SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】522 権力に対抗する武器はデモ?スト?ハンスト?

 世界中で、普通の人々が、権力に対抗して声を上げています。 イスラエル強権政府に対して、パレスチナの人々は声を上げっぱなしですが、それに輪唱して、イスラエルの人々までもが反政府の声を上げました。 そして、あの強硬派ネタニヤフ首相を退却させました。 

① イスラエル人の意志表示:
 イスラエルのエルサレムやテルアビブで、ネタニヤフ首相の司法制度改革に反対して、約63万人以上が参加する大規模デモが広がった。 イスラエルの人々は、「ネタニヤフ首相が進める司法制度改革は、政府に権限が集中して三権分立を脅かす」と、反発してきた。ヨアヴ・ガラント国防相は国内の対立悪化を懸念し、この改革案を推進させる国会審議の中断を求めていた。しかし、ネタニヤフ首相は26日、ガラント氏を解任した。エルサレムではその後、ネタニヤフ首相宅の周りにデモ隊が集まり、政府に抗議。警察や兵士はデモ隊に放水車を使った。最大労組・イスラエル労働総同盟のアルノン・バル=ダヴィド議長は政府に抗議して、27日の朝からゼネストを呼びかけた。空港作業員の組合がいち早くこれに呼応し、テルアヴィヴのベン・グリオン空港からのフライト出発が直ちに中止された。さらにその後、銀行や店舗が営業を中断し、病院の診療にも影響を及ぼした。国内各地で、数万人規模の抗議やストライキが相次いで勃発した。
 そして27日夜、ネタニヤフ首相は、司法に対する政府権限強化を目指す法案の議会審議を「いったん停止する」と発表した。第一ラウンドは、イスラエルの人々が勝った! しかし、ネタニヤフはまた、挑戦するつもりだ。その証拠に、司法改革計画から手を引くよう命じたバイデン米大統領のコメントに怒ったネタニヤフ首相は、「イスラエルは海外からの圧力に基づくものではない。独自の決定を下す」とツイートした。
 因みに、イスラエルには憲法がない。パレスチナの人々を銃で追い出して建国した1948年当初は、憲法制定を目指した。が、イスラエルという国をだれのための国にするかという基本事項について、<ユダヤ人のための国>とすることに、もともと住んでいたパレスチナの人々や国際社会から強く反発し、結局今日まで憲法なしの<なし崩しユダヤ人国家>がまかり通ってきた。
 <非成典化憲法国(憲法のない国)>には、イギリス、ニュージーランド、サウジアラビア、オマーン、リビア、サンマリノ、ブータン、バチカンそしてイスラエルと、9か国がある。
 SADR(サハラウィ・アラブ民主共和国)には、憲法がある。
 そして、日本にも世界に誇れる平和憲法がある。

② 世界の人々の意志表示:
 ドイツでは、3月27日、ドイツの運輸部門で、1992 年以来、同国史上最大のストライキが勃発した。ベルリン空港を除いて、ハンブルグ、ドレスデン、デュッセルドルフ、ライプツィヒ、ミュンヘン、ニュルンベルク、フランクフルト・アム・マインの空港は、大部分のフライトをキャンセルした。ドイツ鉄道は、長距離列車の大部分をキャンセル。ドイツの 16 州のうち 7 州、特にバーデン ヴュルテンベルク州、バイエルン州、ヘッセン州、ニーダー ザクセン州、ラインラント パラティナーテ州、ザクセン州、ノルトライン ヴェストファーレン州で運輸部門を完全に停止した。ストライキは3月28日に終了すると発表されたが、、「状況は緊迫したままになる可能性がある」とも噂されている。
 デモの原因は、歴史的な物価高で実質所得が大きく減るなど家計が圧迫され、大幅な賃上げを求める声が高まったことにある。 
 フランスでは、3月28日、フランス全土で年金改革に反対する74万人の抗議活動が勃発し、エッフェル塔、ベルサイユ宮殿などは休業した。29日、フランス憲法院は「年金改革法案が合憲であるかを巡り、 4 月 14 日に判断を下す」と、発表した。
 メキシコでは、3月27日、シウダー フアレスの移民手続きセンターで収容されていた中南米の人々が強制送還に抗議をしていた。その夜、火災が発生し制服を着た役人は、炎が上がった瞬間に逃げ、鍵のかかった独房のような場所に男性たちを置き去りにした。.男性たちは、鍵を壊そうとしたが、あっという間に煙に巻かれてしまった。少なくとも39人が殺された!セキュリテイー・カメラが撮った火炎地獄の動画がSNSに流れ、新たな怒りの抗議デモが収容所の内外で沸き起こった!!
 
③ 西サハラ政治囚の意志表示:
 故郷西サハラを銃で追われた西サハラの人々は、アルジェリアの砂漠にテントを張り難民亡命政府を創った。以来46年間、国連憲章と国連決議と国際裁判所判定を拠所に、脱植民地化と祖国独立を目指し、植民地支配国モロッコと闘い、国連と国際社会にモロッコ占領政策の残虐さを訴えてきた。
 1991年、国連は<国連西サハラ人民投票>という和平案を提案し、モロッコ軍とポリサリオ西サハラ難民軍の両当事者は停戦合意をした。が、いつまでたっても国連は人民投票を施行せず、2020年、モロッコは停戦合意を破り国連緩衝地帯に軍事進攻した。
 再び、ポリサリオ西サハラ難民軍は銃を取り、その一方でモロッコ占領当局の不法性と残虐性を世界に訴え続けた。西サハラの人々の執念が功を奏し、2022年度のEU欧州連合や米国の報告書が、モロッコの非人道性を糾弾した。やっと、国連安保理も動き出した。
 2023年3月28日、「デ・ミストラ国連事務総長個人特使は今週(3月27日~)から、国連本部で両当事者やアルジェリア、モーリタニア、西サハラ友好グループのメンバー(フランス、ロシア連邦、スペイン、英国、米国)などと、4月安保理隔年報告に向けて非公式の二国間協議を行っている」と報道官が発表した。
 西サハラ難民政府が細々と成果を上げる中、モロッコ監獄に収監されている西サハラ政治囚たちも、唯一の闘争手段であるハンガーストライキで、西サハラ人の正当な権利を訴えている。
 西サハラ政治囚アル・フセイン・アル・バシル・アマムドゥールは、ハンガーストライキの 33 日目にモロッコのアイト・ムルル地方刑務所からサフィにあるアル・ブルキ・モールの中央刑務所へ強制移送された。2023 年 3 月 24 日、ハンガー ストライキ中の兄に面会を許された妹のサキナは、「兄は別人のようにやせ細って弱々しく、とぎれとぎれに、このハンストを強制中断させられても、また挑戦する、、と、話した。そして、腎不全に苦しむ母の病状を心配していた」と、報告した。
 もう一人の西サハラ政治囚アブデルムーラ・エル・ハフィジの家族は、モロッコのアイト・メルルの地方刑務所から移送されたという報告を、2023 年 3 月 22 日にモロッコ占領当局から受け取った。 3月25日になって、「アブデルムーラ政治囚は移送された刑務所で、16 日間続けたハンガー ストライキを強制中断させられた」という噂が入ってきたが、モロッコ占領当局に家族が問い合わせても無回答で、行方不明にされたままだ。
 西サハラ難民キャンプにある<政治囚とその家族を助ける会>は、国連を始めとする世界の人権団体に、二人の若い西サハラ政治囚の即時釈放と緊急調査を依頼した。
 

獄中ハンガーストライキで闘う西サハラ政治囚のアブデルムーラとアルフセイン

 
 3月29日、ニューヨーク国連本部でシディ・オマル西サハラ国連代表が、スタファン・デ・ミストラ西サハラ国連事務総長個人特使と非公式の二者協議を行いました。 オマル代表は、「西サハラの脱植民地化の問題に対する平和的、公正かつ永続的な解決の作業を再開するにあたって、なによりもまず、西サハラの人々の民族自決権と独立を目指す権利を再認識しなければならない」と、強く要求しました。
 協議では、国連が支援する西サハラ和平プロセスの現実と未来像が検討されました。 一日も早く、4年近く放置されたままの両当事者交渉を再開してください!
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861

同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。

――――――――――――――――――――

Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU

Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa]  英語版URL:   https://youtu.be/au5p6mxvheo

WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十  2023年4月1日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
〔opinion12942:230401〕