SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】405 バイデンに過大期待する西サハラ難民政府

 2021年1月20日のバイデン・アメリカ大統領就任式が近づいてきました。 ところがアメリカでは1月6日、大統領と副大統領正式指名を討議している上院下院両議会に、トランプ派が、窓を壊して簡単に乱入しました。 アメリカは、窓ガラスまでもろいようです。
 西サハラ難民政府は、バイデン氏が新大統領に就任したら、トランプ氏が大統領末期に電話による<モロッコの西サハラ領有権>の承認を、撤廃してくれるものだと信じているようです? バイデン新政権には早急に処理しなければならない問題が、山積です。
 そんなバイデン政権の視線を、西サハラ問題に向けさせるには、相当の努力が必要です。
 一方、モロッコ王室はモロッコ国王とオバマ元大統領のツ―ショットを、トランプの写真とすげ替え、いち早く外交攻勢を開始しました。 待っても海路の日和などきません。

① 西サハラ難民政府南アフリカ大使は?:
 2021年1月1日に元南アフリカ駐キューバ大使でファッチェ・ジュスティス・ピーツォANC(アフリカ民族会議)事務所長が、ジョー・バイデン氏に送った書簡を、モハンマド・ベイサット西サハラ難民政府駐南アフリカ大使が1月5日に公開した。書簡は、「西サハラ人民の独立国家なくして、アフリカの開放はない。平和を愛する西サハラ人民は、モロッコの植民地支配から解放されなければならない」と、述べている。さらに書簡は、「我々は、西サハラ人民の正当な権利と自由と尊厳を回復するため、何をすべきかを国際社会に問いかけている。アフリカ大陸最後の植民地を開放することこそ、最高に高潔な任務だ。偉大なアメリカ国民が大いなる期待をかけて選んだあなたこそ、過去の歴史が成し遂げられなかった事を改革できるものと信じている」と、言及している。
 モハンマド・ベイサット西サハラ難民政府駐南アフリカ大使は、2011年5月に初来日し、
3・11日東日本大震災の被害が生生しく残る石巻を訪れ、避難所の避難民の方々を見舞い、
難民同士の苦労を語り合った。方や天災で方や人災、その原因は違っても、安寧を求める人の心は変わらない。

② 西サハラ難民政府ワシントン代表?は:
 2021年1月6日、ムロウド西サハラ難民政府ワシントン代表がアメリカの研究者でロナルド・リーガン元大統領特別顧問ドウグ・バンドゥ氏がアメリカのメデイアに書いた記事を、公表した。バンドゥ氏は、「正にバイデン政権がワシントンに帰ってくる間際に、モロッコの西サハラ領有権を承認するというトランプ氏の発言は、暴虐そのものだ。しかし、トランプ発言ごときで、国際法に基づく西サハラの大義は揺るがない。世界で、モロッコの西サハラに対する支配権を認めている国などない。それどころか、AUや多くの国が西サハラを国家承認している」と、明言している。さらにバンドゥ氏は、「誰も、ポンピオやトランプの代理人たちが原則に則った国際的指導者だとは見ていない。バイデンの新政権をもてすれば、これまでのワシントン政策と精神に戻ることは、わけのない話だ」と、言及した。
 ムロウド・ワシントン代表がアジア担当大臣の頃に2度来日し、日本に西サハラ連絡事務所を開くと張り切っていたが、あまりに家賃が高いので諦めた。そのうち、アジア担当省もなくなった。ムロウド・ワシントン代表から、故エドワード・ケネデイー民主党上院議員の事務所に西サハラの机を置かせてもらっていたという話を、何度も聞かされた。ムロウド代表は、根っからの民主党支持者だ。バイデン氏による民主党復活に、多大な期待を寄せている。

③ 肝心の大家アルジェリアは?:
 2020年12月29日、数週間にわたりドイツでコロナ治療を受けていたアブデルマジド・テッブーン・アルジェリア大統領が、やっと帰国した。アルジェリアの首都アルジェから2,000㎞離れたテインドゥフに拠点を置く西サハラ難民キャンプから、バシール大統領特別顧問やサレク外務大臣を始め、幹部がアルジェリア大統領の全快見舞いに?駆け付けた。アルジェリア大統領の症状は明らかにされていない。アルジェリア外交のスキをついて、モロッコとアメリカ国務省は、アメリカ・モロッコ・イスラエルによるQPQ(交換取引)を仕掛けたデビッド・シェンケル中東担当者をアルジェに送り込んだ。
 2021年1月7日、シェンケル氏はサブリ・ブカドム・アルジェリア外務大臣やアルジェリア外務省高官にはっきり、<モロッコの西サハラ領有権>をトランプ氏が容認したことを伝えた。一方、
 サブリ・アルジェリア外務大臣はシェンケル氏との会談で、「西サハラを含むマリやリビアの状況は、当該地域と中東全域の平和と安定を左右することは、国際社会のみならずアメリカ政府も深く認識していると思う。一日も早く、当該者が納得のいく解決策を国連の指導の下で出さなければならない」と、遠回しにアルジェリアの立場を述べた。サブリ外務大臣は前職が国連大使で、巧妙な外交手腕を発揮し西サハラ問題と取り組んでいた。
 デビッド・シェンケル氏は1968年にアメリカでユダヤ人の両親から生まれた、トランプ氏の娘婿クシュナー氏と同様に生粋のユダヤ教徒だ。2018年4月9日、アメリカ国務省中東担当者に任命された。彼は、アルジェリア、バハレーン、エジプト、イラン、イラク、イスラエル、ヨルダン、クウェート、レバノン、リビア、モロッコ、オマーン、カタール、サウジアラビア、チュニジア、UAE,、イエメンなどと繋がりがあり、子ブッシュ政権ではドナルド・ラムズフェルド国防長官の下でイラク戦争に関わった戦犯だ。バイオテック企業ギリアド・サイエンシズの会長を務めていた頃、インフルエンザ特効薬タミフルで巨額の富を築いた。著書に、<サダムとダンスをーヨルダン・イラク関係の政略的タンゴ>と<パレスチナの、民主主義と政策―立法評議会の評価>の2冊がある。
 2018年4月9日には、国家安全保障問題担当大統領補佐官にジョン・ボルトン氏も指名された。が、ボルトン氏はクシュナー氏に嫌われて2019年9月10日、首にされた。

アルジェリアを訪問したダビド・シェンケル・アメリカ国務省中東担当

 1月10日、
 今や西サハラの敵は、モロッコ本体だけではなくアメリカとイスラエルという強国です。 それにフランスという後ろ盾がいます。

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 「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861

同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。

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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU

Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa]  英語版URL:   https://youtu.be/au5p6mxvheo

WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十     2021年1月10日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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