我が家の愛猫・とらは、電話でお話が出来ました。 最初は、何かの間違いだろう、と思いました。 でも、電話で話した当事者である妹が言うのですから間違いがある筈がありません。
妹が言うには、我が家へ電話した処、私が留守であったのか、とらが通話口に出て盛んに何かを「話した」と言うのでした。 とても驚くので電話には出ないようにとらに言って欲しい、と言うのでした。
どうして通話口に出るのかを考えた処、固定電話にあるハンズ・フリー装置を押して話す(啼く)のであろう、と推測出来ました。 つまり、着信があると、ハンズ・フリー装置に備わった小さな照明灯が点滅しますので、其処を前脚でトンと叩くと通話口に出られる、と。
でも、そうした電話機の機能をどうして知ることが出来たのか、と考えますと其処で止まってしまいました。 まさか、固定電話機のマニュアルを読んだ訳でも無いのですから。
何れにしても、自分で試してみることにしました。 職場から自宅に電話をしたのです。
出て来ました。 にゃ~、にゃ~、と啼いて。 「あ、とら~?」と言って、もうすぐ帰るよ、等々と暫くお互いに「話をして」電話を切ったのでした。
夕方に帰宅しますと、玄関で出迎えた愛猫・とらが眉間に皺を寄せたような顔をして、さも困ったかの様な表情で私に「にゃ~、にゃ~。」と「文句」を言うのでした。 何度も、何度も。
何の苦情を言っているのかは分かりませんでしたが、何か苦情を言っているのであろう、とは推測が出来ました。 業務時間中に自宅に電話したのですから、短時間の通話なのでとらの言うことを充分に聴いてあげることが出来なかったからかもしれない、とも思われたのですが、十分に猫の思いを理解が出来ないのが、人間の哀しさです。
我が家に電話するのは、それ限りで止めましたが、妹からは、何度か電話があり、その度にとらを通話口に出して欲しい、と依頼されました。
何事かを一生懸命に猫語で話す姿が今も眼に浮かびます。 通話口から聴こえる大きな妹の声とともに。 「とらちゃ~ん。 あんた頑張りや~!!」と腎臓病の老猫への労りの声が。
ともあれ、下記は、佳代からとらへのラブコール(297字)です。
由里「もし、もし。 あ、佳代ちゃん。 何? スマホの調子悪いの?」
佳代「あ、由里姉ちゃん。 とらちゃん、スマホ持ってないから仕方ないもん。 とらちゃん、出してよ~。」
由里「出してったって。 とらが電話に出る訳ないじゃん。」
佳代「出るんだから~。 昨日も出て来たよ。 お姉ちゃんが留守の時にさ~。」
由里「うっそ~。まじ~? ちょっと、プレイ・ボーイのとら! 来てよ。」
とら「なーぉ。」
佳代「と~ら~ちゃ~ん!! 佳代は、お話したかったんだ~。 ううう、今度会いに行くからね~。 行く時に、美味しいおやつ持って行くからね~。」
とら「な~お~。」
由里「え~。 とらが、電話に出るって~? 夢、見てんの、あたし?」
とら「いにゃ~。」