2022年6月24日、モロッコから国境フェンスを越えてスペインの飛び地領土メリリャ市に入ろうとしたアフリカ黒人移民に向け、モロッコ警備隊が催涙弾と鉄棒で虐殺しました。 国連は6月27日に死者約23人重傷者多数としていましたが、現地ニュースソースは死者37人を数えさらに増えると、伝えています。
同日の27日、アメリカ南部テキサス州サンアントニオ郊外で、トレーラーの中や近くから、メキシコから越境した不法移民とみられる約46人の死体が発見されました。
よりよい生活を求めて新しい土地を目指す移民は、昔から存在する自然な人の営みです。
アメリカなんて、イギリスの移民が開拓した国じゃなかったっけ?
① BBCニュースも伝えた<モロッコ国境警備隊の虐殺>:
メリリャとセウタという二つのスペイン都市は、モロッコ北部にある飛び地領で、北アフリカにあるヨーロッパだ。メリリャから約150キロメートルの海を渡れば、スペイン本土、ヨーロッパに着く。1500人から2000人のブラック・アフリカから来た若者たちは、メリリャが見えるモロッコ側の丘でキャンプを張って、国境越えのチャンスを狙っていた。
6月24日、約1000人の若者たちがモロッコ側のバラセンをよけるために棒を持ち、6メートルの国境フェンスに向った。しかし、フェンスの前で待ち構えていたモロッコ国境警備隊が催涙ガスと鉄棒で、若者たちに襲いかかってきた、それでも、133人がフェンス越えに成功した。モロッコは死者23人と報告したが、過剰警備には言及していない。
モロッコが虐殺したブラック・アフリカの若者たちは、6月27日に身元検証など全く無視して、生ゴミ同様の穴に埋められた。死者の数やその後の扱いなど、モロッコは一切明らかにせず、現場情報はAMDH(モロッコ人権団体)などが、モロッコ国内外のネットに流している。
モロッコ警備隊の銃と鉄棒を掻い潜ってフェンス越えに成功した133人の若者たちは、血まみれのままメリリャ市の移民一時収容センターに送られる。そこで寝泊まりしてスぺイン当局の審査を待つ。スーダンから来た若者たちは、「モロッコ兵は俺たちを打ちのめし、殺しまくる、、何の恨みがあるんだ?」、「このところ急にモロッコ兵が残虐になった。モロッコ人だって、たくさんヨーロッパに密入国してるじゃないか!」と、地元メデイア<エル・ディアリオ>などにモロッコ警備隊の残虐さを訴えた。
AMDHが、モロッコ警備隊に殺された死体は、3日後の6月27日にゴミ処理用に掘られた穴へ埋められたと、伝えた。犠牲者の身元は不明だ、、
虐殺したアフリカ移民をゴミのように集めて眺めるモロッコ国境警備隊
② モロッコは正しい、スペイン首相もモロッコよくやった?:
MAP(モロッコ国営通信)はメリリャ移民虐殺事件に関して、特別な政府声明を発表していない。が、代行する形で、有識者に<モロッコ移民政策の正しさ>を、外国ネット新聞に発表させている。
メキシコのネット新聞エンラコ・フリオにメキシコのモロッコ・ユダヤ協会会長モイセス・エルラツが、「モロッコの移民問題政策に基ずく人道的対応、、それは、2013年に発令された移民と亡命に関する国内用覚書のおかげで、二つの地中海沿岸で起きる移民問題に対して、モロッコは常に人道的に利口に立ち振る舞ってきた」と、モロッコの移民処理を称賛し、「先週の金曜日に起こったことは、両当事国にこだわらず、移民政策はグローバルな対応に委ねることが必須だ」と、虐殺事件の責任を回避している。
イタリアのアジョ・ノアス紙.に、「モロッコは移民と人身売買との闘いに、断固たる不動の姿勢を示した。かくして、具体的な行動と地域の保全対策におおいに貢献した」と、虐殺事件に触れず、「ムハンマド国王陛下御意向の下で、モロッコが合法的に社会常識に則って、移民を支援し統合する努力を続けている」と、モロッコの移民対応を正当化させている。
MAP(モロッコ国営通信)は事件直後に、「サンチェス・スペイン首相は、不法移民が悪い。モロッコの対応は正しいと、表明」と、モロッコに都合の良い報道をした。
スペインでは、モロッコ警備隊の虐殺に抗議して、積み重なった死体を真似たシット・イン・デモが行われた。サンチェス政権の一翼を担う<ウニダス・ポデモス党>のパブロ報道官は、「あまりにも不幸と物議をかもし出すモロッコの脅迫外交を、スペインは今一度検討しなければならない、、我々も仲間と共に、メリリャ虐殺の完全な真相究明を要求する。犠牲者たちが金髪で青い目だったら、ウクライナ戦争のように大騒ぎになるのだが、、」と、ツイートした。
エル・パイス日刊紙は社説で、「モロッコは国境問題をスペインとの政治取引に直接絡ませている」と、警告を発した。モロッコはスペインに、西サハラのモロッコ領有権を認めないなら、不法移民をけしかけてスペイン飛び地の越境をさせるぞと、脅かした。そしてモロッコは2021年5月、「ホレ見ろ!」と、見せしめの不法移民の越境劇を演じた。官製不法移民8,000人はモロッコ人が演じ、モロッコ警備隊はモロッコ側のフェンスを自ら開いた。恐れをなしたサンチェスは、2022年3月18日に、モロッコの地方自治州案を認め、西サハラを裏切った。以降、サンチェス首相はモロッコのやることなすこと全てに賛同している。
イヴァ・ヨハンセンEU(ヨーロッパ連合)域内問題担当官は「メリリャ悲劇の根は深い」と、EUの関与を明言した。
③ 移民虐殺に非難声明を出さない国連事務総長:
「ムーサ・ファキAU委員会議長が驚愕し、アフリカ移民虐殺に対し非常に強い怒りの声明を出した。犠牲者をあんたは23人としたが、40人以上というじゃないか?この重大事件に、国連事務総長の声明がないのはおかしい!」と、ハミード・パレスチナ人記者が6月27日の定例記者会見で質問した。国連事務総長報道官は、「UNHCR(国連高等弁務官)やIOM (国際移住機関)が、強い声明を出している。人命が失われた事件に、我々も勿論、心を痛めている。人々がより良い人生を求めるのは当たり前のことだ」と、モロッコ非難を避けて答えた。「スタファン・デ・ミストラが当該地やモロッコの視察を7月の初めのするそうだ。もしそうなら、新ラウンドテーブルを設置するつもりなのか?」フィリップ記者が聞いた。「今のところ、確実な情報はない。出てきたら報せる」と報道官が短く答えた。
6月28日、GMW (国連移民労働者委員会)が、移民虐殺を深く憂慮しているとの声明を出した。「我々は移民労働者に関する国際法に則って、厳しくこの虐殺人権侵害を検証していく」と、引き続き事件の全貌を解明していく決意を述べた。
6月29日、マイケル・キボイノ・ケニア国連代理大使が国連安保理の<移民虐殺>臨時会議の後、短い記者発表をし、AU(アフリカ連合)とアフリカ人民を代表して、厳しくこの<移民虐殺>を糾弾した。が、なぜか、虐殺犯人モロッコの名前を出さなかったし、質疑応答もさせてもらえなかった。国連事務総長もモロッコに脅かされているらしい?
6月30日、国連事務総長はモロッコ人をシリア副特使に起用し、モロッコに忖度した。
7月1日、ステファン国連事務総長報道官が、「西サハラ事務総長個人特使スタファン・デミストラは、これからの数日間、当該地を視察する計画だ。明日(7月2日)は、ラバトに入る、西サハラも訪問の予定だ。彼の前任者のガイドラインを尊重し、全関係者が参加する西サハラの政治的解決を目指す」と、発表した。「アルジェリアやモーリタニアには行かないのか?」と、フィリップ記者が質問した。「今のところ、これ以上は聞かされていない」と、ステファン報道官は詳細を明かさない。「あんたが、前任者のガイドラインに従うと言ったのは、彼が前任者が設定した<ラウンドテーブル>を企画しているということか?」とのフィリップ記者に、「対話の再開を目指す我々の意向に沿って、彼はその方策を模索しているのだと思う」と、ステファン報道官は問題を逸らせた。
6月27日、アルジェリアはおぞましい遺体の山の写真と共に、スペインとモロッコが引き起こした<アフリカ移民大虐殺>を強く非難しました。
6月30日、西サハラ難民政府も、<アフリカ移民大虐殺>の犯人モロッコの残虐さを糾弾しました。 と同時に、その残酷モロッコが占領支配しているモロッコ占領地・西サハラでの、西サハラ被占領民に対する非人道的行為を訴えました。
スタファン・デ・ミストラ西サハラ国連事務総長個人特使は視察第2弾で、モロッコと西サハラを予定にしています。 モロッコ指定の西サハラコースだけでなく、ぜひ、西サハラ被占領民の居留地も訪問してください。
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2022年7月4日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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