2020年5月24日、西サハラ難民キャンプでも西サハラ・モロッコ占領地でも、断食月が明けて三日間のイード・アル・フィトル(明けの祭り)が始まりました。 晴着を用意できない難民たちは衣類をきれいに洗い、散髪をして身だしなみを整え祭りを迎えます。
クリクリ坊主の子供たちはテントからテントへ、お菓子を貰いにまわります。 が、今年の<明けの祭り>は緊急事態宣言が出されていて、子供たちの当てが外れたようです。
当てが外れたと言えば、毎年子どもたちが楽しみにしている、ヨーロッパ各地NGO招待の<一か月の夏休み>も、中止になってしまいました。
① ハトリ・ファラジ・ブジャマ・西サハラ人記者に20年の禁固刑:
2020年5月18日、スペイン・マドリッドの西サハラ記者・作家協会は、「モロッコ占領当局の下級簡易裁判所 がハトリ・ファラジ・ブジャマ西サハラ人記者に、20年の禁固刑という重刑を科した」と、強く抗議した。協会は、「この法外な重刑は占領下にある西サハラ人民を黙らせるための、見せしめだ」と、非難した。モロッコ占領当局の下級簡易裁判所による罪状は、「彼が、西サハラ独立と西サハラ人民の民族自決権という、政治的立場を変えないからだ」と、している。モロッコ占領地・西サハラでは言論の自由も思想の自由もない
ファラジ・ブジャマ記者は、モロッコ占領地・西サハラで迫害される西サハラ住民の状況を、インターネットなどを使って流し続けてきた。.
協会によると、ハトリはモロッコ占領当局の拷問による転向を拒否し続けたそうだ。
協会は国際人権組織に対して、ハトリ・ファラジ・ブジャマ西サハラ記者と、モロッコ刑務所に収監されている全ての西サハラ政治囚との釈放を、早急に求める行動を取るよう訴えた。
「モロッコに捕まるな!捕まったらお終いだ、、」(アリの教訓)
➁ モロッコ占領地・西サハラの報道カメラマン逮捕:
5月21日、アイルランド・ダブリンのNGO<人権擁護最前線>が、イブラヒム・ムリクリ・西サハラ写真記者の逮捕拘束状況を明かした。それによると、5月15日にムリクリはモロッコ占領地・西サハラの首都・ラユーンで、薬局に行く途中、数人のモロッコ占領警察の私服に囲まれ、暴行され、逮捕された。翌日、弁護士の接見も許されず、2時間半にわたる拷問で転向を迫られた。その翌日5月17日、有罪の判決が言い渡された。判決理由は、「ムリクリが公務員(モロッコ占領警官)侮辱と投石を自白したからだ」としている。
ムリクリは自白などしていないと主張している。ムリクリは2019年1月に逮捕され2か月の禁固刑を科された。2019年7月にも逮捕され4カ月の禁固刑を食らった。いずれの場合も、<公務員への侮辱と投石>が罪状とされている。ムリクリは、2013年にモロッコ占領地・西サハラで創設されたNGO<人権擁護の報道財団ヌスバッタ>に属し、被占領民への迫害状況を記録する写真家として活動している。ムリクリは300ユーロ(約35,100円)の保釈金を支払って釈放されたが、モロッコ占領当局の審理 はまだ続くとか、、モロッコは被占領民西サハラ人を逮捕しては保釈金を取るという、新商売に精を出すようになった。
ちなみに、ムリクリの拘留時期はイスラム教徒が大事にするライラ・アル・カドル(啓示の夜)に当たる。この夜、イスラム教祖ムハンマドに最初の啓示が下ったとされている。
イスラム教徒はこの夜を<みいつの夜>と呼び、神への祈りと嘆願と悔悛に最適だとしている。モロッコ人は敬虔なイスラム教徒と聞かされているが?、、
➂ 西サハラ政治囚にはイード・アル・フィトル(明けの祭り)の恩赦もない:
2020年5月24日、イスラム教のメッカがあるサウジアラビアで、イード・アル・フィトル(明けの祭り)が始まった。三日月を観測していたアラブ首長国連邦、イラク、カタール、ヨルダン、モロッコ。の各国でも同じ日にイード休暇に入った。しかし、大部分のイスラム教国ではコロナウイルス感染拡大を防ぐため、5月23日から27日まで終日24時間のロックダウンをしていて、例年のような賑わいはない。それでも各国の支配者たちは寛大さを臣民に見せつけるため、例年どおり恩赦を行っている。
モロッコ国王陛下も同じで祭りの前日5月23日、モロッコ法務省に2020年イード・アル・フィトル(明けの祭り)の国王恩赦を発表させた。483人の受刑者や罰金刑を科せられている人々が、恩赦にあずかるそうだ。無罪放免もいれば釈放されても罰金を払わなければならない人もいる。釈放ではなく刑期を軽減するだけという恩赦もある。これまでも祭りや記念日に国王恩赦を与えてきたが、西サハラ政治囚が国王の恩恵にあずかることはなかったし、今回もない。
モロッコ占領地・西サハラで創設された西サハラ人のNGO団体<人権擁護の報道財団ヌスバッタ>などが逮捕された西サハラ記者の保釈金などを支援しているようです。 しかし、その財源が西サハラ人民の血で賄われていて、その尊い金がモロッコ占領当局にもっていかれるという、不条理なシステムも明らかになってきました。
この不条理を阻止できるのは、モロッコ占領地・西サハラに展開しているPKOミヌルソ(国連西サハラ人民投票監視団)です。 どうして、国連は動かないのでしょうね?
*難民アスリート・サラーの最新ドキュメンタリーがYoutubeにアップしました。
https://youtu.be/jz7lFr2c_Jk スペイン語ですが、西サハラ難民キャンプが見られます。
*SJJA をテーマにした西サハラ難民キャンプ通信社の記事を紹介します。
https://spsrasd.info/news/en/articles/2020/04/17/25587.html
*「アリ 西サハラの難民と被占領民」の只今発売中です。
著者:平田伊都子、写真:川名生十、画像提供:李憲彦、川上リュウ、SPS、
造本:A5判横組みソフトカバー、4頁のカラー口絵、本文144頁
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、TEL:03-3814-3861
2020年2月3日 初版第一刷発行 定価 税抜き2,000円
*1月22日、「ニューズ・オプエド」で#1323<アフリカ最後の植民地>を放映しました。
YouTube オプエド平田伊都子 URL https://www.youtube.com/watch?v=citQy4EpU-I
Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)をご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名敏之 2020年5月25日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion9780:200525〕