2021年3月21日、アフリカ中部の産油国コンゴ共和国で、大統領選挙の投票が行われました。 開票が締め切られて数時間後に、野党を率いる挑戦候補者のゲイ・ブリス・パルフェ・コレラ氏(61)は、コロナ治療のためフランスに搬送される飛行機の中で逝去しました。 投票前にゲイ・コレラ氏は、人工呼吸器のマスクを外して、「私は今、死と戦っている、、投票に行くんだぞ!」と支持者に語りかけるビデオを収録し、ネットで流しました。 結局、在任期間36年の現職サスヌゲソ氏(77)が連続4選を果たしそうです。 次の任期5年を加えると、通算40年の長期政権となります。
一方、兄弟国コンゴ民主共和国の大統領フェリックス・チセケディが、2021年度のAUアフリカ連合総会議長に選出されました。
就任式に臨む、左にムーサ・ファキAU(アフリカ連合)委員会委員長、
右にフェリックス・チセケディ新AU議長
① 昔、コンゴはアフリカ大陸で一番大きい国だった:
1884年から1885年の<ベルリン会議>でヨーロッパ列強がアフリカの取り分を決める
前のコンゴは、アフリカ大陸で一番大きかった。この植民地分割会議でコンゴは、フランス領土、ベギー領土、ポルトガル領土と、3分割された。第2次世界大戦後、1960年にフランス植民地はコンゴ共和国、1975年にポルトガル植民地はアンゴラと、独立を遂げた。
2021年AU(アフリカ連合)議長国となったコンゴ民主共和国は、1960年6月30日にベ
ルギーから独立した。カサブブが第一代大統領、ルムンバが第一代首相に就任したが、独立から1週間も経ずにベルギー軍が介入し、「コンゴ動乱」を始めた。元郵便局員のルムンバは、コンゴ国民の団結とアフリカ独立運動の象徴だった。しかし、独立後もコンゴの鉱物資源に未練があるベルギーはベルギー軍を残留させ、ベルギー軍撤退を求めて国交を断絶したルムンバを逮捕した。1961年1月17日、ルムンバと2人の同志はキサンガニ空港で飛行機から引きずり出されて、深夜にベルギー人将校によって軽機関銃で処刑された。遺体は一度埋められた後、翌1月18日に掘り起こされ、21日に硫酸で溶かされて数本の歯と頭蓋骨の欠片だけが残された。
コンゴ民主共和国の首都キンシャサは、1974年10月30日の<キンシャサの奇跡>と呼ばれる世界ヘビー級王者奪還戦で有名になった。ベトナム戦争への徴兵を拒否してWBA・WBC統一ヘビー級王座を剥奪されたモハメド・アリがジョージ・フォアマンに挑戦した。アリへの大声援(スワヒリ語で “Ali bomaye!” )がコンゴを包んだという、、
② チセナディ新AU(アフリカ連合)総会議長とAUPSC決議:
2021年3月6日、フェリックス・チセケディ(57才)・コンゴ民主共和国大統領(2019年1月25日~)がAUアフリカ連合の年次総会で、2021年度の総会議長に選出された。
第14回特別首脳会議を受けて、3月9日には国連安保理に匹敵するAUPSC(アフリカ連合平和安全保障理事会)が開かれた。第984回AUPSC開会式では、3月議長国ケニヤの大統領ユール・ケニヤッタ、2021年AU議長国コンゴ民主共和国の大統領フェリックス・チセケディ、サハラウィ民主共和国大統領ブラヒム・ガリ、AU委員会委員長のムーサ・ファキ・マハマト、そして、AU西サハラ特使ジャッキム・アルベルト・シサノ、AUPSC委員スマイル・セルゲイ大使、さらに国連事務総長代理のハンナ・テッテの諸氏が所信を表明した。
3月18日にAUPSC(アフリカ連合安全保障理事会)の決議声明が公表された。要訳すると、
「西サハラ情勢に関して、既に国連が、2015年9月26日の首脳会議で早期の解決を国連安保理に急がせている。さらに国連は、 脱植民地化と西サハラ住民の人権擁護も求めている、、そして、国連憲章の8項に基づき、当該地域と国際社会の平和と安全保障のため、国連とAUアフリカ連合が連携して問題解決に当たることを促している。特に西サハラ問題に関しては、国連が指導する和平解決策を、AUアフリカ連合が全面協力することよう、強く要請している。
―総会決議693と第14回特別首脳会議の決議に基づき、-
1-モロッコ王国と西サハラ共和国が停戦合意を破り軍事衝突が再燃したことを懸念する。
2-西サハラ人民の民族自決権を目指す国連和平交渉が中断していることを憂慮している。
3-武力ではなく平和的紛争解決のため、AUメンバー国が一致団結して知力を発揮させる。
4-両当事者の対話を促し、AUPSCは当該地を訪れ、ラユーンのAU事務所を再開させる。
5-空席の国連事務総長個人特使を早急に任命し、西サハラ領土の法的見解を再確認する。
6-AU西サハラ特使は即刻に行動を開始し、UN 指導で持続性のある解決策を見つける
7-AU委員会はこの決議を両当事者と国連事務総長と国連安保理など関係者に転送する。
8-事態を重く受け止めて、速やかに行動に移すことを決議する」
③ ANPSC(アフリカ連合平和安保理事会)決議にモロッコ外務大臣は?:
3月22日、CORCAS(王立サハラ問題諮問評議会)は、「AUPSCが出した決議声明に、モロッコは関心も興味もない」と、無関心を装った。そして、3月19日のナセル・ブリタ外務大臣発言を掲載した。ナセル外務大臣は、「決議声明はモロッコにとって、<取るに足らない空事>だ。こんな戯言に煩わされることなく、モロッコはモロッコの決めたモロッコ・サハラ外交作戦を続けていく、、このAUPSC会合は異例ずくめで、その目的や動機は問題だらけだ。これまでの論争で、モロッコ・サハラを軸にした国連のスタンスを、モロッコは評価している。つまり、国連は、西サハラ問題をモロッコ・サハラ問題として認識し始めたのだ、、三分の二のアフリカ諸国が、ポリサリオ分離主義者たちがでっち上げた傀儡国家を認めていない。大部分のアフリカ諸国は、サハラのモロッコ化を支持している」と、強気の発言を繰り返した。
しかし、ワシントンに拠点を置くMWN(モロッコ世界ニュース)は慌てている。
3月18日のMWN(モロッコ世界ニュース)の論評は、「アルジェリアは、西サハラに関してUNPSC決議を外交切り札に利用しょうとしている。西サハラ天然資源の生産活動を盗掘としたり、ラユーンのAU事務所の再開を迫ったり、アルジェリアはまたしてもモロッコの神経を逆なでした」と、反論した。MWN(モロッコ世界ニュース)は、かねてから主張してきた<アルジェリアとの国交断絶>を声高に叫んだ。
3月19日のMWN(モロッコ世界ニュース)が、「首都ワシントンでは、スペインとアルジェリアを含む数か国が、西サハラに関するモロッコ領有権を容認した前アメリカ大統領トランプの発言を撤回させようとするロビー活動を活発化している」と、伝えました。
MWN(モロッコ世界ニュース)はモロッコ王国の御用報道機関です。 西サハラに敵対するモロッコ・メデイアからの嬉しいお報せに、西サハラ・メデイアの反応は?まだありません、、 いずれにしろ、トランプ発言の撤回が待たれます!
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2021年3月25日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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