MINURSOミヌルソ(国連西サハラ人民投票監視団)の任期が、10月31日で切れます。 日本は衆議院選挙の投票日です。 西サハラにとっても日本にとっても、大事な日です。 そんな時に、アントニオ・グテーレス国連事務総長と米国はCOP(気候温暖対策)26会議を主催し、資金集めのため各国首脳に出席を強要しました。 ビデオ参加はだめだそうで(?)、日本の首相は衆議院選挙の後片付けもそこそこに、コロナ新規感染者が蔓延する英国のグラスゴーに飛ぶそうです。
① 2021年10月20日、モスクワ、ワシントン、アルジェ:
10月12日の北京時事が、「中国の習近平国家主席がCOP26首脳会合に欠席する見通しだ」と、伝えた。
10月20日のモスクワ共同通信が、「ロシアのペデスコフ大統領報道官が、プーチン大統領は今月末に英北部グラスゴーで開幕する国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に出席しないと、述べた」と、報じた。
10月20日、ポリサリオ西サハラ外交団がそのモスクワを訪問し、ロシアは改めて「国連指導の下で、モロッコとポリサリオ西サハラの両当事者が納得できる、国際法に則った解決策をみつけるべきだ」と、これまでの見解を反復した。ロシアを訪問したポリサリオ西サハラ外交団は、ウッビ・バチャラヤ・バシール西サハラEU大使とシデイ・オマル西サハラ国連大使兼MINURSOミヌルソ(国連西サハラ人民投票監視団)西サハラ代表の二人が率いた。ロシア外務省は、ボグダノブ外務副大臣以下の高級外交官を対応させた。
ロシア外務省を訪れた左端にオマル西サハラ国連代表、一人置いてバシール西サハラEU大使
MINURSOミヌルソ(国連西サハラ人民投票監視団)の期限切れを目前にして、UN (国際連合)をはじめ、EU(ヨーロッパ連合)やAU(アフリカ連合)では、期限をさらに一年延ばす価値があるかどうか、議論が高まっている。「両当事者が納得できる西サハラ紛争の平和的解決」というロシアの、外交辞令的卒なく便利な立場は、EU(ヨーロッパ連合)やAU(アフリカ連合)も、便乗している。
10月20日、モスクワとの対決姿勢を崩さないワシントンも、モロッコの一方的な西サハラ領有権は否定した。トランプ前大統領が退陣間際、モロッコ占領地・西サハラにアメリカ領事館の新設を決めたが、バイデン政権はそれを否定した。アメリカも、西サハラ紛争に関しては、両当事者納得の国連平和的解決に同意している。
② <不適格、時代錯誤、大嘘>モロッコの反西サハラ・アルジェリア・ヘイトスピーチ:
モロッコは相変わらず、「モロッコ・サハラ(モロッコ側の西サハラ呼称)はモロッコ国王のもの」と、主張し続けている。従ってモロッコ・サハラ(モロッコ側の西サハラ呼称)はモロッコ領土内にある一地方で、<モロッコの植民地>と声高に批判される筋合は全くないと、言い張る。そして、西サハラの脱植民地化を支持するアフリカ諸国を、<不適格、時代錯誤、大嘘つき>と、こき下ろす。特に非難の矛先を西サハラ難民の庇護者であるアルジェリアに集中させ、「アルジェリアは西サハラ難民を人質に取って、外交の切り札に悪用している」と、国連など公の場で非難し続けている。
2021年8月7日、モロッコはイスラエルをAU(アフリカ連合)に、オブザーバー国として送り込んだ。国連パレスチナ決議を無視し続けているイスラエルと組んだモロッコは、「SADR(サハラウィ・アラブ民主共和国)をAUから追放」のキャンペーンを過激に展開させ始めた。10月18日にラバトで 国際外交センターの研究員がRIM ラジオから呼びかけて始めた追放キャンペーンは、元フランス植民地の西アフリカに広まった。MAP(モロッコ国営通信)は、「金曜日(10月22日)コンゴ民主共和国のキンシャサで行われたセミナーで、多数の閣僚経験者や政治家や活動家やジャーナリストや経済人や識者といった著名なアフリカ人たちが、SADRと名乗る組織をAUアフリカ連合が加盟させたことに、焦点を当てた。全くこの幽霊組織は<不適核、時代錯誤、大嘘つき>で、アフリカ大陸に存在していない。AUはサハラ問題を再検討し、アフリカの団結のため、このとてつもない大失敗に決着つけるべきだ」と、結論づけた。名を名乗らない彼ら有識者たちは、「AUアフリカ連合が架空の存在であるSADR(サハラウィ・アラブ民主共和国)を正式国家として認めた頃は、特殊なイデオロギーが蔓延っていた。が、いまやそのイデオロギーは廃棄物になっている」と、AUにSADR(サハラウィ・アラブ民主共和国)の追放を迫った。SADR(サハラウィ・アラブ民主共和国)の正式承認は、1984年当時のOAUアフリカ統一機構(AUアフリカ連合の前身)が行った。それが不服でモロッコはOAUを脱退し、やっと2016年に復帰させてもらったのを、忘れているようだ。
③ 国連西サハラ人民投票を急かせる西サハラとアルジェリア:
10月22日、アルジェリアの西サハラとマグレブ大使・アマル・ベラニが、緊急声明をAPS(アルジェリア・プレス・サービス)に発表した。アマル大使は、「モロッコとポリサリア西サハラ難民政府との衝突はますます激化し、国連安保理は即刻、西サハラ問題を明確に責任をもって対処すべきだ」と、国連安保理の速やかな行動を促した。さらに大使は、「ゲルゲラト国連緩衝地帯に軍事侵攻し国連停戦合意を破ったモロッコは、その後も当該地域にモロッコ兵を展開させている。モロッコ占領軍による乱暴な停戦破りと不法なゲルゲラト国連緩衝地帯の占拠は、当該地のみならずマグレブ北アフリカ全般の治安を脅かしている」と、言及した。
10月22日、ポリサリオ西サハラ政府は、「国連安保理が日程を決めたら、その日に向けMINURSOミヌルソ(国連西サハラ人民投票監視団)は、直ちに国連人民投票の準備にかからなければならない。そのためにMINURSOは創設され、今も存続しているのだから、、
国連の呼びかけに耳を閉ざしてきたモロッコがやっと声を上げ、我々は西サハラ・モロッコ問題が平和で両当事者納得できる現実的で正当な最終結論を目指すという新局面を迎えたと、認識している。一方で、その結論が、西サハラ人民の民族自決権や人権を侵害していないかどうか?我々は注意深く検証を続けていく。1991年にモロッコ王国とポリサリオ西サハラ政府が、国連とAUの監督の下で同意した停戦と国連人民投票の精神に則って、速やかに国連投票を施行するのが、唯一の解決策だ」と、国連西サハラ人民投票の早期施行を迫った。
国連西サハラ人民投票は、西サハラ独立か?モロッコ帰属か?を選ぶ、二者択一の選挙です。 モロッコが主張する<モロッコ帰属>はオプションにあるわけだから、モロッコも喜んで選挙に参加すればいいと思いませんか?
<国連西サハラ人民投票>は、もうすでに両当事者が納得した、立派な国連和平案です。
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2021年10月26日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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