年末までにはまだ早いが十大ニュ-ズの一つに数えていい報道が飛び込んできた。ヴェネスエラのマデュ-ロ大統領と暫定大統領グアイドが,カリブ海のバルバドス島(7月13日現地新聞)で会い「危機に関する対話」をする段取りをつけたようだ。仲介役はノルウェ-政府。この危機対話がどう発展するかは予断を許さないが米軍のヴェネスエラ侵攻はほとんどゼロに近くなったと言えるのではないだろうか。
その他に英軍がジブラルタル海峡近くの公海上でイラン産原油運搬船を拿捕したことによる戦争勃発の危機が生じている。他方香港では2回目のデモが起きた。今度は黄色いヘルメットを被った千人ぐらいの規模であった。
日本国内では何といっても今夏の参議院選挙結果が十大ニュ-ズに入るのではないだろうか。特に「れいわ新選組」の動きが注目される。3ヶ月間で大口,小口(五百円,千円など)の寄付が集まって3億円を越えたという。その支援のすそ野は広い。例えば歌手の沢田研二まで応援し始めた。しかしTV局やなどから排除されている「れいわ」候補10人。何人当選するかの予想は難しいが,得票数が1200万票を越えそうなのである。
ところで文芸評論家の故・加藤周一は,2005年の衆院選挙で自民党の圧倒的勝利に終わったことを回想し,勝利の原因を分析している。第一,国民の大多数にとっては現状維持が望ましい。・・第二,しかし何十年経っても金権政治や代議士の世襲政治が続いているのは退屈な話である。会社から帰ってTVを眺める勤め人男女は,もう少し華々しく,もう少し劇的な見世物をもとめるだろう。すなわちそこに改革願望があらわざるをえない。・・第一の現状維持願望と,第二の改革願望とは矛盾する。その矛盾の弁証法的止揚に首相と自民党は成功し,民主党は失敗した。・・・
要するに,小泉・政府与党側が「郵政改革」に争点を絞り,その郵政がどう再組織されても自らの日常生活には大きな影響がないだろうと考えた多くの有権者=国民の現状維持願望を満たし,と同時に改革願望を満たした,という(『夕陽妄語Ⅷ』朝日新聞,2007)。
加藤の2つの勝利要因,A現状維持願望とB改革願望を今次の参院選に当てはめるとどうなるであろうか。与党は消費税増税と憲法改正その他を掲げている。Bの改革願望(消費税10%)は満たされている。しかし現状維持のAが見当たらない。一方野党だが,現状維持願望は消費増税反対でAは野党に当てはまる。「れいわ新選組」の消費税0%はBの改革願望を満たす。憲法改正は,野党内でも与党内でも意見が分かれるから勝利要因としては弱い。「れいわ」は「トンデモ法案一括見直し,廃止」を唱えているから,弱い現状維持「A‘」と見なすことができる。
加藤の勝利要因2つを比較的満たすのは「れいわ」の8つの政策である。小泉郵政改革は「小泉劇場」とも呼ばれたが,役者を揃えたのは「れいわ」である。10人もの専門が異なる,異色の役者(候補者)を揃えた。また舞台は街宣の開かれた各都市である。確かに東京は大票田だが,地方都市の街宣もバカにできない。
最後になるが,もし「れいわ」の候補10人が全員当選したら十大ニュ-ズ入り間違いないだろう。