SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】477 パレスチナ人記者射殺で中東紛争再燃

 2022年5月11日の朝、イスラエル占領地・パレスチナ西岸北部の町・ジェニンで、シリン・アブアークレ・パレスチナ人記者がイスラエル軍によって射殺されました。彼女はアルジャジーラTVの有名なレポーターで、この朝は、ジェニンにあるパレスチナ難民キャンプを取材中でした。プレスと書かれた防弾チョッキを着ていたのですが、イスラエル狙撃兵に狙い撃ちされました。
 

ヘルメットで分かるイスラエルのスナイパー(狙撃兵)たち (出典APS)

① 狙い撃ちされるパレスチナ人記者:
2022年5月11日の国連定例記者会見では、シリン記者射殺に怒る記者仲間
が、ファルハン副報道官に質問を浴びせた。
 「なぜ、事務総長はすぐに非難声明を出さなかったのか?」「国連主導で記者射殺調査組織を作る積りがあるのか?」「記者射殺犯人のイスラエルに、国連は制裁を加えるのか?」「中東紛争が再燃すると懸念しているか?」等々、、
アブド・ル・ハミード・パレスチナ人記者が、「2000年から今日まで、55人のパレスチナ人記者が取材中に殺されている。しかし、一度も、イスラエルは真っ当な調査をしてこなかった。事情通のウェンスランド国連パレスチナ担当官は、即、当局に電話をしたというが、<当局>とは誰だ?なぜ、殺人首謀者に報せるんだ?何故、彼は客観的で透明な国連調査の必要性に言及しなかったのか?イスラエル以外が主導する調査機関設置の可能性があったのに、、」と、質問した。
イスラエル占領地・パレスチナのヘブロンに生まれ、故郷を舞台に活躍していた親友のマーゼン・ダーナー記者も、イスラエルに狙い撃ちされた55人のうちの一人だ。
さらに、ハミード・パレスチナ人記者は、「ヘブロン近郊のマサファ・ヤッタ村の約1,500の住人は強制撤去の運命にある。5月4日、イスラエル法廷は彼らを軍事力で追放しても良いという判決を出した。国連事務総長や国連パレスチナ担当官は新たな紛争を知っているのか?」と、質問を続けた。
そして5月13日の国連定例記者会見でもハミード・パレスチナ人記者は「
殉教者シリン・パレスチナ人記者の葬式をイスラエル治安部隊が襲ったことは、エディ記者が追及してくれた。私は今一度、ヘブロン近郊の村民追放事件への国連対応を質したい」と、迫った。「イスラエルの入植行為は国連憲章と国連決議に違反する。国連はイスラエルを制裁しないのか?」という質問も出た。国連事務総長副報道官は、制裁は国連安保理が決める事と、いつものように責任を転化した。仮にイスラエル制裁を議題に載せても、イスラエルの後ろ盾アメリカが拒否権を使ってチャラにしてしまう。国連記者も国連職員も誰も彼もご存知、、質問「なんとかならないの?」、解答「なんともならないの」

② パレスチナを支援するアルジェリア:
シリン記者射殺にいち早く反応したのは、アラブ諸国の中でアルジェリアだった。「アル・ジャジーラ・ニュース・チャンネルの中でも突出した記者の一人だったパレスチナ人シリン・アブアークレ・パレスチナ人が、イスラエル占領軍によって、水曜日の朝に殺された。彼女は、占領地西岸北部のジェニンで、イスラエル軍の襲撃を取材していた」と、APS(アルジェリア国営通信)がお悔やみの報道をした。
そのアルジェリアを5月10日に、セルゲイ・ラブロフ・ロシア外務大臣が訪問している。ラブロフ・ロシア外務大臣はテブン・アルジェリア大統領に会い、プーチン大統領からのモスクワ招待状を手渡しした。ラマムラ・アルジェリア外務大臣との共同記者会見で、ラブロフは両国の変わらぬ友好関係を礎に、経済や文化の交流をますます深めていきたいと語った。「ヒトラーにユダヤ人の血」というラブロフ発言に関しては、短く、プーチン大統領がイスラエル首相に謝罪した事を解答とした。知る人ぞ知る<ヒトラーにユダヤの血・説>は、ナチス法律局長ハンス・フランクの遺著「死に直面して」などが根拠になっている。ハンスがヒトラー自身から血筋の調査を依頼され調べたところ、「ヒトラーの父アロイスの母マリア・アンナ・シックルグルーバーは、ユダヤ人資産家フランケンベルガー家で家政婦として働き、その家の息子レオポルド・フランケンベルガーと肉体関係を持ち、赤子・アロイスを生んだ」そうだ。
 一方、常日頃<パレスチナのモロッコ>を自称するモロッコは、友好国イスラエルに忖度して、シリン記者射殺に関し黙して語らず。5月11日、マラケシュで<ISISと戦う国際会議>を主催している。モロッコ外務大臣は会議の冒頭で「テロリスムと分離主義は同じ穴のムジナ」と、西サハラの独立運動を分離主義と決めつけテロリストのレッテルを貼った。さらに、<西サハラ・モロッコ植民地化の素晴らしさ>を宣伝し、招待した国々の代表に、モロッコの西サハラ領有権を認めるような文言を強要した。ハッキリとモロッコの要求を呑んだ国はバハレーンなどの首長国で、オランダなどの代表は、モロッコの西サハラ自治州案は良いとしながら、国連の和平工作を支持すると表明した。トルコはモロッコの西サハラ領有権を否定し国連和平工作支持を明言した。アメリカはコロナに感染したブリンケンの代理で、2014年にバイデン傀儡ウクライナ政府を作ったクッキーおばさんヴィクトリア・ヌーランド国務次官が参加した。

③ パレスチナ難民を支援する西サハラ難民:
 パレスチナ国旗でくるまれたシリン記者の棺は、12日朝、西岸の町ラマラのパレスチナ自治政府本部に到着した。追悼式でマフムード・アッバス・パレスチナ自治政府議長は、「シリン・アブアークレ女史殺害の全責任はイスラエル占領当局にある、、国際刑事裁判所(ICC)に直ちに提訴する」と、表明した。さらに議長は、「信用できない」と、イスラエル提案の共同捜査を断った。イスラエルはICCを認めず、占領地での戦争犯罪捜査にも協力してこなかった。イスラエルに忖度する国連、アメリカ、欧州連合は、イスラエル主導の独立調査を支持している。13日、エルサレムでアブアークレさんの葬儀が行われ、参列したパレスチナ人群衆の中にイスラエル治安軍が突っ込み多数の怪我人が出た。
 西サハラ難民は、パレスチナ難民を敬愛し、その独立運動を支持してきた。
シリン・パレスチナ人記者射殺に、当然、強い怒りの声明が西サハラ難民政府から出されるものと思っていたが、SPS(サハラ・プレス・サービス)は音沙汰なし。調べまくって、やっとMAPというモロッコ国営通信MAPと同じ頭文字のアラビア語ネット通信で、シリン・パレスチナ人記者の死を悼む記事を見つけた。しかし、西サハラ難民のオリジナル記事ではなく、棺を囲むパレスチナ人の写真を付け、ジブチ外務省の弔問声明を転載していた。西サハラ難民政府は誰に忖度しているのでしょうね?
 「難民キャンプでは、イスラエルの蛮行を非難する声が大きく上がっている。難民政府として声明を出すように、難民政府通信で取り上げるように進言した。が、西サハラ人が直接絡んでいない事件は、取り上げない方針だと言われた」と、難民ジャーナリストが解答をくれた。
 
イスラエル軍は難民キャンプ襲撃について、「テロリストの容疑者」を逮捕するためだと説明しています。 そして、シリン・パレスチナ人記者は、パレスチナの武装勢力に撃たれた可能性があるとしました。
アルジャジーラのプロデューサー、アリ・サムーディ氏も銃撃され負傷し、病院に運び込まれました。 アりさんは病院から、銃撃された現場近くに、パレスチナ側の銃所持者はいなかったと発信しています。
国連には誰にも忖度せず、調査する責任があります。

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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861

同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。

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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU

Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa]  英語版URL:   https://youtu.be/au5p6mxvheo

WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十  2022年5月15日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion12032:220515〕