4月30日付下記記事より
テリーザ・メイ首相は、政権に一瞬の空白もあってはならない、よってEU離脱についての確証を得るために、当座総選挙を行うことはないとの前言を翻して、突如4月中旬になって総選挙を行うと宣言したのは、実務型の彼女にしてはなかなかの辣腕ぶりの面をうかがわせるものだった。それに対して、労働党リーダーのジェレミー・コービーはいつでも受けて立つと口先は勇ましいが、内情はお寒い限り。先行世論調査でもすでに、保守党に大差を付けられている。
ワシントンポストの記事によれば、中央銀行や官営企業の再拡大など、左より路線をとるコービーの支持者は熱烈な労働運動家が中心で、英国民の大多数の思惑からは大きく外れており、あと6週間後の総選挙では歴史的大敗はおろか、労働党自体の解体の恐れすらある。
トランプに対する敗北を巻き返そうとするアメリカ民主党は、この顛末をよくかみ締める必要があるだろう。
フランスの大統領選の第一投票結果を見ても、左派候補同士で票を食い合って、結局もともとは社会党政権時代の経済相でありながら、中道路線に転換したマクロンがリードしている。
かつての労働党リーダーにして元首相のトニー・ブレアも左派路線ひた走りのコービーには愛想を突かして、メイを支持している。
と、強烈に辛口の批評内容になっているが、これはこの国の野党の体たらくにもある意味妥当する分析ではないだろうか。ようは労働者の味方だのなんだのきれいごとを言っていても、およそ第三次産業がGDPの70%を占めているような状況で、いつまでも工場労働者の組織論から五十歩百歩の地点で発想しているようでは、政治的な力には決してならないというだけのことなのだ。理論的には労働者とはなんなのか、それが実にいい加減であって、直接物財を作るのが労働者であるなどという程度の認識であれば、全く現実には歯の立たない議論に終始していることになる。ワシントンポストの記事でも指摘されているが、19世紀のプロレタリアートの時代ではない、そのことを、既にいくたびも語られた事柄ではあるが、理論的実践的にどう受け止めるのか厳しく問うべきであろう。
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