2021年8月25日の自爆テロで死んだ米兵17人の報復を叫び、アメリカはテロ犯人と決めた<IS-K(イスラム国の分派)>の2人をドローンで殺害しました。 8月29日にも、アメリカは報復と称し、アフガニスタン首都のカブール市街地を空爆しました。複数の子供を含む数十人の市民を殺しました。 アメリカは2001年の<アフガニスタン報復戦争>を再現しようとしているのでしょうか? 国連の報道によると、国連援助機関はカブールから隣国パキスタンに拠点を移し、危険が多い陸路で食料や医薬品を運んでいるとか、、
一方、北アフリカでは、アルジェリアがモロッコに国交断絶を宣言し、新たな火種が熾ました。
① アルジェリアの国交断絶宣言:
2021年8月24日、ラムタニ・ラマムラ・アルジェリア外務大臣が首都アルジェで、緊急記者発表をした。外務大臣は「長年にわたるラバト(モロッコ)のアルジェリアに対する敵対行為を鑑み、アルジェリアはモロッコとの外交関係を断つ」と、宣言した。
世界のメデイアに次いで、日本でも朝日やNHKが、<アルジェリアによるモロッコとの国交断絶>取り上げた。
2021年8月24日のBBCTVは、会見詳細や1994年以来封鎖されたままの国境問題にも言及した。そのうえで、アルジェリアがモロッコとの国交を断絶した理由として、①ペガサス・スパイウェアでアルジェリアの情報関係者や政府高官をスパイしたこと、②山火事の拡大にモロッコが関与している疑惑があること、③モロッコ国連大使による国連での外交活動妨害やアルジェリアに対する誹謗中傷が激しいこと、④モロッコ占領地西サハラでの西サハラ住民に対する人権侵害が酷いこと、などを取り上げている。
8月25日、朝日新聞の北川カイロ支局長は、「アルジェリア北部カビール地方で、今月8日ごろに大規模な森林火災が発生。AFP通信によると、これまでに少なくとも90人が死亡した。テブン大統領は、同地方の独立を求める民族勢力が放火した可能性を示唆。対立するモロッコの関与を疑っている」と、報告した。さらに北川支局長は、「アルジェリアは、モロッコが実効支配する西サハラからの独立をめざす武装組織を支援している。」と、言及している。
8月26日のNHKは、「アルジェリアとモロッコは、モロッコが実効支配している西サハラをめぐって長年対立していて、今回の事態を受け両国のさらなる関係悪化が懸念されます」と、報じた。
② モロッコはアルジェリアの国交断絶宣言に猛反発:
8月24日のCORCAS(モロッコ王立サハラ問題諮問評議会)は、「本日、火曜日、モロッコ外務省は、アルジェリア当局が下したモロッコとの外交関係断絶宣言は全く不当であると、遺憾の意を表した。間違った、馬鹿馬鹿しい先入観に毒されたこの決定を、モロッコ王国は断固拒否する。それでも、懸命なモロッコ王国は、知恵と執念でマグレブ地域の発展に努力し続けていく決意だ」との声明を出した。
国連西サハラ人民投票を嫌うムハンマド六世モロッコ国王は、西サハラをモロッコとアルジェリアで折半しようと、アルジェリアに取引を持ち掛けてきた。現国王には、1975年に西サハラ・スペイン植民地(当時)を、モーリタニアと折半した、先王の<マドリッド秘密取引>が刷り込まれている。しかし、この秘密取引は大失敗で、46年経った今も、西サハラ独立運動の火は燃え続けている。
モロッコ国王は、戴冠記念演説で、「お隣り同士なんだから、国境なんて取っ払って仲良くしようよ!」と、アルジェリアに思いっきり秋波を送った、、アルジェリア山火事の惨事を捉えて、「火事お見舞い、消火協力します」と、モロッコ国王はテッブン・アルジェリア大統領に見舞い状を送った。「モロッコは放火共犯者か?」という疑惑の調査中に送られてきたモロッコ国王の書簡は、アルジェリア庶民の感情を逆なでした。アルジェリア政府は、山火事の鎮火が見えてきたらモロッコとの外交を再検討すると、予告した。
モロッコ現国王モハンマド六世陛下は、<レファレンダムー国連西サハラ人民投票>を
やったらモロッコが負けると予測し、レファレンダムを拒否してきた。そして、西サハラはモロッコのものと主張する一方で、西サハラをアルジェリアと山分けする話をアルジェリアに持ち掛けていのだ。モロッコが銃で追い出した西サハラ住民を、46年間にわたって難民として庇護してきたアルジェリアは、モロッコ国王の誘惑と脅しに、<国交断絶>と、返答した。
③ 国連事務総長が新西サハラ国連事務総長代理を指名:
8月15日にタリバンがアフガニスタンの首都カブールを掌握して以来、刻々悪化するアフガニスタン情勢が国連記者会見室を独占していた。そんな8月24日、「アルジェリアがモロッコとの国交を断絶した。事務総長の見解は?」と、モロッコ寄りの記者が質問した。翌8月25日になって、国連事務総長報道官が、「我々は、モロッコとの外交関係を断つという、アルジェリア外務大臣の声明を見た。国連事務総長は、隣接するこの二国に対して、地域の平和と安全を考慮し、関係改善を目指すより良い策を見つけ出す努力を促している」と、回答した。
8月27日、突然、「おめでとう! 我々の仲間が西サハラ国連事務総長代理に抜擢された!」と、国連報道官が発表した。西サハラ国連事務総長代理はMINURSOミヌルソ(国連西サハラ人民投票監視団)のリーダーを務めることになる。関係者が待ち望んでいる国連西サハラ事務総長個人特使ではないので、モロッコと西サハラの交渉を仲介する役目は担っていない。
「事務総長が新西サハラ国連事務総長特別代理人に指名したロシアのアレキサンダー・イバンコは、30年間、PKOや報道担当で国際社会に貢献してきた。彼は、知る人ぞ知る、2009年来のMINURSO専門家だ。彼の前職は国連コソボ報道局長兼報道官で、ボスニア・ヘルツェゴビナを拠点としていた。彼は、コリン・スチュワート(カナダ出身)の後任者となる」と、国連事務総長報道官は紹介した。ジャーナリストとして、ロシア紙で、アフガニスタンとアメリカの情報提供をやっていた。1998年から2005年にかけてヨーロッパで、イバンコ氏は<報道の自由のための安全と連帯の組織>副代表を務めていたこともある。当然、ロシア語と英語に堪能だ。
アレキサンダー・イバンコ(ロシア人)新西サハラ国連事務総長代理人で
MINURSO(ミヌルソ)のリーダー
「モロッコには、国連人民投票の施行以外に選択肢はない」と、EUとヨーロッパの西サハラ難民政府代表ウビ・ブシャラヤ・バシールは、声明を出しました。「モロッコ国王は、権利と平和を西サハラ人民から奪っている。その事実は、マグレブや欧州や国際社会が認識している。国王はその真実と国際審判に従い、人民投票をやるしかない!」と、強調するのですが、、
スペインにはモロッコの西サハラ領有権承認を断られ、アルジェリアには西サハラ折半話を断られたモロッコ国王陛下は、突然、バイデン米国大統領に、カブール空港テロのお悔やみ状を送りました。 その真意は? <トランプ前米大統領のモロッコ領有権承認>の再承認のようです。
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2021年8月30日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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