小池百合子。この人、一時は飛ぶ鳥を落とす勢いだった。都知事になって、築地市場の豊洲への移転を見直すのかと思ったが、見直しをやめた。オリンピック関連についても、見直すようで見直さない。断固貫いたのは、9月1日の関東大震災朝鮮人虐殺犠牲者追悼式への都知事としての追悼文送付を取りやめたことだけ。
なお、舛添要一前知事は、当時の韓国大統領・朴槿恵との間に「韓国人学校用地としての都有地貸与」の合意を交わしていた。小池百合子は、就任直後にこの合意を白紙に戻して物議を醸してもいる。
その小池百合子に、学歴詐称の疑惑である。現在発売中の「文藝春秋」(2018年7月号)にノンフィクション作家石井妙子が「小池百合子『虚飾の履歴書』」を掲載して話題になっている。小池百合子の「カイロ大学卒業」という学歴は事実ではなく、公職選挙法に違反している可能性が高いと指摘したものだという。
小池は、かねてから「1976年10月 カイロ大学文学部社会学科を主席で卒業」と言ってきた。これが虚偽ではないかというのだ。このことが、一昨日6月15日(金)の定例会見で話題となった。東京都のホームページに記載された会見録では以下のとおりである。
【記者】幹事社から最後にお伺いしたいんですけれども、最近、ちょっと一部報道が出ておりまして、先週から今週にかけて、雑誌の方で、知事のご経歴の中で、カイロ大学を首席で卒業されたという経緯について、疑義を呈する報道が出ているわけなんですけれども、改めてこの件について、前にもお話出たことあると思うんですけれども、事実関係と知事のご見解を改めてお伺いできますでしょうか。
【知事】カイロ大学は卒業証書もあり、また、大学側も卒業については認めております。そしてまた、首席云々の話でございますけれども、昔の話なので、何て言われたかというのは一つひとつは覚えておりませんけれども、「良い成績だったよ」と言われたことは事実でございますので、喜んでその旨をその当時書き込んだものだと思っております。
なお、公職選挙法上は、カイロ大学卒業ということで、そのことのみを記載させていただいているということであります。本件については、これまでも何度もご説明しているとおりでありますし、大学の方にもお問い合わせいただいてると聞いております。
【記者】今のご説明ですと、首席という部分については、「良い成績」と言われたというお話はあったんですけれども、首席というところははっきりしない点があるのかどうかと、あと、これまで知事としては、では、経歴等で首席というのはあまり謳われてこられなかったと。
【知事】全部調べてないですけれども、最初に書いた本には、そのように書いた記憶はございます。というか、そういうふうに書かれております。
【記者】では、首席卒業されたということは、はっきりと断定はできない、難しいというところがあるということでしょうか。
【知事】非常に生徒数も多いところでございますが、ただ、先生から、「非常に良い成績だったよ」とアラビア語で言われたのは覚えておりますので、嬉しくそれを書いたということだと思います。
なんだ。「首席」ではなくて、「よい成績」だったというのか。「首席」と「よい成績」とは別物だろう。この点の嘘は認めるのだ。
問題は、「首席疑惑」ではなくて、「卒業疑惑」の方だ。小池が言う「カイロ大学は卒業証書もあり」が怪しいというのだ。
今年1月、石井あてに、小池知事とカイロ時代に同居していたという女性から「彼女(小池知事)は実際にはカイロ大学を卒業していません」などと記された手紙が届いたという。これをきっかけに、石井はカイロ時代の小池の足跡を追って調査し、その結果としてカイロ大学卒業の事実に疑義を呈している。
石井によると、小池はこれまでも度々、学歴詐称の疑いをかけられてきたが、彼女はその度に「卒業証書を持っている」と主張し、疑惑をはねのけてきた。だが、この「卒業証書」そのものに、いくつもの疑問があるという。
小池が自著で披露している卒業証書の写真について、石井は文春オンラインでこう述べている。
「ご覧のように、小池氏がベールをかぶっている写真とコラージュされている。ベールの裾部分が不自然に広がっており、この裾で隠された部分には、学部長ほかのサインがあるはずなのだが、その肝心な部分が…見ることができない状態だ。また、裾の右下に位置しているアラビア文字は「学籍番号」を意味し、本来は、それに続いて小池氏の学籍番号が数字で書き込まれていなければならないはずだが、それがない。…」
「ただ、私は小池氏の「卒業証書」も、「卒業証明書」も現物を見ていない。「文藝春秋」7月号の記事を書くにあたり小池氏に質問表とともに、「卒業証書」「卒業証明書」のコピーを提示してくれるように求めたが、顧問弁護士からの回答書にて無視されたからだ。
選挙の際に、小池氏は自らこれらをテレビ番組で公開した。
なぜ、正確な検証を望む私たちの要望には応えないのか。
知事になるにあたって、情報の透明化を謳ったのではなかったか。約束を自ら果たして欲しい。」
本来学歴詐称などたいしたことではない。そもそも、人の評価において学歴そのものがたいしたものではないからだ。しかし、アベ晋三の「南カリフォルニア大学政治学科留学」詐称や、小池百合子のカイロ大学卒業詐称となれば話は別。もしかしたら、この詐称がなければ、国政や都政が歪められずに済んだかも知れないからだ。
小池の『虚飾の履歴書』。真偽のほどはまだ分からないが石井妙子の筆は鋭い。今後を注目したい。おそらく、これをきっかけに大量の情報が出て来るだろう。もしかしたら、石井の指摘のとおりなのかも知れない。別のテーマでもメディアによる身体検査が進展するだろう。すると、またまた突然の都知事選、なんてことも否定し得ないではないか…。
(2018年6月17日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2018.6.17より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=10539
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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