5月25日は、<アフリカの日>でした。 1963年5月25日にAU(アフリカ連合)の前身であるOAU(アフリカ統一機構)が、エチオピアのアジスアベバで創設されたことを受け、国連が決めた国際デーです。 この日から一週間にわたって、世界各地でイベントが催されます。 アフリカ南部ボツワナのアフリカ祭には、西サハラも参加しました。
また、5月29日はPKO(国連平和維持活動)の国際デーだと、国連広報センターが公表しています。
両記念日とも、アフリカ最後の植民地・西サハラにとって大事な日です。
① PKO(国連平和維持活動)の国際デーが5月26日に?:
2022年5月26日の国連定例記者会見を、ステファン事務総長報道官は、「ご存知のように、今日は国連PKOの国際日だ」と、始めた。「え~~?PKOの日は5月29日でなかったの?」と、反論する記者はいなかった。ウクライナ戦争の長期化、パレスチナ紛争の再燃、リビア内戦の再発、などなど、世界紛争と核危機に追われる記者たちにとって、国際デーの日付変更など関心がないのかもしれない。が、但し書きのない変更は、グテーレスさんの独断ですか?!
そもそも、PKOとは何なのか?国連広報や外務省<平和構築>の項などを参照にしてまとめてみる。
PKO ( UN Peace -keeping Operation) とは、国連憲章第一章で謳われた集団安全保障を実現し、紛争においての基盤を築き、紛争当事者に間接的に平和的解決を促す国際連合の活動をさす。具体的には、国連が小規模の軍隊を現地に派遣しておこなう。活動予算は国連の通常活動のための通常予算とは別に建てられ、基本的に国連加盟国の分担金で賄われる。分担金上位は、アメリカ、日本、イギリス、、と続く。外務省<平和構築>によると2014/2015年の予算は84億ドル台、日本の分担率は10.8330%で分担金額は7憶3,070万ドルとなっている。
一方、PKO軍事警察要員派遣国は上位から、1-バングラデシュ、2-ネパール、3-インド、4-ルワンダ、5-エチオピア、6-パキスタン、7-エジプト、8-インドネシア、9-ガーナ、10-中国と続く。(2021年9月末の国連報告)主要部隊の構成は発展途上国や派遣先周辺国が主となってくる。
2022年5月26日、国連本部でのPKO式典で国連事務総長は、「PKOが開始されてからこれまで、4,300人以上のPKO要員が国連旗のもとで犠牲になった」と、語った。
② MINURSOミヌルソ(国連西サハラ人民投票監視団)はPKOの一つ;
「国連PKOは,伝統的には,国連が紛争当事者の間に立って,停戦や軍の撤退の監視等を行うことにより事態の沈静化や紛争の再発防止を図り,紛争当事者による対話を通じた紛争解決を支援することを目的とした活動である、、」と、2015年9月9日付けの外務省<平和構築>に書かれてある。紛争が解決され、お役目ごめんになったPKOもある。
現在PKOが派遣されている紛争地域、安保理による名称、創設年を記すと、
1-アフリカ 国連アビエイ暫定治安部隊(UNISFA) 2011年-
南スーダン・国連南スーダン派遣団 (UNMISS) 2011
コンゴ民主共和国・国連コンゴ民主共和国ミッション (MONUC) 1999
西サハラ・国連西サハラ人民投票ミッション (MINURSO) 1991
マリ共和国・国連マリ多元統合安定化ミッション(MINUSMAU)2013 –
中央アフリカ・中央アフリカ国連多次元統合安定化ミッショ(MINUSCA)2014 –
2-アジア
インド/パキスタン・国連インド・パキスタン軍事監視団 (UNMOGIP) 1949
3-ヨーロッパ
コソボ・国連コソボ暫定行政ミッション (UNMIK) 1999 –
キプロス・国連キプロス平和維持軍 (UNFICYP) 1964 –
4-中東
レバノン・国連レバノン暫定駐留軍 (UNIFIL) 1978-
ゴラン高原・国連兵力引き離し監視軍 (UNDOF) 1974-
パレスチナ・国連休戦監視機構 (UNTSO) 1948
ウクライナ戦争に、国連はPKOを派遣していない。
西サハラのMINURSOミヌルソに、焦点を当ててみる。
MINURSOミヌルソ・ホームページによると、その役目は、1停戦の監視、2政治犯の釈放、3難民などの故郷帰還の支援、4人民投票の有権者の確定及び人民投票の実施、と、4項目がミヌルソ創設時の1991年に、命じられている。
が、その実態は、1-停戦監視せず、2-政治犯釈放せず、3-帰還支援せず、4-人民投票せず、、と、どれ一つまともに進行しているものはない。平均200人のPKO要員をモロッコ占領地・西サハラと解放区西サハラの夫々に5か所づつ展開させているが、1991年4月から2022年5月までの31年間何をしてきたか?、、筆者が何度かMINURSOミヌルソ基地を訪れて見た多国籍の要員の方々は、暇そうでした。畢竟、セクハラなどが話題になるのです。
③ 2022年アフリカのスローガンは栄養(失調)と食料(不足):
2022年5月26日、<アフリカの日>の翌日、栄養と食の安全というテーマ
で行われた<アフリカの言い分>特別会議に、国連事務総長も参加した。「2022年のAU(アフリカ連合)が、年度課題として<Nutrition栄養>を取り上げたのは大賛成だ」と、口火を切った。そして総長は、国連人道活動は長年未解決の<アフリカの飢餓>を支援し続けるが、「今こそ、ODAが必要とされる。全ての国が連帯感を示すように」と、資金の拠出を迫った。さらに総長はAU(アフリカ連合)特別サミットに、自分の代理としてマーテイン・グリフィス緊急対策担当官を派遣した。
アフリカ南部ボツワナで開催されたアフリカ祭りの物産展に、
伝統工芸品を展示する西サハラ難民、
5月25日から31日までのアフリカ週間と並行して、国連は<非自治地域の人民と連帯する一週間>と銘打ち、講演や集会が行っている。
5月27日と28日に赤道ギネアの首都マラボで開催された<AU(アフリカ連合)特別サミット>に、モロッコはブリタ外務大臣を送り、SADR西サハラ難民政府はブラヒム・ガリ大統領とサレク外務大臣とベイサット南ア大使とラミンAU大使などを派遣した。AU特別サミットでは、ウクライナ戦争で放置されたままになっている、アフリカでの人道援助や軍事紛争やテロなどが討議される。加えて、ますます深刻になってきた食料不足と飢餓の問題解決も討論される。アフリカ各地で、栄養失調児童が激増している。最近のNBCアメリカTVニュースに、飢餓の赤ん坊が登場した。アフリカの赤ん坊ではない、アメリカの赤ん坊だ。枯れ死寸前の赤ん坊を抱えた母親は、ミルクが手に入らないと、訴えた。すぐに、ヨーロッパ各地から粉ミルクが送られてきた。しかし、アフリカの赤ん坊たちには、ヨーロッパ産粉ミルクが送られてこない。生まれた場所は違っても、赤ん坊は赤ん坊だ。
「ウクライナは領土を割譲してでもロシアとの和平を追求すべきだ(要訳)」と、世界のオピニオンリーダーでユダヤ人の元米国務長官ヘンリー・キッシンジャー博士が、5月23日、スイス東部ダボスで開かれている世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)にオンラインで発言しました。
ウクライナ産小麦が倉庫に眠ったままだとか? ウクライナはロシアと相談して、虫がつく前に、アフリカの赤ん坊に贈る事を考えてみたらどうですか?
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2022年5月30日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion12077:220529〕