SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】433 オリンピック休戦中の戦闘

 2021年7月16日、アントニオ・グテーレス国連事務総長がオリンピック休戦を、ビデオで宣言しました。 オリンピック開催日の前7日とパラリンピック閉会日の後7日を加えた、計59日間は戦争を止めようという呼びかけです。 1994年のリレハンメル冬季大会から、この行事が受け継がれてきました。 「人々と国家は、オリンピック休戦を礎にして、持続する停戦と恒久の平和への道筋をつけることができる、、」と、訴えるのですが、、   
 この国連休戦が守られたオリンピックなんて、ありましたっけ?

① パレスチナ記者アブデル・ハミード VS 国連事務総長副報道官ファラハーン:
 7月16日の国連定例記者会見で、国連事務総長のビデオ・メッセージの報告があった後、パレスチナ人アブドル・ハミード記者が、「7月2日、マドリッドの共同記者会見で事務総長は、西サハラ特別特使に13の候補者を提案してきたと明かした。我々は、その最後の候補者がスタファン・デ・ミストラということを知っている。詳細を教えてくれないか?13人とは具体的に誰なのか?何人がモロッコに、何人がポリサリオ(西サハラ代表)に、拒否されたのか?どうやって、国連事務総長はこの泥沼から抜け出そうとしているのか?」と、問い質した。ファラハーン副報道官は、「(任命作業が)滞っていることは明らかで、事務総長自ら公の席で何度か言及してきた。我々は、任命作業の経過報告はしない。が、全ての当事者が受け入れることのできる候補者の選択に苦慮しているのは事実だ。それでも、その努力は続けている。実際のところ、今も候補者の名前は挙がってきている。我々もその名前を公表できる日が、速やかに来ることを願っているが、、私は、今こそ両当事者が自主的に歩み寄り、真摯に対面する時が来たと思う。そうすれば、必然的に我々(国連)は相応の代表を送り込むことができる。我々には、再稼働を可能にさせる何らかの力が必要だ」と、副報道官は答えた。そりゃないよ!国連さん!そもそも、そう言う国連が30年前に西サハラ戦争解決のために、<国連西サハラ人民投票>という梯子を掛けたのだ。国連は自ら掛けた梯子を外し、当事者に新たに梯子を用意しろと言う、、責任回避を図る国際官僚の言葉に、騙されないようにしましょう、、

② モロッコのオマル VS 西サハラのオマル:
 1991年以来、ず~~と続いてきた<西サハラ戦争の平和的解決作業>を、現状維持のままで放ったらかしにしたいのは、<西サハラ=モロッコ国王の私有地>と主張するモロッコだ。解決作業に取りかからず放置している国連も、戦争の加担者と言える。この30年間、モロッコはせっせとモロッコ占領地・西サハラの開発と天然資源の略奪を続け、占領地に数か国の領事館まで設けてきた。国連安保理は、アメリカの拒否権に守られるイスラエルと同様に、そのイスラエルと強力な絆を結んだモロッコはフランスに守られ、デッカイ面をしている。「朕の心は、パレスチナ人民に寄り添って、、」と宣うモロッコ国王の甘言に騙されてきたパレスチナ難民も、最近は西サハラ難民に寄り添うようになってきた。
 戦闘的なオマル・モロッコ国連大使は7月16日、「アルジェリアとポリサリオ戦線を名乗るモロッコの分離主義者が国連事務総長の候補者数人を拒否したから、元ドイツ大統領ケーラー国連西サハラ個人特使任の辞任後、後任の指名作業が捗らないのだ、、アルジェリアが主張するような戦争は、モロッコ・サハラ(西サハラ)で起きていない。モロッコ・サハラ(西サハラ)は安全安心で、住民はモロッコ国王統治の下で豊かになった生活を享受している。アルジェリアは嘘の情報を流している」と、西サハラ難民キャンプがあるアルジェリアにも喧嘩を売った。同時にオマル・モロッコ国連大使は、国連安保理メンバー国に、彼の主張を綴った報告書を配った。国連オリンピック休戦開始の日に、モロッコは戦争を挑発したのだ。
 7月18日、アルジェリアはオマル・モロッコ国連大使のアルジェリアに対する誹謗中傷に大反発し、モロッコの首都ラバトからアルジェリア大使を本国召還した。

モロッコの「地雷防御壁・砂の壁」に向けて攻撃を続ける西サハラ難民軍

③ 西サハラのオマル:
 7月16日、オマル・モロッコ国連大使の挑発に、すかさず、オマル・ポリサリオ西サハ
ラ国連代表は反論の記者声明を出した。筆者が、「モロッコに対抗して、国連安保理のメンバー国に反論書簡を送ったほうがいいのでは?」と、西サハラ外交官に質したら、「西サハラは国連総会のメンバー国ではないので、その権利はない」と、答えが返ってきた。西サハラはモロッコと同じ土俵に上がっていないのだ。西サハラは国連で、支援してくれる国や団体におすがりするしかないという、切ない立場にある。そのうえ、頼りにしていたベネズエラもトランプによって潰された。が、モロッコの心変わりに疑問を持つようになったパレスチナが、心強い報道支援をしてくれるようにもなった。
 オマル・西サハラ代表はオマル・モロッコ大使に、「モロッコは西サハラと交渉などしたくないから、国連事務総長個人特使の任命を妨害している。これまで、大部分の個人特使候補を拒否してきたのは、紛れもなくモロッコだ。国連内部で決まっていたイタリア人で国連外交官のスタファン・デ・ミストラ氏を蹴ったのも、モロッコだ。モロッコはこの空白状況をできるだけ伸ばして、その間に西サハラのモロッコ化を企もうとしている」と、記者声明で反発した。
 「国連西サハラ事務総長個人特使には、西サハラを視察した前国連事務総長・潘基文氏が適任なのでは?」と、西サハラ外交官たちに筆者が問い合わせたら、ニューヨークから 「彼はいい人だけど、モロッコが受け入れない」と、ワシントンから「国連の要職にあった人は難しい」と、ロンドンから「正直なところ、現事務総長は西サハラを訪問した前事務総長を受け入れないと確信する」と、いずれも否定的な答えが返ってきた。そこで筆者は、「ケーラー元ドイツ大統領が仮病で辞任した責任をカバーする意味でも、9月に引退するアンゲラ・メルケル・ドイツ首相にお願いするのはどうか?みんなに好かれるメルケルさんなら、モロッコも気に入ると思うよ?」と、再度、提案したら、「全く、メルケル女史はいいオプションだね!」と、ロンドンから好反応が返ってきた。「ただ、モロッコが何というか?とにかくモロッコは、国連事務総長個人特使などいない方がいいと思っているんだ。鬼のいぬまに西サハラの天然資源を取りまくろうというのがモロッコの基本方針だ」と、ロンドンの西サハラ外交官は他人事のように分析した。
 皆さん、本当に休戦する気があるのでしょうか? 

 2021年7月20日の朝、やまゆりが満開の津久井の山に、パトカーのけたたましい音が響き渡りました。この日、知的障害者施設「津久井やまゆり園」で、犠牲になられた19人の追悼式が行われました。5年前の7月26日午前3時ごろ、騒々しいサイレンの音で起こされたのを思い出します。
 2021年7月20日、障害者に対する虐め事件で、東京運動会の作曲を担当していた小山田氏が首になったそうです。 が、運動会の音楽をわざわざ作曲する必要はありません。   
 戦前からロングランを続けている、<ラジオ体操の歌>など、いかがですか? 

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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861

同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。

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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU

Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa]  英語版URL:   https://youtu.be/au5p6mxvheo

WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十  2021年7月20日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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