SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】347 体調不良のホルスト・ケーラー元国連個人特使、実は元気

 2019年5月22日、当時の国連西サハラ事務総長個人特使で元ドイツ大統領ホルスト・ケーラー氏が突然、国連事務総長アントニオ・グテーレスに電話で、国連西サハラ事務総長個人特使からの辞任を伝えました。 ホルスト・ケーラー個人特使の西サハラ和平交渉は非常に順調で、8月にも第3回交渉が予定されていた矢先のことでした。 理由は体調不良と国連事務総長報道官が発表しましたが、事務総長は留任を求めることもせず、あっさり受理したのが不思議でした。 それから半年以上、西サハラ国連事務総長個人特使の席は空いたままで、西サハラ問題は国連報道室でも無視されています、、
 そして、国連事務総長がケーラー氏を首にしたのではないか?という疑問を強くする事が起こりました。

① アミナトウ・ハイダル女史がお元気なホルスト・ケーラー氏に会った!:
アミナトウ・ハイダル女史はモロッコ占領地・西サハラの首都・ラユーンで活動する平
和運動家だ。<西サハラの女ガンジー>と異名を取るように、彼女の闘争戦術は<ハンガーストライキ(断食スト)>。一番長いので、モロッコ占領地・西サハラへの帰還をモロッコ当局に阻止され、入国許可をハンストで勝ち取った<40日間断食>という記録がある。
 2019年9月25日にアミナトウ・ハイダル女史はスウェーデンの半官半民平和財団から、国連COP25のアイドルであるグレタ環境少女らと共に、第二のノーベル平和賞と言われる<ライト・ライブリフッド>平和賞を贈られた。そして、その財団が企画する講演のためにベルリンにきていた。
11月25日にはブゥンダァスタァーグ(ドイツ連邦議会)で、モロッコ占領地・西サハラでのモロッコ占領当局による西サハラ住民に対する迫害状況を語った。さらに、諸悪の根源はモロッコの占領にあると指摘し、独立に向けた西サハラ民族自決権行使の援助を、強く要請した。彼女は2人の子供を持つシングルマザーで、コデサCODESA(l’Association des défenseurs des droits de l’Homme des Sahraouis・西サハラ人の人権を守る会)の代表を務めている。
そして同日の11月25日、すこぶる元気な元ドイツ大統領・ホルスト・ケーラー・前国連事務総長個人特使に会ったのだ。アミナト・ハイダル女史は、「前国連事務総長西サハラ個人特使ホルスト・ケーラー大統領に表敬を許されたのは私にとって、このうえもない名誉なことだった」と、面会を有難がった。しかし、元個人特使は、西サハラの人々に希望を抱かせて、突然ポイっと投げ捨てた国連西サハラ班の共犯者だ。改めて、辞任か解任か、前代未聞の退陣事件に真相究明が求められる。このままだとモロッコの悪巧みにはめられて、西サハラは国連の枠組みから外されてしまう。どうして、西サハラの人々はもっと強く国連の怠慢と偏狭を糾弾しないのだろうか? 

元気なホルスト・ケーラー前国連事務総長個人特使と
サハラの女ガンジー・アミナトウ・ハイダル

➁ 西サハラ平和活動家にモロッコ厳罰:
 11月27日、MWN(モロッコ世界ニュース)が、「11月26日、西サハラ学生平和活動家・フセイン・バシール・ブラヒムに対してマラケシュ裁判所が、殺人の疑いで12年の禁固刑を科した」と、発表した。2016年1月23日にマラケシュ大学の文学部で起きた喧嘩で、オマル・カレクという学生が殺され5人が負傷した事件に対する判決だった。事件に関与した疑いで、2017年には16人の西サハラ人学生が証拠なしで逮捕され、3年から10年の実刑判決を受けていた。殺人の疑いをかけられたフセイン・バシール・ブラヒムの場合も、全く証拠が示されなかった。計17人の学生は、モロッコ大学内で西サハラ学生の正当な権利を求める活動をしていた。
 一方で、モロッコからの脱出を図るモロッコ人青年が激増している。モロッコ北部にあるスペインの飛地領・メリリャとセウタへは、二重の金網を乗り越える不法入国者の後が絶たない。金網の向こうは憧れのスペイン、ヨーロッパだから、ブラック・アフリカの人々と共に多数のモロッコ人が金網越えを試みている。ボートでジブラルタル海峡や地中海を渡り、ヨーロッパに潜り込む不法入国のモロッコ人も多い。が、ヨーロッパ人はモロッコ人の亡命をなかなか受け入れようとはしない。小さいボートでスペインのカナリヤ諸島に辿り着いたあるモロッコ人学生に対して、スペインは彼の亡命申請を拒否し、モロッコのラバトに向け国外追放した。スペインは他のヨーロッパ諸国と同様に、モロッコをアフリカの一国と見なし、基本的には亡命を拒否している。モロッコは西サハラ人を占領民扱いにしているが、そのモロッコ人はヨーロッパの元宗主国からブラックアフリカ人と同様の扱いをされている。しかも、モロッコがヨーロッパ諸国と、モロッコ不法移民を取り締まる厳しい協定を結んだのだから、モロッコ人の亡命はますます難しくなってきた。

➂COP25、12月2日~13日:
 国連報道室では連日のように、第25回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP25)の前宣伝が行われてきた。
 11月24日、全米8番目の大富豪で前ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏(77)が、2020 年米大統領選の民主党候補者争いに参戦することを表明した。元来は民主党員だが、ニューヨーク市長選前に共和党に転向して、共和党のニューヨーク市長を3期務めた。2014年1月、潘基文国連事務総長から、都市・気候変動担当の国連特使に任命された。11月25日の国連事務総長記者会見で米大統領候補ブルームバーグ氏とCOP25の繋がりを聞かれた国連事務総長報道官は、「ブルームバーグ氏は11月11日、書簡で国連事務総長に、国連気候特使の辞任を伝えた。以来、彼は特使ではない、、」と答えた。そして報道官は、この国(アメリカ)の大統領選挙戦に関して、「聞いて驚くような情報を提供し続ける、、」と、各国の政治には干渉しないという国連の方針を無視した発言をした。
 11月27日、感謝祭前の国連報道室で、「土曜日11月30日、事務総長はスペイン・マドリッドに到着し、COP25(国連気候変動枠組み条約第2回締約国会議)に参加する。月曜日12月2日のオープニングで演説し、世界の指導者たちにパリ合意で確認された目標を達成するように呼びかける、、事務総長は若い気候変動活動家たちと会合し、世界の指導者たちとの二者会談に臨む。ニューヨークには火曜日に戻る」と、発表した。そして、事務総長報道官は「感謝祭おめでとう!月曜日に会おうね!!」と発表し、ニコニコ立ち去った。

国連事務総長報道官は、5月23日に元ドイツ大統領ホルスト・ケーラー国連事務総長個人特使の辞任と、10月31日にミヌルソMINURSO(国連西サハラ人民投票監視団)の一年留任を短く知らせただけで、<西サハラ>という言葉を発しなくなりました。 12月で、西サハラ人民が、西サハラ難民となり西サハラ被占領民となってから、45年になります。
国連の責任です。

Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)をご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU

Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa]  英語版URL:   https://youtu.be/au5p6mxvheo

WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名敏之     2019年12月1日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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