SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】460 デ・ミストラ国連事務総長特使、西サハラ難民キャンプへ

 2020年1月12日、国連定例記者会見でステファン報道官が、「あんたたちから質問されてきたことに、朗報で返すことができて、まずは幸せな気分だ。スタファン・デ・ミストラが最初の当該地域ツアーに旅立った。今日はラバト(モロッコの首都)に降り立つ」と、切り出しました。
 そして、1月15日と16日、デ・ミストラ国連事務総長西サハラ個人特使はアルジェリア最西端の砂漠にある西サハラ難民キャンプを訪問しました!

西サハラ難民キャンプに入ったデ・ミストラ(白い上着の人)国連事務総長西サハラ個人特使

① モロッコのデ・ミストラ:
 いよいよ、モロッコと西サハラの歴史的な政治駆け引きが始まった。両当事者とも、関係者の一言一句に神経をとがらせている。出来る限り私感を最後に回して、当事者たちの発言を直訳していく。まず、2022年1月13日、スタファン・デ・ミストラ国連事務総長西サハラ個人特使が仲介旅行の最初の一歩を踏み出したモロッコ省都ラバトから、MAPモロッコ国営通信の発表を紹介する。
 「外務大臣ナセル・ブリタはモロッコ・サハラの国連事務総長個人特使スタファン・デ・ミストラと、木曜日(1月12日)にラバトで会った。この作業会は、モロッコ王国国連全権大使オマル・ヒラ―ルが同席して行われた。
  ・ミストラの当該地訪問は、2021年10月29日に採択された国連安保理決議2602の一部で、そこには、国連執行部が引き続き当事者たちに、現実的で協力的な精神の下、実現可能で現実的で持続性のある、双方が納得できる解決策を見出せるよう、ラウンドテーブル形式での対話を促している。会合では終始、モロッコ代表団がモロッコ王国の立ち位置を繰り返し説明した。それは45回と46回の緑の行進記念演説で国王陛下が述べられたように、まことにもって、モロッコの領有権を確約するものだ。国連指導で再開される政治的作業では、モロッコの領有権を基盤にした4関係者が参加するラウンドテーブル方式で行うものとする」(MAPモロッコ国営通信)
 私感;デ・ミストラの公式発言はまだない。モロッコの西サハラ領有権は、ジェームス・ベーカー元国連事務総長個人特使による国連西サハラ人民投票を拒否してから、2007年にモロッコが言い出したものだ。以来、モロッコは<科学的根拠>なしに、この主張を続けている。モロッコの言う4関係者とは、モロッコ、アルジェリア、モーリタニア、そして西サハラで、モロッコは国連が指定しているモロッコと西サハラの両当事者直接交渉を、極力、避けようとしている。のみならず、西サハラを排除しようと、画策している。

② 西サハラ難民キャンプのスタファン・デ・ミストラ:
 2022年1月15日と16日に、スタファン・デ・ミストラ国連事務総長西サハラ個人特使は、西サハラ難民キャンプを訪問した。
 初日の1月15日は、5か所ある難民キャンプのうち、ラボニ難民センターに近いスマラ難民キャンプを訪れた、デ・ミストラ特使は難民から大歓迎を受けた。そして、スマラ・キャンプの学校や病院や集会場などを視察した。その足で約60㎞離れたブジュドゥール・キャンプを訪れ、シディ・オマル西サハラ難民政府国連代表やバシール・ムスタファ大統領特別補佐官やブシャラヤ・バユーン首相やアブダティ・アブリカ大統領補佐官や難民軍のトップなどの要人と共に、難民の若者や女性たちとも意見を交換した。
 二日目の1月16日には、人権問題委員会を始めとする数々の組織から訴えを聞き、博物館や民芸品工房などを見学した。赤新月社総裁から、難民の食糧事情や援助物資状況の説明を受けた。内務大臣オマル・マンスールやムスタファ・シデイ・アル・バシール占領地・海外移民担当大臣などとの会合を終えたデ・ミストラは、ブラヒム・ガリ西サハラ難民大統領兼ポリサリオ難民軍事務総長との会談で、西サハラ難民キャンプ訪問を締めくくった。
 西サハラ難民キャンプの西サハラ難民は勿論、モロッコ占領地・西サハラの被占領民も国連西サハラ人民投票実現を望んでいる。スマラ難民キャンプには、今も、1998年に国連が国連西サハラ人民投票所として作った小屋が、南京錠を掛けられたまま残っている。

③ <国連西サハラ人民投票>の行方:
 ウビ・バシール西サハラ難民政府EU代表はフランス国民議会の西サハラ問題の外交政策会で、「アフリカ最後の植民地紛争を終結させる現実的な解決策は、<Referendum リファレンダム(人民投票)>の手段しかない」と、語った。
 シデイ・オマル西サハラ難民政府国連代表はニューヨークで、「具体的な解決策を示して、関係者が話し合うべきだ。1991年に国連が提案した<国連西サハラ人民投票>は、両当事者の要求を受け入れた唯一の解決策と認識されている」と、声明を出した。
 元首相のアブデルカーデル・タレブ・オマル駐アルジェリア西サハラ難民政府大使は、「我々が国連事務総長西サハラ個人特使に要求する最優先の懸案事項は、国連西サハラ人民投票の速やかな施行だ、、国連西サハラ人民投票を組織すれば、全ての問題が片付いていく。占領地からの脱出、モロッコ占領地西サハラでの人権侵害、さらには、モロッコによる不法な占領政策そのものなどだ」と、AFPアルジェリア国営通信に声明を出した。
 クリストファー・ロス元国連事務総長個人特使はウェブサイトで、「まだ交渉の可能性が残っているのであれば、1997年から2004年まで国連事務総長個人特使を務めていたジェームス・ベーカー元アメリカ国務長官と同等の大きな権限を、スタファン・デミストラ新国連事務総長個人特使にアメリカ政府が与えればいい。西サハラ紛争の落としどころを探るのは、両当事者ではなく個人特使なんだから」と、アメリカ外交官でもあるクリストファー・ロスは、アメリカ政府に進言した。1998年から2000年にかけて、ベーカー特使と補佐官ジョン・ボルトンの尽力で国連西サハラ人民投票は実現しそうだった。が、モロッコが潰した。クリストファー・ロス自身も、モロッコから2016年に個人特使の座を追われた。

 新国連事務総長西サハラ個人特使のスタファン・デ・ミストラは、モロッコと西サハラ難民キャンプ訪問を終え、アルジェリアとモーリタニアに向います。
 元国連事務総長西サハラ個人特使ジェームス・ベーカーはモーリタニアに入ろうとした時、体調を崩しドクターストップが入って旅を中断させました。
 デ・ミストラ新国連事務総長個人特使殿、お気を付けて、、ボン.ボヤージュ!
 
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、

発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861

同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。

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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU

Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa]  英語版URL:   https://youtu.be/au5p6mxvheo

WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十  2022年1月16日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion11674:220116〕