、肩書には 「放送受信料契約・収納業務受託事業者 〇〇」とある。ほんとうは夫と二人で、話を聞きたかったのだが、折しも夫は、翌日の午前中開廷の奈良地裁「NHK放送受信料請求事件」の傍聴、支援のために出かけていた。NHKから支払い督促を受けていたAさんは、簡易裁判所に訴えられて、簡裁で決着をつけたいNHK の要請を入れずに地裁での審理となった。たんなる債権請求事件でなく放送法や契約の内容で争いたいAさんの主張が通った形の第一回口頭弁論の日だったのである。そんなわけで、当方は、一人で対応することになった。
集金人は、「受信料の未納が続いているので、ぜひ収めていただくように」とのことなのだが、当方としては、現在のNHKの経営方針や報道内容は、放送法や役職員の服務準則を守っていないので、受信料を収めるわけにはいかない。受信料の支払い拒否をしているわけではないので、間違いないように。放送法にのっとった契約内容を守ってくれれば、支払いを再開しますよ、との主旨を話すと、「それは千葉放送局から聞いています」とのことだった。 さらに、以下のような説明をしたのだが、「暖簾に腕押し」状況で、帰っていった。
・NHKは、いま、各方面から批判されている政府寄りの偏向報道が、放送法に反しているにもかかわらず、改めるどころか、政府広報の性格をますます強めているので、収められない
・籾井会長は就任以来、放送の公正・自立に反する言動が続いているので、辞任するまでは、収められない
・受信料で成り立つNHKの経営において、不正経理や職員の犯罪行為が止まらない以上、収めることはできない
・「皆様のNHK」と宣伝しながら、視聴者ふれあいセンターのスタッフは、NHKの職員でない上に、電話の録音までとっておきながら、担当者に伝えるだけという、一方通行である。集金人も、受託事業者であって、視聴者の声が直接NHKには届かないシステムに納得ができない
などの点を伝えた。高市総務相の国会での「電波停止」発言に言及し忘れ、不覚にもNHKのHPの「受信料長州力」を確認しておらず、抗議することができなかったのが心残りだった。受託業者のスタッフは、当方の話の途中で、何度も「ありがとうございます」と合いの手を入れるのが、むしろ気持ち悪いほどであった。そして、その集金人の回答はといえば「視聴者には、いろいろな考え方の人がいるので、一部の人たちの意見ばかり聞くことができない」と言う紋切型であった。
集金業務の外部委託~NHK職員は決して手を汚さない
受信料契約・収納業務がNHK地域スタッフの手から合理化の名のもとに外部委託がなされ始めたのは、いつのころだったのか。最近、とくに、各地で、視聴者と委託業者とのトラブルを聞くようになった。NHKが未納受信料の督促に躍起になっているのは、なぜか。受信料収納率を業績アップにつなげたい籾井会長の焦りなのか、受信料債権の時効が5年との判決にあわてているのか。そして、受託業者は、当然のごとく出来高払いなので、末端の集金人は、手荒いことになって、「督促は毎日でも、やって来るからな」「裁判など面倒なことになるのは分かってるだろうな」といった捨てゼリフを吐いたり、「ともかくハンコと名前をくれれば」と書類を突きだして帰ったりする集金人もいたという情報が入ってくる。
NHKのHPに<「放送受信料契約・収納業務」委託法人名>のサイトがある。見て、驚いた http://www.nhk.or.jp/boshu/houjin/jigyousya/
なんと、全国で250以上の法人名が並び、クリックすると担当地域が出てくる。その他にも金融機関や家電店などがあるといい、聞いたこともない社名、社名でネット検索しても見つかりにくいものが多く、なんの会社か見当もつかないものもある。担当地域が入り乱れ、こんなにも多くの法人を抱えていたのでは、NHKの管理は及ぶはずもない。それをいいことに、NHKは手を汚さずに受信契約や受信料の督促を推進しているのだ。
ちなみに当方に訪ねてきた受託業者は、千葉放送局管内と関東の一部の地域を担当しているとのことで、集金人は、そのエリアを2か月交代で巡回するというのである。この徹底した無責任体制をNHKは利用していることになる。 」
とんでもない受信料キャンペーンに仰天!プロレスラーの登場?
私は、プロレスラー「長州力」を起用して、NHKが受信料広報を開始するという情報は貰っていたが、確認しないまま、集金人とも話していたのである。3月4日、そのサイト開設が中止になったというニュースの方が先に飛び込んだ。 開けてビックリ、上記のようなサイト開設予告が2月29日に公開され、3月4日に以下のような「お知らせ」が発信されたというのである。
「受信料長州力」(2月29日)
お知らせ(3月4日):http://www.nhk.or.jp/freshers/
「3月14日に開設を予定していたこのサイトは、長州力さんが案内役となって若い方々に公共放送の役割や受信料制度への理解を深めていただき、受信契約の手続きをしていただけるような内容を検討していました。しかし、予告したところ、視聴者の皆さまから様々なご意見をいただきました。このままサイトを開設しても、私どもの意図について正しくお伝えすることが難しいと考え、開設を中止しました」 この間、J=CASTの取材に対してNHKの広報は、つぎのように答えたという。
「ひとり暮らしを始める学生や新社会人に向けて、受信料制度についてご理解いただき、受信契約の手続きをしてもらうための特設サイトです。開設期間は、2月29日から5月31日までです。また今月14日からは、パソコンやスマートフォンで遊べる『受信料長州力』という動画ゲームを、ウェブサイト上に提供します。このゲームは、プロレスラー・長州力さんが案内役となって、公共放送の役割や受信料制度などについて説明しています」(J=CASTニュース(2016 年3月1日)
この一連の騒動で、視聴者不在のNHKが、まさに浮き彫りにされたのではないか。オフィス用品会社のダジャレCMは、まだ勝手にすれば、の思いだが、今回のNHKの「受信料長州力」の企画は、なんと取り繕ろうと、世にいう「おやじギャグ」より低劣で、品がない、まさに「恐喝まがい」の企画ではなかったか。視聴者の意見を即時取り入れざるを得なかった、唯一の例で、「なかったことにしたかった」のだろう。こんな企画に、受信料が使われていたことにも腹が立った。
受信料支払いは「法的な義務」か
さらに、冒頭の奈良地裁の法廷で、NHK側の口頭弁論は、なぜかなされなかったのだ。東京から弁護士が4人ほど来ていたというが、この往復旅費や弁護士費用は、今回の裁判における未納受信料4万数千円の何倍にもあたるだろう。もちろんこれも受信料から支払われているのである。いったい何のための裁判なのか。NHKが裁判所を通じた未納受信料請求に踏み切るケースが全国的に増えているが、その基準は、請求金額の多寡ではないらしいし、不明である。未納を減らしたければ、その経営体質や報道内容を変えることが先決ではないか。
受信料未納分のある視聴者に送りつけてくる督促状に、下記のような文書が付せられている。受信料支払いが「法的な義務」であるかのような文言は、明らかに虚偽であり、つぎの「裁判所云々」の事項と合わせて脅しのように読める。しかし、よく読んでみると「受信料のお支払いは、受信契約者の法的な義務です」とあって、「放送法」という法律上の義務とは言っていない。受信契約者の受信料支払いは「放送受信規約」上の義務にすぎない。「規約」は「法律」ではない。督促状の文書にはまやかしがある。法的な義務というなら、NHKにこそ、放送法を遵守した番組を放送する義務がある。NHKは自分にこそ法的な義務がある事実を棚に上げている、このことを視聴者はしっかりと認識しなくてはいけないと思う。放送法に義務規定がないからこそ、その義務化が、今般、取りざたされているのではないか。
各地の、受信料請求訴訟では、NHKの放送法に従った経営や番組編成がなされているかが問われるべきだと思う。
初出:「内野光子のブログ」2016.03.09より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2016/03/nhk-32fd.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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