2022年9月30日、ロシアのプーチン大統領がクレムリンで、ウクライナの4州をロシアに併合すると宣言しました。 国連安保理ではロシア併合に対する非難決議が採択されましたが、ロシアの拒否権で否決されました。 拒否権は英米中露仏の5常任理事国だけがが持つ特権で、そのうち一か国の反対票で提案はパーになります。 ロシアの拒否権を非難するバイデン・アメリカ大統領は、イスラエル非難決議の全てにアメリカが拒否権を乱発してきたことを、お忘れのようです。
① ラビド・イスラエル首相 VS マフムード・アッバースPLO議長:
「イスラエルは平和を目指す豊かな国だ、、テロは排除する、、イランの核武装を阻止する、、個人的にはパレスチナとの2国家共存を支持する。我々にはアメリカがついている!
戦火か?繁栄か?パレスチナは選択しろ!!」と、11月総選挙までの臨時イスラエル首相・ラビドは9月22日の<国連総会一般討論演説>で、パレスチナに武装放棄を迫った。
ラピド首相は、「数か月前、アメリカ、モロッコ、エジプト、UAE、バハレーン、イスラエルの6か国外相ネゲブ・サミットを成功させた、、トラス英国新首相には、テルアビブから首都エルサレムへの英国大使館移転を約束させた」と、自慢した。エルサレムは国連管轄下にあり、イスラエルが勝手に首都とすることは、国際法違反だ。
翌9月23日、マフムード・アッバースPLO議長が国連総会一般討論の演壇に上った。
「イスラエルは二国家解決への取り組みを意図的に妨害しており、もはや和平プロセスにおける信頼できるパートナーではない、、イスラエルは絶対に責任を問われない特権(アメリカの拒否権)に守られて、ガザ地区とヨルダン川西岸地区の人々に爆撃を続けている」、「国連はイスラエル非難決議を1947年から、国連安保理で97回、国連総会で750回、国連人権委員会で96回、出してきた。しかし、一度たりとも、決まったことはない。それは、超大国による拒否権が妨害してきたからだ」と、アッバース議長は強調した。
そして、「我々パレスチナ人は、誰もがPLOの傘下にある。そのPLOの議長として、パレスチナ人民を代表し2国家共存を支持する国連に、パレスチナ国家承認を、今、この場で求める。2国家を平等に扱うべきだ」と、要求した。
アッバースPLO議長は指に唾をつけて原稿をめくりながら、「整地エルサレムはパレスチナの首都だ。イギリス大使館を勝手にテルアビブからエルサレムへ移転させるのは、国際法や国連決議に違反する」と、批難した。そして、「バルフォア宣言に始まったパレスチナ人の受難は、英国と米国とイスラエルの所為だ」と糾弾した。バルフォア宣言とは、1917年、当時のバルフォア英国外相が既にアラブ人の国家承認をしていたにも関わらず、ユダヤ人にパレスチナの地で国家建設することを認めた宣言を指す。英国の二枚舌外交だ。
「国連は二枚舌を止めろ!和平交渉の中断は国連の責任だ」と、アッバースPLO議長が見上げたひな壇には、国連事務総長も国連総会議長もいなかった。
② 小さい声(岸田総理演説から引用)がたくさん上がった国連総会一般討論会:
9月22日から24日にかけて、岸田総理が言う<小さな国?>の指導者たちが、大きな怒りの声を上げた。
シリア、リビア、イエメン、レバノン、キューバ、ニカラグア、べネズエラ、(順不同)
どこも、アメリカ制裁の犠牲国で、同じくアメリカ制裁に泣かされているロシア、中国、イランなどに同情している。そして、アメリカ制裁の解除を要求し、国連に対してアメリカの独断的制裁を制裁するよう、要請している。レバノン首相のアラビア語演説には、同時通訳もやらない。国連<グッドオフィス>はアメリカに逆らう国に。サービスしない。
ファイサル・アルミクダード・シリア外務大臣は、「2011年のイスラエルとアメリカが指導するテロリストグループによる侵攻がある前のシリアは、この地域で安定した先進国だった。アメリカは反政府グループを煽り、軍事制裁に加えて厳しい経済制裁をシリアに科した。シリアは半壊した。欧米のシリアにたいする経済制裁は今も続いている。欧米の暴力団 は<一極制覇>を振りかざし、<欧米の言うことを聞かない国は破壊する>と脅かす。まさに新植民地主義だ」と、欧米の出先機関となった国連の中立性と正当性を疑った。
2011年にNATOの空爆で国土を破壊され、指導者カダフィーを当時のアメリカ国務長官の命令で惨殺されたリビアでは、今も内乱が続いている。リビアは欧米の言うことを聞き核所有を諦めたにもかかわらず、リビア原油の支配を狙う欧米はリビアの体制を破壊した。リビアでは国連が約束した大統領選挙を未だに実施しないため、国連の演説にはリビア人のモハンマド・ユーニス・大統領選出委員会委員長が代行した。ユーニス委員長は、「リビアの水と原油はリビア人の希望だ。我らが祖先・オマル・ムフタールの反植民地闘争魂は、今もリビア人の胸中で脈打っている。我々リビア人は、必ずや国を再統一して見せる」と、語った。そして、「我々は、パレスチナを支援する」 と、断言し書類入れの蓋を音を立てて閉じ、足早に去った。故カダフィの演説を彷彿させた。
べネズエラのマドゥーロ大統領は、カルロス・ラファエル外務大臣をべネズエラの国連投票権を剥奪した国連総会に送り込んだ。カルロス外務大臣は、「世界統一を目指すアメリカは、アメリカになびかない国に難癖をつけ、フェイクニュースと経済制裁と軍事制裁の脅しで覆そうとする。べネズエラは豊かな原油のお陰で、トランプ前大統領に狙われ、傀儡大統領をベネズエラに据えようとした。バイデン現大統領もべネズエラの原油を狙って、経済制裁を緩めない」と、アメリカ覇権主義を批難した。「べネズエラがアメリカを、国際法に反する他国の転覆工作で安保理に審議を請求しても、アメリカは拒否権を使って葬りさるだろう」とも語った。
そして、「べネズエラは、世界の民、ロンドン、ニューヨーク、北京、モスクワ,テへラン、ハバナ、マナグア、ダマスカス、ラマッラ、ケープタウン、の友人に連帯の声を贈る!」と、壇を降りた。外務大臣の後ろ姿に大きな拍手と歓声が送られた。彼も振り向いて拳を上げ、答えた。
③ 2022年11月1日と2日のアルジェ・アラブ首脳会議はパレスチナの希望;
9月28日、国連定例記者会見でステファン事務総長個人報道官が、「9月26日、事務総長はラマムラ・アルジェリア外務大臣との会談で、アラブ首脳会議への招待状を受け取り、受諾した」と、表明した。アラブ系記者の一人が「事務総長は、特定の誰かと2者会談を予定しているのか?」と聞いた。報道官は、「いいえ、、通常の地域サミットと同じだ。開会式で挨拶し、それからこの機会を利用して、様々な指導者たちと会談を重ねる。AU(アフリカ連合)、アラブ連盟、ASEANなどのトップが参加する予定だ」と、答えた。
テブン・アルジェリア大統領は、これまでに北アフリカ諸国(エジプト、リビア、チュニジア、モーリタニア、、)や、湾岸諸国(カタール、サウジアラビア、UAEアラブ首長国連邦、イエメン、オマーン、カタール、クウェート)やジブチ、ソマリア、スーダン、さらには、イラク、シリア、レバノン、パレスチナ、、と、国連グッドオフィスがぶったまげる大規模な会議を計画している。
左に故アラファト議長、右にテブン・アルジェリア大統領の写真を背にした
駐アルジェリア・パレスチナ大使、アラブ首脳会議に期待を寄せている
そして、MAPモロッコ国営通信も9月27日、「ムハンマド六世モロッコ国王陛下~神のご加護が陛下にありますよう~の最高機関によると、ブリタ・モロッコ外務大臣がアブデル・ラシード・アルジェリア司法大臣からテブン・アルジェリア大統領のアルジェ・アラブ首脳会議招待状を受け取ったとのことだ」と、発表した。
この機に、アルジェリアは西サハラも招待し、国連事務総長の仲介で「両当事者交渉」を再開するつもりはないのだろうか?
国連安保理の拒否権は、5常任理事国のもので、残り国連加盟国193―5=188の国にはありません。 勿論、日本にもありません。 常任理事国は、自国にとって不利な案件が出てきたら、この拒否権で排除します。 <ミーファースト>が仕切る国連安保理は、排他的で不平等な組織です。
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2022年10月2日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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