Global Headlines:ウクライナの危機、ヨーロッパの危機

<はじめに>
 トランプの再登場が決まった。しかも予測とはまったくちがって、民主党候補ハリスに圧倒的な差をつけての勝利であった。いったいアメリカはどうなっているのか、いやそれ以上に、これから世界はどうなるのか、いま怖れや不安が渦巻いている。それにしても、白人・男性のトランプは仕方がないにしても、白人・女性や有色人種やヒスパニックらのマイノリティは民主党のはずではなかったのか。識者によれば、第一次トランプ政権の成立を後押ししたのは、かつてはアメリカ社会の主流をなしていた没落した白人中産階級(ワスプ/White Anglo-Saxon Protestant)の怒りや不安だったという。しかもそれらの人々は、主にラストベルトと言われるかつてのアメリカ産業資本主義を支えた地域に属していた。つまりトランピズムは、旧いアメリカの反動やけいれん的現象にすぎないと。それとは対照的に、アメリカのグローバリズムの担い手である、金融資本が支配する東海岸やデジタル資本が支配するに西海岸は、民主党の牙城であると教えられた。しかしトランプ陣営に参加して勝利を後押した有力なひとりが、イーロン・マスクであったことは、今回の事態を象徴している。彼は世界的なトップ企業であるEVテスラの旗手である。少数派に転落する恐怖に打ち震える生粋の白人層ではなく、三つの国籍をもつ南ア出身の実業家なのだ。グローバリズムの担い手が、内向化保守化に傾斜するトランプをどうして推すのか、率直に言ってよくわからない。しかし今回の大統領選では、リベラリズムが大敗北を喫したことは直視しなければならない。そこには白人層だけに限らないアメリカの国民意識の地殻変動が生じている可能性あり、事態の推移をじっくり見定める必要があるだろう。リベラルな国民階層という意味では、ほとんどの他国はアメリカよりもはるかに脆弱なのだから、大なり小なりアメリカ依存の姿勢を改め、次に来る事態に備えなければならないであろう。
 最後になってしまったが、次に来る事態で最も憂慮されるのは、ウクライナ戦争である。トランプの登場は、プーチンにとってまさしく渡りに船、ロシアに有利なかたちで戦争終結に持ち込めるチャンス到来である。アメリカが支援から手を引けば、ウクライナの抗戦能力にも限度があり、どこかで譲歩しなければならなくなる。EUの盟主であるドイツが政変がらみの怪しい雲行きになってきたことも、ウクライナに不利な条件である。ウクライナを孤立させれば、次はバルト三国やポーランドがプーチンの餌食になりかねない。ロシアのウクライナ侵攻は、NATOの東進戦略に対するやむを得ざる防衛的反応であったとする詭弁に、我がリベラル派内でも同調する向きもあった。しかし冷戦終結後、NATO諸国の軍備費は1/5に縮小しており、平和志向は明らかに基調であったのだ。トランプへの働きかけをふくめ、日本が平和憲法内で最大限可能な国際世論への働きかけを強めることが必要であろう。

トランプ大統領勝利後のウクライナ戦争: 自力で(勝負)
――次期米国大統領であるトランプ氏は、プーチン氏との取引を望んでいる。これはウクライナを傀儡国家に変えることになり、EUの結束も危うくする。
出典:taz.6.11.2024 von Paul Hockenos
原題:Ukraine-Krieg nach Trumps Wahlsieg:Auf sich allein gestellt
https://taz.de/Ukraine-Krieg-nach-Trumps-Wahlsieg/!6044258/
 ドナルド・トランプ氏は、ウクライナ問題についてウラジーミル・プーチン氏と協定を結ぶ用意があることを表明した。このような解決策は、ヨーロッパでもますます多くの「平和志向」の政治家によって提唱されている。しかし、トランプ氏だけが、「24時間以内に」戦争を終わらせることができると主張している。彼の迅速な解決策には詳細が含まれていない。しかし可能性が高いのは、トランプ大統領が念頭に置いている取引は、ロシアがクリミアを含むウクライナの占領地を維持することだということだ。おそらくウクライナには安全保障の裏付けはないだろう。いずれにせよ、トランプ大統領はプーチン大統領が約束を守る人だと信じているようだ。切り取られたウクライナは、傷を舐めながら前進するだろう。この方法で問題を解決したいと考えている西側の政治家はトランプ氏だけではない――そしておそらくそうして問題は片付くのだろう。
 (しかし)ヨーロッパにとって、この選択肢は容認できず、実現不可能である。このシナリオでは、ウクライナ人は敗戦の無力な犠牲者にすぎない。 トランプ氏は、この勇敢な国民は、欧米が自分たちを見捨てたことに気づけば、潔く敗北を受け入れるだろうと考えているようだ。おそらく、これはロシアがウクライナ東部と南部を自国領と認め、モルドバと同様に残りの地域を事実上支配することを意味する。トランプ氏が約束したように、戦争は24時間で終わるわけではなく、東ヨーロッパでは今後何年も続くであろう。米国が支援を取り下げたとしても、ウクライナ人がこれに同意する見込みはない。2014年以来、この国はヨーロッパでも独特な民主主義を作り上げてきた。EU 精神に対する市民のコミットメントは、大陸の他のどの国よりも強い。このような状況下では彼らは降伏しないだろうが、もしヨーロッパに見捨てられれば、彼らはブルジョア民主主義をあまり好ましくないイデオロギーに置き換えるかもしれない。いずれにせよ、戦争はトランプ大統領が約束したように24時間で終わることはなく、東ヨーロッパで何年も続くだろう。
古風な世界秩序
 このシナリオはまた、西側諸国全体が過去10年間の成果を放棄することを意味する。すなわち、民間および軍事面での資金援助、外交的関与、ウクライナへの約束、さらには自由民主主義と戦後平和の代表としてのEUという理念さえもである。大西洋同盟の信頼性は危機に瀕し、独裁者の時代が到来したのだ。 解釈の主権はプーチン、トランプ、オルバン、そして習近平に帰属することになる。「力は正義」という原則が、ルールに基づく国際秩序の原則に取って代わる。それは、国家、国家の形態、国家の国境が最も強力な国家の専権事項であるという新しい時代の幕開けとなるだろう。
 ロシアがバルト諸国やポーランドに侵攻しなくても、中東欧諸国への影響は破滅的なものとなるだろう。 ロシアはおそらく、この方法で(直接侵攻で―N)大西洋同盟と戦うつもりはなく、15年以上にわたって使用してきたハイブリッド戦争で戦うつもりだろう。バルト三国、ポーランド、スロバキア、ルーマニアの国境全域にロシアが駐留すれば、プーチン大統領はより強力なサイバー攻撃、偽情報発信、破壊活動を利用でき、オルバン大統領のフィデスやAfD、RNといった彼のお気に入りの極右勢力を強化できるだろう。ウクライナを売り渡すことに対するポーランド、バルト三国、ルーマニアの反応を予測するのは難しいが、彼らが怒って同盟を破棄し、ウクライナ人とともに独自に戦うことは十分に考えられる。NATOとEUの結束が危機に瀕しているというほかない。
ベラルーシ・モデルをウクライナ、グルジア、モルドバに適用
 プーチン大統領自身がこのような合意を受け入れないのは、皮肉なことである。あるいは、もし受け入れたとしても、それはより強力な権力を得るためだけであり、その後、国際条約で繰り返してきたように、約束を破るだけだろう。ロシアが強国である以上、プーチンがロシアの戦場での利益に自らを限定するとは考えにくい。その代わり、彼はハリコフ、ザポリージャ、オデッサも領有権を主張するだろう。(そうなると、彼はモルドバも手に入れるだろう)
 プーチンはウクライナのほんの一部のためにこの戦争を戦っているわけではない。彼はウクライナ、グルジア、モルドバが自分に対して屈服し、ベラルーシのようにロシアに似た政治体制を受け入れることを望んでいる。さもなければ、そういう事態に直面させることを望んでいるのだ。かくして彼らは、堕落したリベラルな西側諸国と対立する権威主義陣営に属することになる。ベラルーシのようにこの決定を彼ら自身が行うこともできるし、ロシアに任せることもできる。このシナリオがヨーロッパに及ぼす影響は壊滅的である。500万から1000万人のウクライナ難民がEUに押し寄せるであろう。ウクライナ自体は荒廃し、2014年以降ロシアの支配下にあるドンバスと同様に、無法なマフィアの支配地域へと変貌してしまうだろう。もしロシアがウクライナの黒海沿岸全体を支配すれば、何億もの人々を養う穀物の供給源を握ることになり、情に脆い欧米諸国に圧力をかける新たな手段を手に入れることになる。ロシアは、中東やアフリカと同様に、BRICSや他の権威主義的な反西洋同盟の中で、その立場を大幅に強化することになるだろう。
 これらのシナリオはどれも欧州には受け入れられないため、トランプ政権下の米国にこの解決策が完全に間違っていることを納得させなければならない。あるいは、もしワシントンが拒否した場合、ウクライナに関する地政学的および軍事的計算からトランプ氏を除外すること。 ヨーロッパはその後、自力で、(第二次大)戦後初めて自らの運命を完全に自らの手で切り開くことになる。
(機械翻訳を用い、適宜修正した)

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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