<はじめに>
欧州連合(EU)の加盟27カ国で6月6日~9日、5年に一度の欧州議会選挙(定数720)の投票が行われた。開票の結果、EUに反発する右派・極右勢力がやや伸長したが、全体としては親EU勢力3会派が過半数を維持した。ただ環境政策を掲げる「欧州緑グループ・欧州自由連盟」(中道左派・左派)のみが、71から51議席へと20議席減で大幅に後退、ウクライナ戦争によるエネルギー危機が、環境政策に負の影響を及ぼしていることがはっきりした。コロナとインフレの傷を負う欧州では、人々は安全と安定を求めてエコ政策は不人気であることがはっきりした。これから重要な地方選挙を迎えるドイツでの「緑の党」への影響が懸念される。
「脱成長」論や「成長の限界」説は理論的である限りでは説得力があるものの、それをそのまま政策論とするには大きな危険をともなう。現実には経済成長の鈍化は再分配政策に大きな制約を課し、それがゆえに人々のつのる不満や怒りは右派勢力、ファッショ勢力を強化する方向へ向かいかねないからである。くわえてグロ―バリゼーションにともなう産業の空洞化や社会格差の深刻化、移民増大による社会軋轢など、喫緊の課題へ有効な手立て、代案(alternative)を見出しうるのか否か。この点でいわゆる西欧的価値の真価、普遍性が問われている。
EU議会の右派陣営の次の動きは?
――ブリュッセルではEU選挙後に右派政党が再編を進めている. その結果、新旧の同盟関係が生まれた。AfDは新たな議会グループを設立した
出典:Deutsche Welle 7/10
原題:Wie geht es im rechten Lager des EU-Parlaments weiter?
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右翼ポピュリスト(大衆迎合主義者)であり、ある面では極右でもあるAfDは2日、欧州議会に新たな議員連盟を設立した。ドイツ通信社によると、14人のAfD議員に加え、ポーランド、チェコ共和国、スロバキア、ハンガリー、ブルガリア、リトアニア、フランスの11人の議員が加わる。国会議員の一人は極右団体「フランスのルコンケートReconquête(奪回)」に所属している。こうしてAfDは、7つの加盟国から少なくとも23人の欧州議会議員で構成される議会グループ結成の最低条件を満たした。この新政治グループ(フラクション)は「主権国家の欧州」と呼ばれ、EU議会の最右翼に位置する。政治団体としての地位は、とりわけEU議会での発言時間の増加、委員会での議席の獲得、スタッフや事務所への資金提供の増加をもたらす。EU選挙前、右派グループ「アイデンティティと民主主義」(当時第2位の極右グループ)は、「ドイツのための選択肢」(AfD)を排除した。その理由は、最有力候補マクシミリアン・クラ氏の武装親衛隊(Waffen-SS)に関する発言を相対化したことにあった。※
※野上註―伊紙レプブリカとのインタビューで、クラ氏は次のように語った。「誰かを犯罪者だと宣言する前に、その人物が何をしたのか知りたい。90万人のSS隊員の中には、多くの農民もいた。確かに犯罪を犯した者の比率は高かったが、全員ではなかった。SSの制服を着ていれば誰でも自動的に犯罪者になると言うつもりは全くない」。これを受けて、欧州議会における極右の政治会派「アイデンティティーと民主主義(IDグループ)」は声明を出し、ドイツの代表であるAfDを即座に除名すると明らかにした。
「欧州のための愛国者」に対するファイアウォール(防火壁)
6月初めの欧州選挙以来、多くの国で右派政党が大幅に躍進した。しかし、誰が誰と手を組むかはまだ不透明だった。週明けにさらなる衝撃が走った。ハンガリーのヴィクトール・オルバン党首とフランスのマリーヌ・ルペンを中心とする右派ポピュリストを中心とする「欧州のための愛国者」グループが、月曜日に正式に設立されたのだ。 このグループは、キリスト教民主欧州人民党と社会民主党に次いで、新しく選出された欧州議会で3番目に強い勢力となる可能性が高い。EU議会の社会民主党と緑の党は、すでに新たな極右派閥「欧州のための愛国者」に対する防火壁※の設置を求めている。SPDのカタリナ・バーリー副議会議長は、これは「孤立したものでなければならない」と、「エディトリアル・ネットワーク・ドイツ」の新聞社に語った。
※野上註―防火壁とは、右派グループに委員長のポストをはじめとする多くの権限を渡さない封じ込め措置である。
仏・国民連合、新右翼グループ「欧州のための愛国者」に参加
フランスで選挙が行われた翌日、右翼民族主義政党「国民連合Rassemblement National」が、新たに設立された右翼団体「欧州のための愛国者」に参加することを発表した。週末までフランスの次期首相と噂されていたジョルダン・バルデラが、このグループの議長を引き継ぐことになる。30人の国会議員を擁する国民連合は、議会グループ内で最強の政党である。ハンガリー政府報道官のゾルタン・コバックスがXで発表したところによると、ハンガリーの保守政党フィデスが11人の議員を擁しこれに続いている。
新しい「欧州のための愛国者」議員連盟の設立も、オルバンのイニシアチブによるものだ。オルバンは、EU理事会の輪番制議長国に就任する前日の6月末には、チェコのアンドレイ・バビス元首相(リベラル・ポピュリスト政党ANOの党首でもある)、オーストリアのヘルベルト・キックル自由党党首(右派政党FPÖの党首)とともに、EU議会に新しい政治グループを結成することを発表した。オルバンはロシアに友好的とされ、過去にはEUのウクライナ支援を妨害したこともある。現在、ウクライナへの軍事援助65億ユーロが保留されている。オルバンはまた、最近のロシア訪問についてEUや他の加盟国から多くの批判を受けた。
サルビーニとウィルダースの議員グループ
オルバンによれば、彼らが署名したいわゆる愛国宣言は、「ブリュッセルのエリート」が責任を負う「戦争、移民、停滞」の代わりに「平和、安全、発展」を約束するものだという。この新たなグループは、欧州連合の「グリーンディール」の一環としての気候保護対策にも(刃が)向けられている。まだ正式には決定していないが、同グループは12カ国の欧州議会議員計84名で構成される。これらには、イタリアのマッテオ・サルヴィーニの国家主義レガ、ポルトガルの右翼ポピュリストのチェガ党、オランダ人のヘルト・ヴィルダースの急進右翼政党が含まれる。
右派保守のECR議員グループ、4位に降格
オルバン・グループは、右派保守派「欧州保守と改革派」(ECR)の78議席を抜き第3位となった。ECRグループには、ポーランドの保守系野党「法と正義」(PiS)やポスト・ファシスト運動に起源をもつ「イタリアの同胞団」(Fd’I)などが含まれており、その議長を同胞団のジョルジア・メローニ首相が務めている。党「法と正義」(PiS)やイタリアの「イタリアの兄弟」(Fratelli d’Italia)などが含まれる。
右派保守派ECRは、すでに次の議会会期に向けた優先課題を設定している。EUは核となる任務に集中すべきである。いかなる「EUの超国家的国家への発展」にも断固反対する。移民の分野では、彼らは不法入国に対抗し、EU域外での亡命申請を処理するためのいわゆる外部「入国プラットフォーム」を創設したいと考えている。同時に、移民の原因と積極的に闘うべきである。内燃機関を段階的に廃止するという決定は修正されるべきであり、温室効果ガスのさらなる削減も再検討されるべきである。ECRは、ロシアの侵略者に対するウクライナの支援を継続することに断固賛成する。つまり、これからの欧州議会には3つの極右議会グループ―「欧州のための愛国者」、「主権国家の欧州」、「欧州保守改革グループECR」―が出現することになる。議会は7月16日に開催される. 陣容はそれまでに最終決定されるはずである。
(機械翻訳を用い、適宜修正した)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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