スタファン・デ・ミストラ国連事務総長西サハラ個人特使が、西サハラ第2弾視察を目前にして、「前任者たちを踏襲したい」と表明したそうです。 しかし、特使がモロッコ占領地・西サハラに入ろうとしたら、モロッコが又、妨害!
一方、15年間いがみ合っていたパレスチナの2大勢力が、アルジェリア大統領の仲介で握手をしました!!
① 7月1日のステファン国連事務総長報道官:
ステファン国連事務総長報道官とスタファン国連事務総長個人特使は同名だ。前者はフランス人で後者はイタリア・スウェーデン人、ご先祖は同じかも?
2022年7月1日金曜日、ステファン国連事務総長報道官が、「我々の友人スタファン・デ・ミストラ国連事務総長西サハラ個人特使が明日土曜日に、モロッコの首都ラバトに入る。そこで特使はモロッコ高官と会い、西サハラを視察する予定だ。彼は、前任者たちを踏襲する意向を示している」と、明るい報告をした。西サハラ交渉再開を匂わせる、良い雰囲気だった。フランス系通信社のフィリップ記者が、「アルジェリアやモーリタニアには行かないのか?前任者の踏襲ということは、ラウンドテーブルを企画しているのか?」と聞いた。「彼の視察は、私が話したこと以上でも以下でもない」と、報道官は答えた。
1991年に「国連西サハラ人民投票で西サハラ独立かモロッコ帰属かを決める」という国連の和平提案を呑んで、モロッコ軍とポリサリオ・西サハラ難民軍は停戦した。その時以来、<国連西サハラ人民投票>を実現させようと、3人の国連事務総長個人特使が努力した。その3人とは;
1-ジェームス・ベーカー(任期1997~2004)元アメリカ国務長官はジョン・ボルトン元アメリカ大統領特別補佐官を補佐にして、西サハラ難民を含む西サハラ人民の選挙人認定作業を行い、1999年には西サハラ人民投票の実施が大いに期待されていた。が、モロッコの反対で中断した。
2-クリストファー・ロス(任期2009~2016)元アメリカ中東地域外交官は、モロッコの執拗な妨害にも屈せず、当時の国連事務総長潘基文を西サハラ・ポリサリオ解放区や西サハラ難民キャンプに案内した。「人民投票の可能性があるのなら、アメリカ政府の強い後押しが必要」と、デ・ミストラに助言している。
3-ホルスト・ケーラー(2017~2019中退) 元ドイツ大統領は、2度、両当事者とアルジェリアとモーリタニアのオブザーバー国を加え、スイスのジュネーブで会談をやったが、突然、辞任を電話で事務総長に告げた。真相は不明。
一体、スタファン・デ・ミストラ新国連西サハラ個人特使は、旧御三家の何を踏襲したいのだろうか??
② 7月5日のステファン国連事務総長報道官:
ところが7月5日、ステファン報道官が、「スタファン特使は今日火曜日にラバトで、モロッコ外務大臣と西サハラ政治解決に向け、非常に有意義な会談を行った。彼は当該地をさらに視察するつもりだ」と、トーンダウンさせた。
フランス系通信社のフィリップ記者が、「彼が西サハラに行けないということは、自由に動けないということか?彼は特使を辞任することになるのか?」と、質問した。ステファン報道官は、「彼は自由に行動できる。。視察の日程や場所は全て彼が決める。彼は任務を離れない」と、ステファン報道官が答えた。
セリ―ル記者が、「あんたの出した声明文に関して、ポリサリオ・西サハラ難民軍が国連の説明を求めている。引用するね、ちょっと失礼(と、スマホの記事を読む)ポリサリオは国連に、もっと透明性のある対応をして欲しいし、特使が何故視察できないのか理由を聞かせて欲しいと要求しているが、、今回の特使の視察にアルジェリアもポリサリオも協力的でなくなったとは本当か?」と、問い質した。ステファン報道官は、「日程の確定したツアーだとは、彼も、我々も、言ってない。個人特使は、時がきたら他の地域に足を運ぶと言っている。ポリサリオには質問する権利があるが、直接、デ・ミストラの事務所に連絡することを勧めたい。私を必要とすることはない、、」と、突っぱねた。
7月5日は、アルジェリアの独立記念日だった。テブン・アルジェリア大統領もラルビ・カティ駐日アルジェリア大使も式典演説の中で、「アルジェリアはパレスチナと西サハラの独立運動を支援し続ける」と、明言した。
③ アルジェリアで15年ぶりに握手したパレスチナの自治政府とハマス:
アルジェリアの首都アルジェで行われた第60回アルジェリア独立記念式典の最大収穫は、パレスチナの和解だった。ジョンソン辞任で忙しいBBC英国TVが急遽、独立記念式典を取り上げたのは、内紛のパレスチナに和解の兆しが見えたからだ。式典に参加した首脳は、パレスチナ大統領、エチオピア大統領、ニジェール大統領、チュニジア大統領、コンゴ大統領、そして西サハラ難民大統領などだが、BBC英国TVは全く興味を示さなかった。BBCはアルジェリアTVの報道を引用して、アルジェリア大統領が取り持った、アッバス・パレスチナ自治政府大統領とハニーヤ・ハマース指導者の15年ぶりの握手を大きく報道した。アルジェリアはパレスチナ大義の変わらぬ支持者だ。
アルジェリアで握手をする、左から2番目にアッバス・パレスチナ暫定自治政府大統領、
3番目にテブン・アルジェリア大統領、4番目にハニーヤ・ハマース指導者
イスラエルはアッバスを交渉相手としているが、ハマースをテロリスト組織とレッテルを貼り、ハマースの拠点ガザを事ある毎に無差別攻撃する。その指導者イスマイル・ハニーヤはまさにテロリストのお尋ね者で、どうやってイスラエル海外諜報機関モサドをはぐらかしてパレスチナを出、アルジェリアに辿り着いたのか?今時の大冒険旅行だ。
ハニーヤは1963年1月29日、ガザのパレスチナ難民ビーチ(海岸)キャンプで生まれ育った。ビーチキャンプの入り口には大きなため池(糞溜)があり、メタンガスの匂いがキャンプを包んでいた。ハニーヤはハマースの指導者となり、2006年1月25日のパレスチナ立法評議会選挙でハマースが大勝を収め、同年3月29日にパレスチナ首相に就任した。が、2007年6月14日にアッバス大統領はハニーヤ首相を解任し、ハマースを排除したファタハ主導の政権を樹立した。が、ハニーヤは解任を拒否した。そして、ハニーヤ内閣こそパレスチナの選挙で選ばれた正当政府であると主張した。以降15年、アッバス大統領とハニーヤ首相の交流はなかった。
アッバス・パレスチナ暫定自治政府大統領は、行政都市ラマッラにある通りを<アルジェリア>と命名し、それを表示した新しい地図をテブン・アルジェリア大統領に贈った。
バイデン・アメリカ大統領は7月13日から16日にかけてイスラエルや中東を歴訪する。アメリカはイスラエルに言われるまま、ハマースをテロリスト組織と決めつけているが、イスラム主義を掲げるパレスチナの政党だ。アメリカが本気で中東和平に貢献したいのなら、ハマースも交渉相手にいれるべきだ。
なんてったって、パレスチナ人民に一番人気があるのは、<ハマース>なんだから、、
スタファン西サハラ国連事務総長個人特使がモロッコの術策にはまって足踏みをしている一方で、内紛状態にあったパレスチナ2大勢力の指導者、ハマスのハニーヤとファタハのアッバスが握手をしました。 パレスチナは変わります。
7月7日、ジョンソン英首相が辞任を表明しました。ウクライナは変わります。
7月8日、、安部元総理大臣が手製の銃で撃たれ、逝去されました。
そして、7月10日から大相撲名古屋場所が始まります。 日本は変わりません。
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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