SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】428 西サハラに強烈追風!アメリカがモロッコ拒否!!

 6月10日、プライス米国務省報道官がやっと、モロッコの西サハラ領有権を勝手に承認したトランプ前米大統領発言を、否定しました。 2020年12月10日にトランプ氏がモロッコにイスラエルとの国交正常化を呑ませることと交換で、「モロッコには西サハラの領有権がある」との発言をしました。 それから半年、アメリカ上下両院の超党派議員による弛まない働きかけがようやく実ったようです。 それは、ムロード西サハラ難民政府アメリカ・ワシントン代表の地道な努力が、あったからです。 ムロードはアジア担当大臣の時に、2度来日し、各地で講演をしました。 残念ながら現在、アジア担当省は。開店休業中です。

① スペインがモロッコの強要を拒絶:
 令和3年6月2日にガリ西サハラ難民大統領がスペイン療養からアルジェリアに戻った後、スペインの各都市で、西サハラを応援しスペイン政府に感謝するデモがたくさん起こった。主催者は、スペインに住む西サハラ人や西サハラを支援するスペイン人たちだ。コロラドで訓練中のバシール短距離アスリートも参加した。そのうえでデモの人々は、旧西サハラ宗主国でもあるスペインに対して、1975年に国連や西サハラに内緒で西サハラをモロッコとモーリタニアに秘密分譲し、コソコソと退散した法的道義的責任を求めた。このスペインの西サハラ秘密分譲を、<西サハラはスペインから貰った>と、モロッコは<モロッコ領有権の根拠>にしている。

デモに参加した西サハラ青年、見上げる彼方に故郷西サハラが、、

 6月9日、スペイン外務大臣アランチャ・ゴンザレ・ラヤは改めて、モロッコによる西サハラ領有権承認の執拗な要請を断り、「西サハラに関してスペインは、国連安保理決議を尊重し国連主導の交渉で合法的に解決していく方針だ」と、明言した。そして、モロッコ北部にあるスペインの飛び地領土セウタに、未成年者を含む約8,000人をわざと官製越境させたモロッコを、厳しく非難した。
 モロッコはスペイン領セウタ<Ceuta>のことをセブタ<Sebta>と呼んでいる。
このようにモロッコは国際規約を無視して、西サハラのことも<モロッコサハラ>とか<南サハラ>とか、自分に都合のよい名称をつけ、そのモロッコ式呼称を強制してきた。国際的常識や歴史認識に欠けるナイーヴなトランプ前米大統領は、モロッコの言い分を鵜呑みにし西サハラを<モロッコサハラ>と呼んだり、西サハラまでモロッコの赤で塗りつぶした国旗を採用したりして、モロッコ国王陛下を喜ばせ、駐米モロッコ大使の妹王女から勲章を授かったのだ。

② EU議会がモロッコ非難決議:
 6月10日のヨーロッパ議会では、モロッコが不法移民を政治的駆け引きに使ったことに対して懲戒討議がなされた。討議内容は、4月21日、コロナに感染した重症のガリ西サハラ難民大統領をスペイン政府がスペインでの治療を認めたことにモロッコが猛反発し、スペイン飛び地領土セウタに約8,000人の不法移民を越境させたことだった。ヨーロッパ議会は、「モロッコが国境を無視し、数千人の不法移民、とりわけ同伴者のいない未成年者を多数、故意に通過させ、EUに加盟する国(スペインを名指しせず)を政治的に脅迫した」と、非難した。「特に、子供や同伴者のいない未成年者や家族を動員し大量に越境させ、彼らの命を危険にさらした、、ナセル・ブリタ・モロッコ外務大臣が自ら、子供も含む多数を不法越境させたのはスペインがポリサリオ戦線リーダーを受け入れたことに対する報復だと明言している」と、検証分析し、モロッコによるコロナ療養中のガリ西サハラ難民大統領拉致未遂や不法移民約8,000人の官製越境に対して、賛成397反対85棄権196で、モロッコ非難決議が可決された。
 一方、EU議会の非難決議を受けたモロッコは、同日6月10日の夕方、ハビブ・エルマリキ下院議長の司会で緊急会議を開いた。6月11日、CORCAS (王立サハラ問題諮問評議間)は、「セブタ(セウタのモロッコ呼称)に関して、会議に出席した各党党首や各派代表は、占領されたこの町(セウタ?)はモロッコに領有権があることを再確認し、不法越境ではないとした。そのうえで、ヨーロッパ議会で数人の議員がモロッコとEUヨーロッパ連合の重要な友好に水を差すような草案を出したことは非常に残念だと、高官たちは遺憾の意を表明した」と、発表した。

③ 米国務省のモロッコ領有権拒否:
 6月7日から18日まで、モロッコ国王陛下モハンマドⅥ世は、アフリコム(アフリカ米軍)によるアフリカ・ライオンと仇名されるモロッコでの軍事演習で、モロッコ占領地・西サハラも演習予定地に設定していた。が、アメリカ国防省は、西サハラを外した。
 6月9日、プライス米国務省報道官は記者会見で、バイデン政権はトランプ前政権の西サハラや中東政策を継承しないと明言した。モロッコ系記者とプライスの応答を再現する。
 モロッコ系記者、「ワシントン現政権は、西サハラに関してのモロッコ領有権の承認を継承するのか?」と聞いた。プライス米国務省報道官は、「バイデン政権は、西サハラに関するトランプ前大統領の政策を継ぐつもりはない」と、答えた。同記者が、「バイデン政権はイスラエルとモロッコの国交正常を歓迎している。関連で成立したトランプのモロッコ領有権承認も歓迎することになるのでは?」との反論に、プライス米国務省報道官は、「トランプ発言は明らかに、国連枠組みで西サハラでの民族自決権に基づく人民投票で行おうとする国際的合意に違反している」と、語った。さらにプライス報道官は、「中東問題に関しても、前政権から引き継げるものは、ほんの僅かしかない」と、言及した。
 そして、トランプ氏が昨年12月に約束したモロッコ占領地ダハラでのアメリカ領事館開設に、アメリカ下院が待ったをかけた。スペインの日刊紙<ラ・ヴァンガルデイア>によると、アメリカ下院外交委員会が占領地に領事館を開設することに疑問を呈したことから下院が動いたのだという。さらに米下院は、トランプ氏がモロッコに約束していた米国製ドローンの売却に関しても、超近代兵器の類をモロッコに渡すわけにはいかないと、売却の凍結を求めた。モロッコには逆風が吹き荒れています。

 6月16日にはスイスのジュネーブで、プーチン・ロシア大統領とバイデン・アメリカ大統領が戦います。 しかし、西サハラ問題に関しては、両国とも仲良く同じ立場をとっています。
 マリア。ザハルヴァ・ロシア外務省報道官も、「ロシアはモロッコの西サハラに対する領有権を認めない。当該地紛争は国連憲章に基づき、国連総会と国連安保理に責任がある」
と、語りました。
 対立点ばかりで共通点を見いだせず苦労している両首脳に、見解を同じくする<西サハラ問題>をお勧めします。

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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861

同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。

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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU

Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa]  英語版URL:   https://youtu.be/au5p6mxvheo

WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十     2021年6月16日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion11020:210616〕