2020年5月12日、参議院外務防衛委員会で鈴木宗雄衆議院議員が(日本維新の会)<モロッコとの二国間投資協定>に関した質問をし、モロッコが抱える西サハラ問題についての茂木外務大臣の見解を質しました。 大臣の返答は、これまで外務省から聞かされてきた見解と変りません。 が、審議映像を見た西サハラ難民の人々は、茂木外務大臣に親愛の情を寄せています。 西サハラ難民は、人を即座に見抜く超能力がある<砂漠の民>です。 <砂漠の民>西サハラ難民には茂木大臣に、何か感じるところがあったようです。
「西サハラをよろしく!」と、訴える西サハラ難民キャンプの人々
① 5月12日、参議院外務防衛委員会で西サハラ問題審議:
鈴木議員が、「アセアン、ヨルダン,UAE, コートジボワールは問題ない。しかし、モロッコは国際的に未解決の西サハラを抱えており、問題ありだ。大臣の西サハラに関するご見解を伺いたい」と、質した。茂木外務大臣は,[ SADR(サハラ・アラブ民主共和国)を日本は承認していない。西サハラ問題は国連の枠組みの中で、平和的に解決されるのが重要だ。1991年にできたMINURSOミヌルソ(国連西サハラ住民投票)も含めて、国連による仲介努力を支持する」と、これまでの外務省見解を繰り返した。
鈴木議員は、AUが西サハラを正式国家承認し、UNHCR (国連難民高等弁務官)やWFP(世界食料計画) が人道援助を続ける国際組織であることを強調して、「投資協定F-1にある領域に関して、西サハラは入らないのか?」と、質問した。中東アフリカ局長は、「西サハラは含まれない」と、答えた。さらに鈴木議員が、「国際法では、西サハラ領海はモロッコ領海ではないとされているが?]と、続けると、「投資協定F2の領水に関して、西サハラは含まれていない」と、局長は答えた。
➁マグレブとは?:
鈴木議員が、「リン鉱石に加えて、昔はタコ・マグロ漁船が活躍した日本の漁場基地だった。西サハラ領海は日本にとって身近なものだ。ぜひ、大臣のご所信をお願いする」と、西サハラ特産物を引き合いに出して促すと、茂木外務大臣は、「鈴木議員からのご指摘をよく踏まえて、これから対応していきたい。高橋中東アフリカ局長はアラビストなので、若干、マグレブ寄りになるのかもしれないが、明解な答弁をさせていただいている」と、
答弁をした。
日本では大臣の発言に疑問の声は上がらなかったが、西サハラ難民キャンプから反論があった。「<アラビストなので、マグレブ寄りになるのかも>という大臣の発言は、「アラビア語を喋るので、マグレブ(モロッコ?)よりになる、、>という意味なのか?言い換えると、<西サハラはアラビア語を喋らないので西サハラの味方はしない」という事になるのか?」と、聞いてきた。さらに西サハラ難民の外交官は、「西サハラ人はアラビア語を喋るアラブ人だ。マグレブというのは、北西アフリカ諸国6か国の総称で西サハラも含まている。茂木外務大臣はとても真摯な方とお見受けする。ぜひ、この地域の真実を知られた上で、この地域の平和と安定に貢献されることを願っている」と、語った。
ちなみに、マグレブ諸国とは、東からリビア、チュニジア、アルジェリア、モロッコ、西サハラ、モーリタニアと、6か国を擁した北西アフリカ地域を指す。アラビア語の<ガラバ(陽が沈んだ)>という原型に<マ(所)>という接頭詞がついて、<マグレブ(陽が沈む所)>という言葉になり、転じて<西>も意味する。反対語は<マシュリク(陽が昇る所)>で、<東>を意味する。1980年代後半にはEU(ヨーロッパ連合)を真似てマグレブ連合が結成され、リビアのカダフィは<ワーヒド・マグレビーヤ(マグレブは一つ)>を連呼し、6か国の国境を廃止するのだとパスポートを破くパフォーマンスを繰り広げた。が、アルジェリア情勢が不安定になり、アラブの嵐が吹き荒れカダフィーは惨殺されてリビアは崩壊し、、国連は西サハラ問題を放置したままで、<アイナ・マグレビーヤ(マグレブはどこに?)>となってしまった。
➂ポスト・コロナの国連予定:
国連は、6月末まで国連本部ビルの閉鎖を続け、アントニオ・グテーレス国連事務総長は国連職員にテレワークというホームステイの続行を命じた。入館するのはビルの清掃人や管理人や警備員など、小数の職員のみだそうだ。もったいない!人道主義を標榜するグテーレス国連事務総長は、国連ビルをCOVID19と戦うニューヨーク市に明け渡し、「医療関係者やホームレスの人々や囚人の人々に使って欲しい」と、提案できないのだろうか?国連ビルの所有者は、金を出している世界の人々だ。
国連は9月の総会をどう扱うのか?国連事務総長報道官によると、まだ決めていないそうだ。世界各国の首脳がパフォーマンスを競う<一般教書演説>は、国連最大の年中行事だが、今年はアメリカ大統領選挙がひっかかっている。COVID19で世界の鎖国を操作している国連は、どんな落としどころをつけるのだろうか?
国連事務総長報道官も6月末まで、ヨレヨレの普段着で自宅定例記者会見を続けていくようだ。どんな服でどんな所で記者会見をやろうと勝手だが、その同じ報道官が、「いつもヨレヨレのシャツを着て、トップ外交官が出入りする国連に相応しくない!」と、国連組織と事務総長に批判的なリー・マチュウ記者を2年前に追い出したのを思いだす。
5月11日の定例記者会見でこの国連事務総長報道官は、「今日は断食月の折り返し点だ」と前触れをして、数人の記者を相手にビデオ記者会見を始めた。飲み食いを禁じる辛い断食の真昼間に、報道官は飲み物をグイグイ開けるし、「腹が減った」とこぼす。5月7日には、「みんな美味しい昼食の予定があると思う、、バ~イ」と、記者会見を早々に終えた。記者の中にはイスラム教徒もいるし、世界のイスラム教徒に対して失礼だ。他宗教を敬うようにと、国連は唱えてきたではないですか?、、
世界の庶民にとって、「金を出して口は出すな」と、国連ファーストを連呼するグテーレス国連事務総長は、アメリカファーストを叫ぶトランプ米大統領と同じです。
このところ、両者の照準はピッタリ同じで、アメリカ大統領選挙に当てられています。
一方、国連が唯一の頼りである西サハラ難民ですが、肝心のグテーレス国連事務総長の興味は日々刻々薄れていくようです。
西サハラ難民外交官は、日本の外交姿勢がモロッコよりだと分かっていても、茂木大臣の誠実さに信頼を寄せています。 ガリ西サハラ難民大統領は、「日本とモロッコが仲良しなのは結構だ。が、西サハラに対しても同等に扱って欲しい」と、訴えています。
*難民アスリート・サラーの最新ドキュメンタリーがYoutubeにアップしました。
https://youtu.be/jz7lFr2c_Jk スペイン語ですが、西サハラ難民キャンプが見られます。
*SJJA をテーマにした西サハラ難民キャンプ通信社の記事を紹介します。
https://spsrasd.info/news/en/articles/2020/04/17/25587.html
*「アリ 西サハラの難民と被占領民」の只今発売中です。
著者:平田伊都子、写真:川名生十、画像提供:李憲彦、川上リュウ、SPS、
造本:A5判横組みソフトカバー、4頁のカラー口絵、本文144頁
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、TEL:03-3814-3861
2020年2月3日 初版第一刷発行 定価 税抜き2,000円
*1月22日、「ニューズ・オプエド」で#1323<アフリカ最後の植民地>を放映しました。
YouTube オプエド平田伊都子 URL https://www.youtube.com/watch?v=citQy4EpU-I
Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)をご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名敏之 2020年5月18日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion9758:200518〕