SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】414 ICCがイスラエルの戦争犯罪捜査開始

 10年前の2011年3月11日(金)14時46分18.1秒、あなたは何処で何をしていましたか? 筆者は、アルジェリア大使館のロビーにいました。 突然、チリンチリンと風鈴の音がして、次の瞬間、ジャランジャラン、ギャラングワランと大音響、、天井の大シャンデリアが揺れだしました。 大使館で働くフィリピン女性が階段を転げ落ちてきて、筆者は彼女を抱えて、外に逃げました。 大シャンデリアは落下せず二人は無事でした。
 日本国民にとって大事な<東日本大震災10周年>にわざと重ねて、<京都コングレス国連犯罪防止刑事司法会議>が開かれています。 ICC(国際刑事裁判所)やICJ(国際司法裁判所)など、庶民には縁遠い言葉が飛び交っています。 東日本大震災も京都コングレスもICCもICJもオリンピックも、庶民感覚でその行方を追っかけていきましょう、、

① ICC(国際刑事裁判所)がイスラエルの戦争犯罪を正式に捜査:
 2021年3月3日、ICC (国際刑事裁判所)のファト・ベンスダ主任検察官が、パレスチナ領域で頻発した不法な戦争犯罪に対して、正式捜査を開始すると発表した。ベンスダ主任検察官は、「2014年7月8日のイスラエル軍によるガザ侵攻で始まった、イスラエル占領地西岸と東エルサレムとガザでのイスラエル戦争犯罪捜査を開始する」と決意を語った。
 今から7年前、東日本大震災から3年後、ガザ地区だけで2158人の民間人大虐殺は世界が見守る中で、49日間にわたって行われた。国連は黙認し、オバマ米政権はイスラエルを容認した。1982年ベイルートのサブラ・シャテイ―ラ・パレスチナ難民キャンプをイスラエル軍が封鎖し、レバノン民兵が3日間で数百人以上(死者3000人の説もある )を殺しまくった事件と同じだ。イスラエル軍のパレスチナ民族浄化は、ユダヤ人がイスラエル国家をパレスチナの地に創った1948年から日常化している。
 2021年2月5日、オランダのハーグにあるICCは、当該地(イスラエル占領地西岸と東エルサレムとガザ)の戦争犯罪に対する捜査開始を決定した。パレスチナはICCの行動開始を歓迎し、イスラエルはベンスダ主任検察官の提案に反対した。バイデン米政権は決定を不服とし、イスラエル戦争犯罪を裁く潮流に反対した。
 ファト・ベンスダIOC主任検察官は1961年1月31日にアフリカのガンビアに生まれた女性弁護士で、1998年から2000年までガンビア法務大臣を務めていた。2012年6月15日からICC(国際刑事裁判所)主任検察官に就任している。願わくば、1948年以降のイスラエル戦争犯罪をくまなく捜査して欲しい。ただ、彼女の任期は2021年6月15日で切れるので、その後任対策もお願いします、、

ファト・ベンスダICC(国際刑事裁判所)主任検察官

 2003年3月11日に設立されたICC(国際刑事裁判所が逮捕状を出すと、ICPO(国際刑事警察機構)が国際手配に着手する。国際関心事である重大な犯罪について責任ある個人を訴追・処罰するとされていて、2009年3月4日バシール、2011年6月27日カダフィ―などがやり玉に挙がった。2010年には、戦争犯罪に加え侵略犯罪も加えられた。イラク戦争犯罪人のブッシュは何時逮捕されるのだろうか?
 日本庶民の関心が高いカルロス・ゴーン逃亡事件は、ICC(国際刑事裁判所)の管轄だ。

② ICJ(国際司法裁判所)が勧告した西サハラ領有権問題:
 ICJ(国際司法裁判所)は、 常設の国際司法機関でオランダのハーグに本部を置き、1945年に活動開始した。当事者となりうるのは国家のみで、個人や法人は訴訟資格を持たない。国際司法裁判所規程は、国際連合憲章と不可分で一体だ。日本は、1954年から当事国となり、第22代ICJ裁判長に小和田恆氏が就任している。 国際司法裁判所は、当事者たる国家により付託された国家間の紛争について裁判を行って判決・命令をする権限を持つ。一審制で上訴はできない。ICJの勧告的意見が法的な拘束力を有して国家を拘束するわけではないが、国際的に権威のあるものとして受け止められる。これが履行されて慣習国際法の要件を満たした場合には、慣習国際法としての法的拘束力を有する。また、国際連合および付属機関では行動の指針となる。
 まさに、このICJが、モロッコとモーリタニアが求めた西サハラ領有権を否定している。以下にICJ(国際司法裁判所)が出した原文の意訳を紹介する。
 「国際司法裁判所 西サハラに関する1975年10月16日の勧告(出典ICJ)
スペイン植民地時代、モロッコ大公に西サハラに住んでいたある部族が忠誠を誓ったということが法的な根拠になるという物証と情報がこの裁判所に提示された。同じように彼らは、モーリタニア国家も西サハラ領土と法的関係に基づくある種の権利を持っているとアピールをした。一方、裁判所は、提示された物証や情報は、西サハラ領土との間にモロッコ王国やモーリタニア国家の領有権を証明するものは全くない、という結論を下した。かくして裁判所は、国連総会の1514決議に影響を与えるような類の法的根拠を見いだせなかった。特に、この地域住民の意志は、彼ら自身が自由にありのままに表明することによって、彼らの民族自決権を行使できるというのが原則で、それを阻むことはできない」
 日本と中国が絡む<尖閣諸島問題>は、ICJの範疇にある。

③ 国連定例記者会見と西サハラ:
 2月1日にクーデターが勃発してから、国連定例記者会見はミャンマーで持ち切りだ。
そんな定例記者会見で、2月26日にパレスチナのアブデル・ハミード記者が、「西サハラのゲルゲラトでのモロッコによる停戦破棄事件は、その後どうなったか? ポリサリオ
 (西サハラ難民政府)側は、1991年の停戦協定は存在しないと言ってるが、、最新情報は?」と久しぶりに西サハラ紛争の動向を聞いた。ステファン国連事務総長報道官は、「ゲルゲラトで何らかの変化があったという報告はない」と、短く答えた。
 3月3日、インナー・シテイ―・プレスのリー記者が西サハラに関して、「最近の西サハラ関する総長報道官の報告書は、明らかにモロッコ寄りだ。西サハラ側が連日のようにゲルゲラトを含む砂の壁地雷防御壁を攻撃し成果を報告しているのに、総長報道官は当該地は平穏だと、モロッコの発表をそのまま、報告している。西サハラ紛争地に派遣されている国連PKOミヌルソMINURSO(国連西サハラ人民投票監視団)は本来の人民投票に手をつけず、国連PKOの任務でもある人民の保護もせず、モロッコが発表する<平穏>をそのまま報告書に上げている。記者が度々、ミヌルソMINURSO(国連西サハラ人民投票監視団)代表コリン・スチュワートのセクハラ問題を事務総長や事務総長報道官やメリサ・フレミング通信連絡係長などに問いただしたが、未だに返事がこない。MAP(モロッコ国営通信)は、エンハリ・ナウハル特派員を国連事務総長ビルのS0419室に送り込んでいる。さらに、ベンユーセフ・ブクラ・クイド・マを国連スタッフの一員にねじ込んでいる。この類のモロッコ式ロビー活動は、多々ある」と、記事を発表した。
 3月4日、アル・ジャジーラのベイス記者が、「あんたが、西サハラ事務総長個人特使指名問題に触れられるのを嫌がってるのは承知している。が、2年間も個人特使を指名しないのは、何故なんだ?事務総長がやりたくないのか?なり手がないのか?」と、質問した。ステファン報道官は、「国連名簿から探すのは、非常に難しい。全てが総長の手中にあるわけではない、、が頑張ってる」と、渋々、抽象的な生返事をした。リー記者が報告したように、フランス人報道官はモロッコの意向で動いているということが、明確になった。

 福島は、政府がおっしゃるように復興したのですか?  本当なら、その証に、3月25日にはぜひ、福島第一原発前から、<安心安全オリンピック>の聖火を出発させてください。

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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861

同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。

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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU

Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa]  英語版URL:   https://youtu.be/au5p6mxvheo

WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十     2021年3月10日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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