新時代の日中関係についてー座頭市型政治から脱却か

インド太平洋というけれど,ペル-やグアテマラなど中南米近辺の太平洋は関係が薄いような気がするなあ,などと空想を巡らしていたためか,岡田充共同通信客員論説委員の「海峡両岸論 第96号 2018.11.15発行 - 協調と包囲の矛盾解けない対中政策 安倍訪中がもたらした「消化不良」 -」を危うく見逃しそうになった。

鉄鋼製品25%関税ぶっかけのトランプによる貿易戦争が起きているさ中の,安倍訪中の意味が分からなった。丹羽宇一郎会長の伊藤忠商事も訪中団に同行していたというから,重みが違う1400名であったことが伺われる。

それはさておき安倍三原則に対する日本国内の反応に「消化不良」または戸惑いが見られたというニュ-ズは知っていたが,どんな消化不良なのかさっぱり分からなかった。その疑問をすっきりさせてくれたのが,岡田氏の本論考であった。感謝申し上げたい。

日本の外交は「座頭市型」であると言われている。周知のように居合い抜きの剣法で,座頭市は敵が近寄れば斬り捨てる。しかし遠くにいる敵を見ることはできない。言い換えれば,「日本国内にあっては忠臣蔵の団体主義,外に向かっては座頭市型の状況反応主義」が日本の特徴であると故・加藤周一は指摘する(『戦後の日本 転換期を迎えて』講談社現代新書 p.189 1978)。「・・・忠臣蔵型の団体は,目標選定の洗練された機構をもっていない。座頭市型の反応は,先の見とおしが利かない。長い目で有利な環境を作り出すことができません・・・」。

もし加藤のこの仮説が正しいとすると,米国との,来る二国間交渉(FTA交渉でもないという論者もいる)で,日本政府は,岡田氏が指摘されるように,「・・・政経分離を図ったものの、安倍外交が今後米中対立の中で身動きができない股裂きに会う恐れ」がある。しかし今回は北京での記者会見で、「『あくまでも第三国での民間企業の協力である』と述べ、「一帯一路」とは『基本的に関係はない』」と強弁した,RCEPを推進してきた世耕経済産業相大臣や,二階訪中団の動向から判断すると,日本は多極化する世界の中で座頭市型外交から脱却しつつあると言えるのではなかろうか。その答えは日米二国間交渉の結果でわかるであろう。

追記;世界の,軍事産業に必要なタングステンや黒鉛,レア・ア-ス(希少金属類)の半分ぐらいは北朝鮮で生産されるという。中国やインドもその何割かを輸入している。とすれば,米朝関係改善を優先するトランプの戦略は長期見通しにかなっている。中国を経由せず朝鮮から直接輸入すればいいのである。一方日本は中国が希少金属を出し渋っていると抗議したことがあったことからも分かるように長期の見通しに立っているかどうか甚だ怪しい。