1946年3月、時の英国首相ウィンストン・チャーチルは訪米中の演説で「鉄のカーテンが引かれた」と述べて東西冷戦のスタートを予言したが、このペンス演説は本格的な米中冷戦の幕開けを告げることになるのだろうか。当面は米中両国とも、冷戦の火ぶたを切るのを回避する姿勢を見せている。両国の外相、国防相による「外交・安全保障会議が11月9日にワシントンで開かれたし、11月末日リオデジャネイロで開かれる主要20か国(G20)首脳会議の機会にトランプ大統領と習近平・中国国家主席の会談が予定されている。
ポンペオ米国務長官は9日の外交・安保会議後の記者会見で「中国との冷戦も封じ込め政策も追求していない」と述べ、中国の楊潔チ政治局員(前外相)は「両大国の健全で安定した関係が世界の利益となる」と応じ、双方が関係改善に前向きな姿勢を示した。この会談には米国のマティス国防長官、中国の魏鳳和国防相も参加したが、双方は首脳・閣僚レベルでの対話拡大が重要との認識で一致する一方で、対立する分野ではお互いに従来の主張を繰り返して平行線をたどった。
11月末リオデジャネイロでの米中首脳会談で、米中間の緊張緩和が図られるだろうか。これまでの双方の主張を見る限り、局面打開が図られるとは予想されない。トランプ大統領はこれまでに何回となく中国に大幅貿易不均衡の是正を要求、また中国に投資している米企業が特許や知的財産権を奪われたとの抗議を繰り返してきた。
しかし米中間の貿易不均衡は構造的に埋め込まれている。米企業は米国より人件費の安い中国に積極的に投資する。投資によって中国で製造された割安商品を米国が輸入するという構造である。中国が米国製の航空機を何百機輸入しても追いつかないほどの中国側の大幅黒字、米国側の大幅赤字が生まれる構造である。この構造を何とかしない限り米中間の貿易不均衡は治らないわけで、トランプ氏がいくら吠えても問題は解決しない。
しかしトランプ氏としては、中間選挙を前に米国民に向かってこれだけ中国の非を鳴らした以上、米中関係をこのまま放置するわけにもゆかない。しかし効果的な「打つ手」は見当たらない。米中戦争を引き起こすわけには行かない。米中冷戦が深化・激化することになるわけだ。
一方、トランプ政権が派手に打ち出したイラン制裁の行方は剣呑だ。アメリカでは一般に反イラン感情が強いので、イラン制裁は好意的に受け止められているようだ。その反イラン感情は今から30年近く前のイラン・イスラム革命と米大使館員人質事件に起因する。
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