モロッコ占領地・西サハラの首都ラユーンにある地下通信<エキプ・メデイア>から「障害のある西サハラの若者が誘拐され、拷問され、獄に繋がれた」と、連絡がきました。 不法にモロッコ監獄で長期収監されている西サハラの若者は、百人以上いるそうです。 彼らと連絡を取る方策を考えていたところへ、あらたな犠牲者情報が入ってきました。 あわせてお報せします。
① 占領下の地下通信<エキプ・メデイア>が伝える誘拐拷問収監:
2021年2月3日、<エキプ・メデイア>のマラヤ・モハンマドから、緊急メールが入ってきた。マラヤは、「2020年11月14日、モロッコ占領地・西サハラの首都ラユーンの特別警察がアハマド・ガルガルの寝こみを襲い、脳障害がある子だからと庇う母を蹴飛ばし、強制連行した。モロッコの停戦協定破棄に反対するデモに参加したという嫌疑で、アハマドは4日にわたり<暗黒監獄>で自白を迫る拷問に晒された。母が面会した時のアハマドは意識不明で、まともな服も着せてもらえず、凍える拘置所の隅に放置されていた。母は衣類を持参して、何度も面会を申し出たが、会えたのはただの一度だけ、、2020年12月9日に、モロッコ簡易軍事裁判でアハマドは有罪判決を受け、西サハラ被占領民の手が届かないモロッコ本国タンタンにある刑務所に移送されてしまった」と語り、ニュースの拡散を依頼した。ミヤンマーや中国のウィグルと同様、モロッコ占領地・西サハラでは、西サハラ被占領民のネット使用が禁止されている。思い余った母が、<エキプ・メデイア>に駆け込み、アハマドの所在が明らかになった。
今年で20才になるアハマドは、先天的に脳障害を患っていたわけではない。利発で早熟だったアハマド少年は、13才の時に自由を求める平和デモに参加し、モロッコ特別警察に逮捕され暗黒警察に収監された。子供といえどもモロッコ占領特別警察は拷問の手を緩めず、頭を強打されたアハマドは、脳障害を引き起こしてしまった。
② 2021年、モハメド・サレムに起こったこと:
2021年2月6日、モロッコ占領地の人権団体がアルジェリアの西サハラ難民キャンプ
にあるSPS(サハラ通信社)に、おぞましいニュースを送ってきた。占領都市ラユーンに
ある西サハラ人権団体は、「2021年2月5日、占領都市ラユーンの病院で、20日以上行方
不明になっていた若い西サハラ人の死体が見つかった。死後22日経っており、通称マハデ
イー病院の冷凍装置のない死体置き場で腐乱していた」と、伝えている。
西サハラ難民政府・占領地担当大臣モハメド・エルワリ・アケイクは、APS(アルジェリ
ア通信社)に、「西サハラ占領地の若者、モハメド・サレムの虐殺と死体遺棄は、いま初めて
起こったことではなく、これまでも度々あったし、モロッコ占領が続く限り頻繁に再発す
る。彼の家族が、彼の消息を占領地の健康センターやあらゆる占領当局の機関に尋ねてい
たにも拘わらず、モロッコ占領当局が彼の遺体を長期にわたって放置していたことは、許
しがたい非人道的行為だ」と、語った。そして、大臣は、「モロッコ占領当局が彼を惨殺し、
その犯罪を隠蔽しようとしていたのは、明らかだ」と、モロッコ占領当局の惨い行為を強
く非難した。西サハラ難民政府は、西サハラ被領民を守ろうとしないMINURSO(国連西
サハラ人民投票監視団)の怠慢さにも言及した。
大臣の言うように、占領地西サハラでは青少年に対する虐待と虐殺が、モロッコ占領当
局によって頻繁に行われている。2011年に筆者は西サハラ解放区のティファリティ―で、
「サッカー見物に行った弟(24才)が行方不明になり、ラユーン・マハデイー病院の冷蔵
庫に放置されているのが分かった。もう半年以上になるが、占領当局は遺体を家族に返し
てくれない」と、涙ながらに訴える姉に会った。その翌年2012年、西サハラ難民キャンプ
で、殺された青年の別の姉にも会った。彼女は、「弟の遺体は病院から集団墓地に埋められ
てしまった。私たちは掘り返して弟を取り戻すことができない」と、激しくモロッコ占領
当局を非難していた。
モロッコ占領地病院で、死後22日経って腐乱死体で発見された
モハメド・サレム
③ ハンガリー首都ブタペストのWFDY(世界民主青年連盟)が虐殺非難声明:
2021年2月8日、ハンガリーの首都ブタベストに拠点を置く、WFDY(世界民主若者
連盟)が、西サハラ占領首都ラユーン起こったモロッコ占領当局による惨殺を、強く糾弾する声明を出した。声明は、「我々世界の若者は、殉教者モハメド・サレムのご遺族や友人たちと、悲しみを共有したい。同時にこれまでモロッコ占領当局の犠牲になられた多くの
西サハラ人に、深い哀悼の念を捧げる。WFDY(世界民主青年連盟)は、モロッコの占領政策に加担し、モロッコ占領当局の犯罪を助長するあらゆる行為と団体を非難する。西サハラ人民の民族自決権行使と人民投票はUN(国連)とAU(アフリカ連合)が保障している。その正当な行為を否定し、妨害するモロッコは国際法に違反する犯罪者だ」と、弾劾した。
2020年12月25日にモロッコ占領都市ラユーンで、行方不明になっている子供たちの15家族が、<誘拐された子供たちを釈放する会>を立ち上げている。子供たちの状況を知りたい家族会は、モロッコ占領当局に情報提供を求めた。要望書を受け取った占領当局の窓口は、行方不明者リストにそれをファイルした。が、そこ止まりで書類はモロッコ軍事当局や軍事裁判所などには回されていないようだ。家族会は、「外国も含めた様々な法的団体や組織にも訴えていく」と、固い決意を語った。15人の中には、2005年12月25日から行方不明になっている子供もいる。待てよ!2005年から行方不明ということは、単純計算をしても、既に20才を超えた立派な大人になっているんだ!ただし、生きていればの話だが、、
2017年の夏、アルジェリアの地中海沿岸にある港町で開かれた<西サハラ夏期大学>で、モハメド・エルワリ・アケイク西サハラ難民政府・占領地担当大臣と西サハラ占領地から来た若者たちの一行に会いました。 その時、西サハラ占領地の若者たちは、行方不明になっている家族の写真を掲げて、その愛する人々がいかにひどい拷問を受けたか、受けているかを、語ってくれました。 「私たちも西サハラに帰郷した時、運悪く逮捕されたら同じ運命になるのよ」と、あどけなさが残る女子高生が、ケロっと言いました。
「痛くない?」と筆者、「痛いけど、ガマンガマン」と女子高校生、、可愛らしくて涙が出そうになりました。
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2021年2月10日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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