中国擁護のわけ

9月11日付け阿部治平氏の『ある中国論――なんとも奇奇怪怪!』の中に,マレ-シアの東海岸鉄道建設の話題が出てくる。

フクシマ原発暴発による放射性物質から避難して南洋の海辺の町を転々としているがマレ-半島の東部を訪れたこともあり,いくらか知っていることをご紹介申し上げたい。

半島東海岸の雨季はひどい雨に襲われる。ために人口が少ない。海辺は美しいが蚊が多い。YTLの立派なホテルもあるが,そういう所に鉄道を建設するナジブ政権には驚いた。従来の鉄道を拡張するだけでいいのではないだろうか。

しかるになぜ財政難でもあり高利子を払ってまで鉄道を敷設したかったのであろうか。それは2020年までに先進国仲間入りを果たしたいというマハティール-ナジブ政権の願いからであった。しかしすでにマハティール氏は仲間入りを断念していたが,IMF=世銀の指導もあってナジブ前政権はGDPを上げるために中国企業と契約を結んだ(GDPがある一定額を越えることが先進国入りの条件の一つである。そこにIMFと一帯一路政策[AIIB利用]の対立をみる)。

本年5月7日の政権交代後,マハティール首相は北京に飛び100の公約のうちの一つである東海岸鉄道建設の中止を交渉した。

中・馬のいくつかの現地新聞によれば,鉄道建設延期に伴う違約金の話はなかったようだ。もし違約金がないとすれば,なぜだろうかという気がする。

中国私企業と外国政府の契約である。中国は共産党政権であるからおそらくマレーシアとの政治的友好関係を優先させ,中国企業に建設を一時延期を要請したから,建設延期が決まったようである。

この延期がどれくらいの長さになるかは分からないが,マレ-シアがこの鉄道建設費用に苦しめられることは明らかであった(現に或るマレ-銀行では利子率が月18%超という募集要項を公表していた)から,中国が大国主義のゆえに契約を一時保留させた,と言えなくもない。大国の余裕を見せたのかもしれない。

他方,阿部氏はスリランカの港湾が中国企業の租借地になったことを曳いている。しかし英国のように上海を軍艦砲撃して租借地にしたのとはかなり事情が異なるのではないのか。

あくまで経済取引であり,金が払えないのは借りた方の責任である。大国主義の定義を知らないが,アフリカのジブチ国は中国や日本から金を貰い基地を提供している。中・日も港湾や土地が欲しいとすれば,大国主義は日本にも当てはまるのではないだろうか。米・NATOはシリアに違法駐留している。これこそ大国主義であり,覇権主義ではないのか。

今,中国包囲網があり,中国批判の文章が本ちきゅう座にも散見される。いくらか中国を擁護したくなった次第。  -つづく-