SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】472 モロッコ国王の饗応を喰らったスペイン首相

 2022年4月7日、イスラム歴1443年ラマダン(断食)月5日、モロッコ国王モハンマド六世、ラシード王子(弟)、ハサン皇太子(息子)などモロッコ王族に囲まれてイフタールの豪華食卓を前にしたペドロ・サンチェス。スペイン首相の写真が、モロッコ中に流れました。 イフタ―ルとは、日没後初めて許される食事を指し、日中の辛い断食から解放される、イスラム教徒にとって最高に幸せな時です。 

① モロッコ国王陛下に謁見:
 4月7日、モロッコ王室は、「モハンマド六世陛下が、神のご加護が陛下にありますよう、、ペドロ・サンチェス・スペイン首相の謁見を許された。これは、3月14日にスペイン首相が<西サハラへのモロッコ自治州案を支持>とする手紙を、国王陛下に送ったことから始まった。3月31日、画期的な外交再開はモハンマド六世国王陛下とスペイン首相の電話会談に繋がり、今日の国王陛下ご招待とあいなった、、」と、モロッコの外交勝利を自画自賛する声明を出した。
 さらに王室省は、「この素晴らしい外交政策は、2021年8月20日の国王陛下ご講演に基づいている、、サハラ問題に関してスペイン首相は、モロッコ自治州案は紛争地問題解決のために、一番現実的で可能性が高いと繰り返し述べた。これを機に国王陛下とスペイン首相は、新しい両国関係を全ての面で構築していくと、再確認した」と、言及した。
 モロッコ国王陛下には外交権と軍事権と宗教権などの特権があり、王室省(ministryと呼称)が司っている。モロッコ国王陛下はウクライナ戦争に関わりたくないようだ。国連総会ロシア非難決議などに関しては、採決前に会議場を立ち去るという逃げの手を使ってきた。  
 モロッコ国王陛下は、ひたすら西サハラ領土獲得に執着している。1991年の国連和平案であるレファレンダム(国連西サハラ人民投票)をモロッコは一旦受諾したが、その後レファレンダムを拒否した。2007年、新たに「モロッコ地方自治州」を提案し、UN国連やAUアフリカ連合や関係諸国にモロッコの西サハラ領有権を認めるよう強要してきた。
 スペイン首相の「モロッコ自治州案は西サハラ紛争解決に有効だ」という文言は、まもなくモロッコ外務省によって「スペインはモロッコの西サハラ領有権を承認」と、変えられることになり、さらに、「旧宗主国スペインから、モロッコは西サハラを譲り受けた」と、変換されるようだ、、

スペイン両議院議会で、西サハラの国旗を掲げてサンチェス首相の
「モロッコ自治州案支持」に抗議する議員たち

② モロッコ国王外交の勝利を祝う国王の取り巻き:
 モロッコ国王が主催する<クラン・モンタナ>と言う名の経済ホーラムが、毎年、モロッコ占領地・西サハラで開催されている。常連の有名どころには、サルコジ元フランス大統領やサパテロ元スペイン首相やアメリカのジェシー・ジャクソン牧師などが名を連ねている。サンチェス・スペイン首相のモロッコ国王謁見を受けジャン・ポール・カルテロン・<クラン・モンタナ>ホーラム創設者がMAP(モロッコ国営通信)のインタビューに答えて、「王国の領土主権とサハラのモロッコ化(モロッコ植民地化)を維持し守ろうとなさるモハンマド六世国王陛下の、揺るぎなく歴史的で力強いお言葉と毅然とした行動は、強く明確な無数の地位を確立させていく基幹となりまする、、」と、舌を噛みそうな美辞麗句でスタンディング・オベーションもどきの祝辞を述べた。
 そしてMAP(モロッコ国営通信)は、サパテロ・スペイン元首相やゴンザレス元スペイン首相にも声をかけた。サパテロもゴンザレスも、そしてサンチェスも左のスペイン社会労働党で独裁王制反対派なのだが、西サハラ獲得のためなら右も左も問わないモロッコ国王の甘言に乗せられて、軽く寝返った。フェリペ・ゴンザレス(在任期間1982~1996)は「モロッコの地方自治州案は、サハラ紛争に関する最良の解決策だ。40年以上にわたって数々の提案が出されてきたが、これ以上に現実的で実現可能なものはない」と、モロッコ国王外交を褒めちぎった。

③ 内部告発者が語るMINURSOミヌルソ(国連西サハラ人民投票監視団):
 2018年6月22日、マチュー・リー・インナープレス記者が力ずくで、国連ビルから保安係につまみ出された。シャツは破られ傷つけられた。その時、モロッコ外交官が一部始終を見ていた。西サハラ側に立って国連取材を続けていたため、オマル・ヒラ―ル・モロッコ国連大使が国連報道室に強力に働きかけリー記者を排除したのだ。ヒラールはリー記者排除の理由を、「いつも汚い同じシャツを着て、攻撃的な質問をする某記者は、外交官が出入りする国連に相応しくない」と、語った。リー記者は未だに国連ビルから追放されたままだが、国連内部告発者に助けられながら、西サハラ報道を続けている。
 リー記者の情報によると、「コリン・スチャートMINURSOミヌルソ(国連西サハラ人民投票監視団)代表のセクハラ・スキャンダルの件で、国連事務総長に何度も質問状を出したが全く返事がなかった。ブハリ西サハラ難民政府国連代表が演壇に立つとマイクの電源が切られることも追及したが、事務総長から回答はなかった。そして、僕は国連出入りを禁じられ、ブハリ西サハラ難民政府国連代表は2018年4月3日、突然死んだ」
 国連事務総長は2021年8月27日に、コリン・スチャートの後ガマとしてロシア人のアレキサンダー・イバンコをMINURSOミヌルソ(国連西サハラ人民投票監視団)代表に任命した。コリン前代表のセクハラ・スキャンダルが未解決のなか、リー記者から、「3月10日、内部告発者から2件の情報が入った。一つ目は、既婚のチア・ラーマン空軍指揮官が地元のモロッコ女性を妊娠させてしまい、この一件のもみ消しをイバンコに頼んだ。イバンコは、女性と彼女の家族に金を払って決着をつけた」と、ミヌルソ最新セクハラ情報が入った。時代錯誤な、女性蔑視も甚だしい醜聞だ。
 さらにリー記者は、「さて、二件目はイバンコの番だ。彼は関係のあったモロッコ女性と結婚をする羽目に陥った。彼は、結納の一部として女性の家族に74,000ユーロ(10,002,893円)の家を買い与えた。OIOSがこの2件の調査に入ったのかどうか?知らない」と、暴露した。
 OIOS(Office of Internal Oversight Services)とは、国連およびその加盟国における不正行為や浪費・乱用・違法行為・不正管理などについて監視・調査を行う、国連内部の監査機関だそうだ。(国連広報センター)

 「国連グテーレスのミストラは、西サハラを巡るスペイン攻略の一部とみなしている」と、イフタールの末席を汚したブリタ・モロッコ外務大臣は豪語しています。 バカにされた感のある国連事務総長西サハラ個人特使スタファン・デ・ミストラは、4月20日に国連安保理で西サハラの報告をします。

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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861

同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。

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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU

Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa]  英語版URL:   https://youtu.be/au5p6mxvheo

WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十  2022年4月10日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion11937:220410〕