Love is Love 愛は愛 -オバマ、アメイジング・グレイス絶唱-

 オバマ・アフリカ・アメリカ大統領が絶唱する<アメイジング・グレイス>を聞きましたか? チャールストン銃撃犠牲者の州上院議員クレメンタ・ピンクニ―牧師追悼演説の最中、アカペラ(無伴奏)でこの讃美歌を歌い出しました。 オバマの後ろにいた黒人聖職者たちは「ハッハ~!」と奇声を上げ目を丸くしましたが、そこは聖歌隊で鍛え上げたシンガー仲間、、すぐに立ち上がりオバマに合わせ、大声で歌います。 会場の内外を埋めた5,500人以上の参列者も一緒になって、大斉唱。 <アメイジング・グレイス>はチャールストンの黒い雨雲を震わせました。

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(1) チャールストンの黒い歴史:
 2015年6月17日の夜、アメリカ南部サウスカロライナ州チャールストンの黒人教会で、聖書の勉強会が行われていた。 参加していた白人の男が、「お前たち(黒人)はわれわれ(白人)の女性たちをレイプしている。われわれの国を乗っ取るつもりだ!」と叫ぶと銃を乱射した。 黒人礼拝者9人が銃殺され、1人が負傷した。現場から逃走した21才の殺人犯ディラン・ルーフは翌日ノースカロライナで逮捕され、警察は<憎悪犯罪(ヘイトクライム)>と断定した。 殺人犯ルーフは父親から今年4月の誕生日に銃を与えられ、過去に麻薬関連の逮捕歴があった。フェイスブックの<犯行宣言>で、「黒人は下等人種で白人の敵だ。黒人差別の歴史は誇張で神話に過ぎない。チャールストンを犯行場所に選んだのは、かつて米国で黒人の比率が一番高かった歴史的な街だからだ」と、語っている。 掲載写真には、人種隔離(アパルトヘイト)政策をとっていた南アフリカの旧国旗や南北戦争時代の南軍旗を散りばめていた。
 この黒人教会は1816年に設立された。 1822年、創設者の一人デンマーク・ビーゼーは奴隷制度に苦しむ黒人らによる暴動を計画したが事前に発覚し処刑された。 教会は1834年から南北戦争終結後の1865年まで非合法化されていた。
 現在の教会の建物は1891年に建てられ、米政府から「歴史的建造物」に認定されている

南北戦争とは、奴隷制度の廃止を決めたアメリカ連邦に反発した南部11州と、それを認めない北軍アメリカ連邦との間で1861年から4年間にわたって続いた内戦を指す。 1965年4月9日、南軍を率いたリー将軍がバージニア州アポマトックスで、リンカーン・アメリカ連邦大統領に降伏し、終結した。南北両軍の死者は計約623,000にのぼったという。

(2) オバマの追悼演説:
 2015年6月26日、アメリカ・サウスカロライナ州チャールストン黒人教会銃乱射事件の犠牲者の一人、州議会議員クレメンタ・ピンクニー牧師の追悼式が行われた。 
 同日午後2時49分、「All praises and honor to God(全ての誉れと栄誉は神のため)」と、オバマ・アフリカ・アメリカ大統領オバマ氏は故ピンクニ―牧師の想い出を語り始めた。
 そして、2008年大統領選挙キャンペーン時のピンクニー牧師との出会いを披露した。 さらに、1985年から1988年にかけて若きオバマがシカゴ黒人教会の地域組織で奉仕活動をしていたことを例に出し、黒人教会の社会的存在を強調し、信者の喝采に火を点けた。 
白人銃撃犯が白人至上主義の象徴とみなした南北戦争時代の南軍旗について、「組織的な抑圧を想起させるものだ」と批判し、南部諸州の議事堂などから撤去すべきとの考えを示した。
「Amazing grace (素晴らしい恵み)Amazing change(素晴らしいチェンジ)
この私が好きな讃美歌は、ジョン・ニュートンが奴隷貿易時代に作詞したものだ」
ジョン・ニュートンは1725年、イギリスに生まれた。 敬虔なクリスチャンだった母親は、ニュートンが7歳の時に亡くなった。 成長したニュートンは、商船の指揮官であった父にくっついて船乗りとなったが、黒人奴隷を輸送する「奴隷貿易」に携わり富を得るようになった。 しかし、22才の航海の時嵐に会い、神に祈ったおかげで船も彼も助かったという。 以来、神の奇蹟を信じ黒人奴隷に同情し、牧師となり多数の讃美歌を創った
「Amazing grace. (素晴らしい恵み)」
少し間をおいて、、
「Amazing grace.(素晴らしい恵み)」
長~い間をおいて、、、
オバマ・アフリカ・アメリカ大統領はアカペラ(無伴奏)で低く歌い出した。 聖職者も参列者もみんな立ち上がって声を合わせた。 控えていたバンドもキーを探って伴奏した。
会場は涙と歓声に包まれていく。
「Amazing grace! 素晴らしい恵み、なんと甘美な響きだ
私のように悲惨な者を救って下さった。かつては迷ったが、今は見つけられ、かつては盲目であったが、今は見える」
そして。オバマは、「クレメンタ・ピンクニはその恵みを見つけた。シンシア・ハードも,、スジー・ジャクソンも、、エセル・ランセも、、デパイン・ミドルトンも、、ティワンザ・サンダーも、、ダニエル・シモンも、、ミラ・トンプソンも、、みんな、恵みを見つけた、、」と黒人教会銃撃事件犠牲者9人の名を叫んだ。 そして、「神がその恵みをアメリカ合衆国に注ぎつづけられますように、、」と結んだ。
6月26日3時28分、完璧なシナリオと天才的名優による追悼公演は観衆を酔わせて幕を降ろした。 よかった~!

(3) Love is Love (愛は愛)の日、6月26日:
 2015年6月26日、アメリカ連邦最高裁判所が同性婚をアメリカ全州で認めた。 この日を、オバマ・アフリカ・アメリカ大統領は国民の祭日にした。 ホワイトハウスは<Love is Love>という大見出しでこの歴史的な日を祝った。 アメリカの<LGBT>運動を牽引している<ハーベイ・ミルク財団>は、<ハーベイ・ミルク勲章>をパン・ギムン国連事務総長にサンフランシスコ市庁舎で贈った。 パン事務総長は、「40年前にこの建物からハーベイ・ミルクは、同性愛者の権利を求める運動を起こした」と、勇気ある同性愛者ミルクを讃えた。 1977年、同性愛者が毛嫌いされていた頃、ハーベイ・ミルク(1930~1978)は自らが同性愛者であることを公表してサンフランシスコ市議会議員の席を勝ち取り、差別反対運動を繰り広げたが、市庁舎で同僚議員ダン・ホワイトの凶弾に倒された。   
YouTube で1984年アカデミー最優秀長編記録映画賞受賞した<ハーヴェイ・ミルク>を検索してみてください。    
<LGBT>とは<lesbian, gay, bisexual and transgender>の頭文字で、訳すと<レスビアン、ゲイ、両性愛者、性転換者>の意味で、長年にわたり、差別と屈辱を受けてきた。
<NAACP>は、<National Association for the Advancement of Colored People>の頭文字で、訳すと<全国有色人種向上協会>を意味し、<全米黒人地位向上協会>と邦訳されることもある。 人種暴動が初めて起こったのは、1908年イリノイ州スプリングフィールドだった。 葯100年後の2007年に、オバマがこの歴史的な地でアメリカ大統領選出馬表明をしている。 1909年にNNC(National Negro Committee)全国黒人協議会が創設されたが、提唱者13人のうち黒人は2名のみで、残りはユダヤ人を中心とする白人だった。 1910年に白人弁護士モアフィールド・ストーリが会長となって<全国黒人向上協議会>に変名された。
有色人種差別と同性愛者差別をなくすことは、オバマ・アフリカ・アメリカ大統領に与えられたキリスト教徒の使命なのかもしれない。 ユダヤ人差別に関しては、オバマを煩わせるまでもなく、ユダヤ教徒自らが解決し報復に打って出ている。

YouTube で<President Obama sings Amazing Grace>と入力してみてください。
歌だけ聞きたい人は、2分31秒のを、フル演説を知りたい人は38分37秒の動画をクリックしてください。 オバマ名演説の中でも最高傑作です。

2015年6月29日、オバマはTPP環太平洋パートナーシップ協定を巡って、アメリカ政府に強力な交渉権限を与える法案に署名しました。 「われわれはアメリカのビジネスのため、貿易のルールを書き換えなければならない。そのために、この法律が役に立つ。アジアや世界でアメリカの指導力が強化されるだろう」と、オバマ・アフリカ・アメリカ大統領は言ったそうです。 なに~、アジアでアメリカが強力に指導する~! 強力な指導とうは、奴隷扱いじゃないですか?  奴隷扱いされる身にもなってください。   
オバマ・アフリカ・アメリカ大統領殿、日本の奴隷にもグレイスお願いしま~す。

文:平田伊都子 ジャーナリスト、  写真構成:川名生十 カメラマン

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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