SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】457 年を越す国連和平工作の失敗

  クリスマス直前の国連事務総長定例記者会見で、明るい笑顔と明るい声のファラファン副報道官が数々の国連失敗談を報告しました。 新型コロナウィルス変異株オミクロンの感染者が激増するニューヨークの国連本部では、再び在宅勤務が始まったようで、副報道官はこのところリモート記者会見をしています。
 国連事務総長自身は、年に2、3度しか出席しません。

① 国連ボスのレバノン訪問:
 アントニオ・グテーレス国連事務総長はレバノン政府の正式招待を受け、12月19日、20日、21日とレバノンを訪問した。副報道官によると、国連ボスは12月19日にバアブダ宮殿でミシェル・アウン・レバノン大統領に会い、12月20日にはナビ・ベッリ国会議長やナジブ・ミカティ首相らと会談したと言う。事務総長副報道官は「事務総長は記者たちに、ここ数日、レバノンの大統領と国会議長と首相に会えて、非常に勇気付けられたと語った。5月初旬の選挙施行が、再確認されたと、彼は言及した。さらに、政府がIMF(国際通貨基金)と交渉する準備に入っていることに、彼は共鳴したとも語った、、結局、レバノン問題はレバノン人だけが解決できる問題だ、と強調したうえで国連事務総長は、「レバノンが現在の厳しい状況を乗り切るために、国際社会の支援が求められると、語った」と報告した。
 国連ボスは大爆発事故があったベイルート港の現場も訪れた、大爆発は、2020年8月4日夕刻に起こった。ベイルート港の倉庫に保管されていた約2,750トンの硝酸アンモニウムに火が付き、死者218人、負傷者は7,000人を超えた、30万人以上が家を壊された。国連ボスはその記念碑に黙祷を捧げ、「人々は事件の真相を知りたがり相応な賠償金を要求していることは、よく承知している」と、記者たちに語った。
 2012年12月18日、国連ボスはまた一つ、メダルを増やした。イタリアにあるセント・アッシジ修道院から、<平和のランプ賞>を入手した。さすが国連ボス、目ざといですね!

② 国連指導のリビア大統領選挙と国会議員選挙は頓挫:
 2021年12月23日の国連事務総長定例記者会見で、副報道官はリビアの失敗報告から始めた。副報道官は、「ステファニ・ウィリアム事務総長特別補佐官が、昨日、その国(リビア)の最高選挙委員会が述べたことを報告してきた。技術的な準備はOKだが、政治的地勢問題が解決しておらず、2021年12月24日に間に合わせることはできないと、言っているそうだ。ウィリアムは、投票の登録を済ませた280万リビア人の尊重し支援するように、関係団体に呼び掛けた。リビアの政治空白と不穏な情勢を解決するには、大統領選挙と国会議員選挙が、つまり、全ての候補者たちが安全に民主的に選挙戦を戦えるような、適切な時期に施行されることが不可欠だと述べた。さらにウィリアムは、これまでの15カ月間に、選挙に向けてリビア人が成し遂げてきた行動は、紛れもなく、治安を維持し協力が可能であることを証明している、と語った。彼女は、全ての政治家や政治団体は引き続き選挙の行程を遵守し、そのために治安を維持し、自由で公正で平和で信頼できる選挙を成功させていかねばならないと、強調した」と、報じた。誠に立派な<失敗の客観的総括>だが、国連ボスは主観者で首謀者なのに、その責任について一言も触れさせていない。国連は評論屋ではない。これまでリビアの選挙を引っ張ってきた国連事務総長個人特使を選挙1か月前に首にして、評論家もどきの<総長助言者>に切り替えたのも、<失敗>を察知し、あるいは<失敗>を誘発するための<国連ボスの逃げ>だったのかも知れない?
 結局、リビア選挙の失敗はリビア人の所為で、言い出しっぺの国連ボスは何も悪くないことになった。リビア選挙に関して国連ボスが現在送り込んでいるのは、UNSMIL(United Nations Support Mission in Libya国連リビア支援ミッション)とステファニ・ウィリアム国連事務総長助言者で、名称にかこつけて文句を付けられないようになっている。
 12月23日の国連定例記者会見では、レバノン、リビア、ミヤンマー、スーダン、イエメン、ベネズエラ、フィリピン、エチオピア、アフガニスタン、パレスチナ、、が、話題に上ったが、どこの状況も悪化したままで年をこす、、国連ボスは悪くない?

③ いつになったら手を付けるのか?国連西サハラ人民投票:
 一方、MINURSO(ミヌルソ・国連西サハラ人民投票監視団)に関しては、文字通り、国連が西サハラ人民投票を提案し施行を目指してきた。この平和解決を目指すREFERENDUMレファレンダム(国連西サハラ人民投票)の未施行は、提案者である国連に100%の責任がある。
 この国連人民投票は、1991年に当時のデクエヤル国連事務総長が提案しMINURSOミヌルソを創設し、以降、ガーリ、アナン、潘基文、と歴代の国連事務総長が西サハラ人民投票の実現を目指した。殊に、韓国の第8代国連事務総長潘基文氏は、2016年3月、自ら西サハラ難民キャンプに足を運び、「これ以上、不幸な西サハラの人々を待たせるわけにはいかない」と、国連西サハラ人民投票の早期実現を約束した。が、任期切れで事務総長の席はグテーレスに渡ってしまった。当時、モロッコは潘基文国連事務総長に猛反発し、MINURSO(ミヌルソ・国連西サハラ人民投票監視団)の要員をモロッコ占領地・西サハラから追放し、潘基文に謝罪を求めた。その時、日本は国連安保理非常任理事国の席にあって、岸田外務大臣(現内閣総理大臣)が、12月の安保理議長を務めていた。
 2021年12月13日の国連定例記者会見では、停滞したリビア選挙に関して質問が集中していた。そんな中でアリ・バラディ記者が、「デミストラ国連西サハラ事務総長個人特使は何をしているのか?ここ(国連ニューヨーク本部)にいるのか?」と聞いた。ファラファン副報道官は、「彼は、ここ(国連ニューヨーク本部)にいない。新しい職に慣れるため、様々なところを回っている」と答えた。
 モロッコは連日、<モロッコ・アメリカ・イスラエルの絆>を看板に、文化面、経済面、そして政治面で、<西サハラはモロッコ領土>キャンペーンを展開させている。
 その一方で、モロッコの若者たちは命がけで国外脱出を試みている。スペインの日刊紙<La Razon ラ・ラソン>が12月22日、「17才から20才のモロッコ若者80人が、モロッコと国境を接するスペイン飛び地領メリリャの高いフェンスを乗り越えて不法入国を図った。一行はモロッコ王国軍の1年間兵役を拒否するため、脱国した」と、報じた。14人が脱出に成功した。彼らは、<砂の壁・地雷防御壁>の警備に充てられる予定だったとか、、「突然飛んでくる弾の犠牲なんて、まっぴらだ!」と、若者の一人が日刊紙に語っている。
 12月23日、モロッコ製<砂の壁・地雷防御壁>に向け、SPLA(西サハラ難民軍)が2020年11月のモロッコ軍による国連停戦破棄以来、406回目になる攻撃をした。

SPLA(西サハラ難民軍)が公表した最新の合成写真、目標は<砂の壁。地雷防御壁>

 国連西サハラ人民投票は、30年経っても手が付けられていません。MINURSO(国連西サハラ人民投票監視)団長も事務総長個人特使も決まった年明け2022年には、ぜひぜひ実現してください。 
 アントニオ・グテーレス国連事務総長殿、お願いします。

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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU

Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa]  英語版URL:   https://youtu.be/au5p6mxvheo

WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十  2021年12月26日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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