SJJA& WPO【西サハラ最新情報】581 西サハラ難民軍ポリサリオの敵は植民地主義

 2024年5月15日、フランスのアタル首相が、住民蜂起が発生した南太平洋のフランス特別自治体ニューカレドニアの港と空港への、フランス軍派遣を発表しました。
 同日5月15日の国連定例記者会見でも、アメリAFP仏通信記者が事件を取り上げました。 <特別自治体>とAFPもフランスも胡麻化していますが、フランスの植民地です。
 NHK も5月17日に、<南太平洋にあるフランス領>として、報道しました。
 西サハラと同様にニューカレドニアも、国連が非自治地域(植民地)と規定する17地域の中に含まれています。

① Referendum(レファレンダム人民投票)を諦めないニューカレドニア:
 南太平洋のフランス特別自治体(植民地)ニューカレドニアで13日から14日にかけて、フランス本土で地方(植民地を含む)選挙の投票権拡大に向けた憲法改正案に、独立派が反発し大規模なカナック族住民の蜂起が起きた。約200人が逮捕され、数百人の住民が負傷し4人が死亡するという、1980年代以降で最悪の暴動となった。中心都市ヌメア市内や市周辺では店舗や工場など約30か所が放火された。AFP仏通信は、焼けた車や煙を上げているタイヤが路上に放置されていて、一部の暴徒は商店に入り商品などを略奪したと、伝えている
 ガブリエル・アタル・フランス首相は記者団に、政府の「優先事項は秩序と平穏を回復することだ」と述べた。問題の憲法改正案とは、フランス国民議会(下院)で審議されていた「 ニューカレドニアに10年間住んでいるフランス系住民(入植者)に地方選挙での投票を認める法案」で、既に、下院では可決された。上下両院で同法案が承認されると、フランス植民地・ニューカレドニアはフランス人入植者に支配され、カナック先住民は被占領民になってしまう。フランスは、ニューカレドニアの世界埋蔵量5位のニッケルとコバルトに執着しているのだ。フランスは既に駐留する1,700人の警備隊に加え、さらに1,000人の追加警察隊を、5月17日に送った。
 フランス<特別自治体>というのは、植民地主義フランスが考えた巧妙なトリックだ。
 モロッコはこのアイデイアを真似て、2007年に西サハラはモロッコの<地方自治体>という案を作成し、西サハラを<モロッコサハラ>と変名した。以来、モロッコは国連にこの案の承認を迫り、国連提案の<国連西サハラ人民投票>を否定してきた。西サハラ独立運動を指導するポリサリオ戦線は、<国連西サハラ人民投票>実施を国連安保理に急がせている。アルジェリアも南アフリカも、<国連西サハラ人民投票>早期実現を促している。
 ニューカレドニアの人口は30万人弱。1998年に仏本国と結んだ「ヌメア協定」で、段階的な行政権の移譲が定められた。協定に基づきこれまで3回にわたって独立の是非を問う人民投票が実施されたが、いずれの投票でもフランス人入植者の策略が功を奏し、否決された。 しかし、ニューカレドニアと人口もほぼ同数の西サハラでは、一度も人民投票が行われていない。 

② 5月10日はポリサリオ戦線創設の日、5月20日はポリサリオ戦線武装蜂起の日:
 1973年5月10日に<サギア・エル・ハムラとリオ・デ・オロ解放人民戦線>という長い名前の西サハラ独立運動組織が設立された。<the Popular Front for the Liberation of Saguia El-Hamra and Rio de Oro >の名称は頭文字をとって<Polisario Front(ポリサリオ戦線)>と短縮された。<サギア・エル・ハムラ>はアラビア語で<赤い涸れ川>を、<リオ・デ・オロ>はスペイン語で<金の川>を意味し、西サハラ北部と西サハラ南部のあだ名だ。そのポリサリオ戦線は, 1973年5月20日、武装闘争の開始を決定し、武装手段と政治手段で植民地支配に決別することを宣言した。1991年、国連安保理が「国連西サハラ人民投票」という和平案を提示し、紛争両当事者のモロッコとポリサリオ戦線は停戦した。が、2020年11月13日、モロッコは国連緩衝地帯に進軍し停戦合意を破った。ポリサリオ戦線は武器博物館に眠っていたモロッコ軍からの捕獲武器を持ち出し、応戦している。  
「半世紀以上にわたるポリサリオ戦線の軍事と政治の闘争が今、復活した」と、ポリサリオ戦線の創設者故エルワリを継いだ実弟のバシールは、創設日に難民を叱咤激励した。
 ポリサリオ国連代表オマル博士は、「武装闘争の再開が、30年近く<戦争でも平和でもない>状態のままだった西サハラ問題に<新たな命>を吹き込んだ」とし、「アラブ内外の国際メディアが西サハラ問題を様々な角度から取り上げるようになり事態を取り巻く沈黙が破られた」と。アルジェリアのメデイアに語った。
 サハラ人民解放軍中央政治局が発表した最新軍事声明によると、「わが軍の先て部隊は5月13日、マフベス地区のモロッコ王国軍補給センターを標的に攻撃を行った。この攻撃は、侵略軍の隊列にかなりの損失をもたらした」と、ある。が、未だ確証は取れていない。
 

5月14日、アルジェリアにある西サハラ難民キャンプで会議をする
ポリサイオ戦線の幹部たち、左端が創設者エルワリの実弟バシール

 
③ アフリカン・ライオン:
 モロッコは、ポリサリオ戦線武装蜂起の5月20日に、アメリカ軍のアフリカン・ライオン軍事演習計画をぶつけた。「モロッコにはつよ~い見方がいるんだ」と、見えを張った?
 FAR (モロッコ王立軍)は、「国王陛下兼最高司令官兼FAR王立軍参謀総長の尊いご指令で、<アフリカン・ライオン2024>の演習は、5月20日から31日までベンゲリル、アガディール、タンタン、アッカ、ティフニットでFARとその米国カウンターパートによって行われる」と、あたかもモロッコ国王主導の軍事演習のように公表した。イスラエルも参加する予定だ。占領地西サハラを演習地に提案したが、アメリカに外されたようだ。
 アフリカン・ライオン演習を主催するアフリコムの発表は、FARモロッコ王立軍発表と随分違う。アフリコム(米アフリカ軍)の司令部はドイツ・シュトゥットガルトにある。
 アフリカン・ライオン演習とは、モロッコ、ガーナ、セネガル、チュニジアが共催する米国アフリカ軍による大規模年次合同演習のことを指す。この全領域、多要素、多国間の合同演習にはNATOを含む20カ国以上から10,000人以上が参加し、アフリカおよび世界中の危機や不測の事態に対応する準備態勢の構築が目的だ。アフリカン・ライオン2024は軍事演習活動の20周年に当たり、指揮所演習、野外訓練演習、実弾射撃の実演などがある。人道的市民支援プログラムのイベントには、医療、歯科、獣医などとの共演も行われる。
 4月29日、アフリカン・ライオン大演習はまずチュニジアで行われ、ジョーイ・フッド駐チュニジア米国大使は、アフリカ諸国の軍幹部と演習に参加し、軍事面だけでなくチュニジアの経済活動にも協力すると語った。アメリカの狙いは、アフリカ大陸の掌握にある。
 モロッコは米軍の軍靴を占領地西サハラに踏み込ませようと画策してきた。モロッコ占領地・西サハラでは、相変わらず、モロッコ軍の援護射撃を受けて、被占領民の西サハラ人を標的に暴れまくっている。
 入植者の異常な暴挙は、ユダヤ人入植者も同じだ。
 「検問所に近ずくと、ロータリーにユダヤ人入植者がいるのを見て驚いた。 入植者は車を叩き、タイヤを外し、トラックの荷物を地面に投げ捨てた。 私たちは、捨てられた支援物資の一部を集め、ブルドーザーで羊の牧場に送った。 15台ほどのトラックが破壊され、ヘブロン食品貿易協会全体の損害は約3.1億円に上る、、イスラエル兵はユダヤ人入植者たちの暴行を、傍観していた」と、アデル・ヘブロン食品貿易協会代表は訴えた。
 ヘブロンに住むムアーズの家は、キリアット・アルバという名のユダヤ人入植地に挟まれている。1994年2月25日、イスラム教とユダヤ教の聖地でもあるイブラヒムモスクで集団礼拝をしていたイスラム教徒たちに、キリアットアルバのユダヤ人入植者・ゴールドシュテインがライフルを乱射した。父は血まみれになって、ムアーズの目の前で倒れた。
 筆者はムアーズの家に泊まり込んで何度か取材した。キリヤットアルバ・ユダヤ人入植者たちが集団でイブラヒムモスク礼拝に出かける時は戒厳令が敷かれる。家の前を入植者集団が通る時は、窓から顔も出せないし咳きも抑える。キッパを被った子供たちまでもが、銃を引きずって行進しているからだ、、
 
 世界中の学生がパレスチナ連帯のシンボルとして、黒と白の模様があるクーフィーヤ(ハッタ)という被り物を纏っています。 パレスチナ最後のハッタ織物工場<ヒルバウィ>が、ヘブロンにあります。 工場閉鎖の危機を乗り切って、今や、在庫切れになる繁盛ぶりだそうです。 ただ、日本からの輸入品という織機15台は時代遅れだそうで、生産が追い付かないとか、、 ご注文は、お早めに!
 
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861

同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
 
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU

Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa]  英語版URL:   https://youtu.be/au5p6mxvheo
 
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十  2024年5月18日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
 
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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