韓国通信562
韓国の友人に日本のことを伝えたい
日本の友人に韓国のことを伝える
40年も昔、韓国語の勉強を始めたころ、「日韓の架け橋」になりたいと真剣に思った。当時、「架け橋」はいっぱいあった。政治家や財界人、商社マンたちが渡った。韓国に対するステレオタイプ化された知識が溢れていた時代だった。それに対抗するつもりだった。仲間もたくさんいた。
ソウルオリンピック、サッカーワールドカップ日韓共同開催、そして「韓流ブーム」の到来。多くの普通の人たちが屈託もなく韓国にでかけるようになり、日韓新時代の到来を感じさせた。
「架け橋」をめざして始めた「通信」だが、日韓の距離がなかなか縮まらないことに苛立ち、漂流ぎみの感さえある。人間どうしの理解が難しいのに、隣国との「架け橋」とはおこがましい話なのかも知れないが、あきらめずに私の発見、思いを伝え続けていきたい。
前号の「通信」韓国語バージョンに対する感想文が届いた。
<韓国からの通信>
小原さんお久しぶりです。福島での写真撮影を終えた後、雑事に取り紛れ連絡できなかったことをお許しください。
今回送ってくれた二つの文章、とても嬉しく拝見しました。特に相良倫子さんいう中学生が書いた詩は若い人が書いたとは思えない成熟した内容なので驚きました。もちろん彼女の勉強の成果とは思いますが、沖縄の悲惨な歴史をこれほど生々しく、想像力を働かせ詩として表現したのには驚くばかりでした。本当に素晴らしい学生です。私の心に、深い悲しみの感情と、戦争のない平和な生き方が大切という彼女の思いが伝わってきました。
沖縄県知事の言葉にも彼女に通じる思いが込められているのを感じました。特に東アジアの平和問題に対する知事の考えと、安倍を始めとする戦争主義者たちへの叱咤、今回の米朝平和協定への期待を込めたメッセージは時宜にかなった適切な内容だったと思います。韓国でも、今回、文在寅政権が先頭に立って一気に南北停戦と平和協定協定の締結へと向かう兆候を見せています。来る7月には離散家族100名ほどが再会、遠くない将来、釜山から元山(ウォンサン/北朝鮮東の都市)経由でウラジオストックからベルリンに至る鉄道の開通も見込まれています。このような時に、沖縄で米軍基地と飛行場の拡張工事をするなんて全く馬鹿げたことです。ただ軍産複合体、大企業のためのものでしかありません。
私は沖縄の佐喜眞美術館を何回か訪ねたことがあります。行けばいつも感じることですが、まるで沖縄が米軍基地の中にあるような錯覚を受けました。沖縄は悲しい所であると同時に希望の島です。素晴らしい文章ありがとう ! 2018/06/28 鄭周河(チョン・ジュハ)
鄭周河さんは「通信」で数回取り上げたことがある。原発事故直後から南相馬を撮り続けた写真家。「奪われた野にも春は来るか」写真展が日本各地で開かれ反響をよんだ。厳しい福島の状況へ向けたカメラは悲しみと厳しさにあふれ、作品のどれもが悲しいほどに美しい。毎年、来日しては南相馬(原発事故)に寄り添うように撮影を続けている。左の写真は韓国の霊光(ヨングワン)原発を背景に無邪気に遊ぶ子どもたち。タイトル「火の中で~不安へ」。韓国現代美術館所蔵。福島原発事故を予測したかのような作品。彼の代表作。
<ピンチ! 東海第二原発>
首都圏にあるから「廃止しろ」というのは過疎地にある原発に反対する人たちに失礼ではないかと思う。首都圏にあるから事故を起こせば大事故になるという話だが、問題はそれだけにとどまらない。法律で定められた原発の寿命40年を越えて稼働させることは原発業界にとっても日本中で原発に反対する住民にとって大問題なのだ。
事故発生率トップ(従って業界にとってはお荷物的存在)のポンコツ原発の再稼働がOKとなれば再稼働待ちの原発が「われもわれも」と雪崩を打って再稼働に走るのは目に見えている。
スポーツクラブに署名用紙を持ち込んで署名活動をした。いつの間にかスポーツジムが私の活動の場になってしまった。もちろん運動もして爽やかな汗もかいた。心と体の健康に良い。
翌29日、東海第二原発の所有会社日本原電本社(千代田区)に出かけ抗議行動に参加した。
デジカメを片手に取材の積りだったが、主催者から挨拶を頼まれる羽目になった。参加者たちは一様にその日用意した要請文の受け取りが拒否されたことを怒っていた。私はというと、裁判闘争依存、少人数の門前抗議だけではダメとまでは言わなかったが、「地域で話し合って、自治体から反対の声を」そして「住民の声で東海第二を包囲。その力で廃炉に」と訴えた。千葉県では多古町に続き銚子市議会が東海第二原発廃炉を求める決議。栃木県では茂木町に続いて真岡市で請願運動を展開、東京では葛飾区市民が請願運動を開始した。「皆さんの町でも包囲に加わってほしい」と挨拶を締めくくった。
夕方の首相官邸前のデモに参加する予定だったが暑すぎて省略。家に帰ったら関東地方が「梅雨明け」したとのこと。
サッカーワールドカップに熱狂する若者たち。ロカビリーやジャイアンツに熱中した自分の若い頃を棚に上げて眉をひそめることもないが、いい大人まで寝不足だなんて悲しい。日本チームの決勝リーグ進出の仕方に、国内から批判の声が上がった。世界からは例外なく「姑息なサムライジャパン」に批判が集まった。韓国の中央日報は「16強を逸した韓国チームに拍手。16強に進出した日本チームにはブーイング」と報じた。世界から孤立する日本を感じる。
<追 記>
7月4日、駅頭で掲げるプラカード「危険!東海第二原発 動かすな」を準備しているさなか、お昼のNHKニュースが原子力規制員会による東海第二原発の新規制基準合格を伝えた。出鼻を挫かれた思いだったが以前から予想していたことなので驚きは少なかった。
「世界一厳しい規制基準」と安倍首相は胸を張るが、「安全を保証するものではない」(前田中委員長)。規制基準というモノサシだけで「合格」と判断しただけ。国民の疑問や不安にこたえない規制委員会が存在する意義は無くなった。
老朽、それも人口過密地帯にある首都圏原発を動かすいう非常識。私の知る限りでは99.99%の人たちが廃炉にすべきと答える。自信をもって1時間半立ち続けた。
規制委員会に甘い期待を持っていた人も含めて、こうなったら世論の力で「廃炉」にするほかないと感じたはずだ。「首都圏連絡会」を中心にチラシ配布、親会社の東京電力、日本原電抗議、反対署名、周辺自治体の「意見書」の採択も加速するはずだ。越えなければならないハードルがあり再稼働が危ぶまれるという指摘もあるが、ハードルを高くして廃炉に追い込むのは市民の力を置いてない。快晴の駅頭炎天下でプラカードを掲げ続けながら考え続けた。
初出:「リベラル21」より許可を得て転載http://lib21.blog96.fc2.com/
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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