ふるさと納税制度に見る墜ちたアベ政権下の国の官庁

先日、面白い(と言えば語弊がありますが)ニュースが飛び込んで来ました。 ふるさと納税制度で揉めていた国と泉佐野市の事件で国が負けた、とのことです。 東京新聞に依れば下記のとおり。

「ふるさと納税の新制度から、大阪府泉佐野市が除外された問題を審査した第三者機関『国地方係争処理委員会』は2日、除外した総務省の対応は3月に成立した改正地方税法に違反する恐れがあると指摘し、除外決定の再検討を石田真敏総務相に勧告することを決定した。」

泉佐野市除外の再検討を勧告 ふるさと納税で係争委、異例決定 東京新聞 201992 2010
https://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2019090201002317.html

現行のふるさと納税の制度とは、総務省によれば以下のとおりです。 名称が「納税」となっていますが、実質は「納税」ではなくて、寄付制度です。 要するに、自身が居住している(住民票のある)都道府県、市町村以外の地方公共団体に寄付すれば一定額の減税を受けられる、と言うものです。 現行の制度下では、多大な返礼品は制度の趣旨に反しているとなり、制度の恩恵を受けられないのですが、以前の制度下では何等の規制も存在しなかったもので、一部の地方間での返礼品合戦が生じていました。

総務省 ふるさと納税 関連資料
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/archive/

其処で、制度改編を行った国でしたが、新制度化で以前の「阿漕な」寄付金獲得の手法を咎めたうえで、新制度化ではその恩恵を受けられない立場に追いやられた泉佐野市は「逆上」し、何と「お上」に反抗した訳です。

この係争は、行政法律学的には、初歩の初歩であり、泉佐野市の弁護人作成になる国地方係争処理委員会宛「審査申出書」には、参考文献として行政法の基本書(教科書)が掲記されている程です。 法理論の初歩の初歩を噛んで含めるように説く「審査申出書」を読むのに忍耐が要るのですが、端的に言えば、「後だしジャンケンはダメよ」と言うものです。

国地方係争処理委員会への審査申出について 泉佐野市HP
http://www.city.izumisano.lg.jp/kakuka/koushitsu/seisaku/menu/furusato/1560129546327.html

総務省には、法学を専攻された「官僚」が居ないのでしょう。 法の不遡及の原則は、法学部一年生で習う筈のものであり、そんな処で誤謬を犯す公務員は居ない筈なのですが、アベ政権下では、国の公務員もそれ程までに劣化したのでしょうか。 もうここまでアホになれば何も言うこともありません。

そもそもふるさと納税の制度もアホな制度です。 何が「ふるさと」ですか? 寄付者が当該自治体の出身ならば理解も出来るのですが、寄付を受ける自治体の出身か否かを問わないのですから、入る筈の税源が逃げる自治体は悔しい思いをするでしょうし、金額によっては予算編成に支障が出る自治体もあるかも知れません。 そもそも寄付ならば反対給付をするべきではないと思います。

昔から寄付に報いるには、せいぜい表彰状なのです。 昭和の昔に地元の中学校に寄付した亡父が受け取ったのも表彰状一枚のみでしたし、亡父もそれを名誉に思っていました。 更に言えば、寄付ならば、減税もしないので普通かも知れません。 私自身が毎年恒例のように犬猫等の動物保護をしている団体へしている寄付も同じです。 最近では、NPO等への減税制度で一定額以上の寄付をすれば減税の恩恵を受けられるようになりましたが、もとより減税が目当てではありません。

国との紛争を離れて、そもそも泉佐野市もなりふり構わずに寄付を募る羽目になった落ち度を反省しなければならないでしょう。 関空が出来るからと大規模開発に依り施設建設等をするから借入金が増えた訳ですし、関空が出来ても海外からの客人が泉佐野市に滞在する訳も無く、インバウンド効果は大阪市中心部と京都、奈良等に限られる訳です。 もっとも、バブルの終末期にあり関空近辺で時ならぬ開発ラッシュがあったのも事実でした。 その当時に職場(「特定行政庁・土木建設部門)からの視察をした時の感想では開発に伴う地元の地方自治体の関連予算の拡大がある、と思われたものでした。 当然でしょう。 関空近辺にある泉佐野市での新規開発地が拡大していたからです。 当然人口も増えることが予想出来ましたし。

ともあれ、今回の国と地方の紛争では、国の不様ぶりを見ることになりました。 当初から予想をしていたので驚くことは無かったのですが、如何にも不様な国の現実を見て却って情けなくなりました。 その昔には、このようなことを眼前に見ることは無かったのでしたが、いったい、この国の官庁は何処まで墜ちるのでしょうか。