「オマル・アル・バシール元スーダン大統領が、スーダンの首都ハルツームの刑務所から脱獄!」と、スーダンのメデイアが2023年4月25日に、一斉に、伝えました。
バシール元大統領は、1989年に軍事クーデターで政権を取り2019年に軍事クーデターで政権を取られるまで、約30年間、スーダンに君臨していた軍人です。
2019年、ブルハンとダガロが指揮するクーデターで収監されたバシール元大統領
① スーダンの首都ハルツームのコぺル刑務所襲撃:
SAFスーダン国軍とRSF準軍事組織による戦闘の真っただ中、スーダンの首都ハルツームの北にあるコベル刑務所が襲撃された。混乱に乗じて、オマル・アル・バシール元大統領を含む多数の囚人が、コベル刑務所から脱出した。
囚人の一人、元閣僚でスーダン与党・国民会議党の党首だったアフマド・ハルーンが、25日にSNSの音声メッセージで、「ハルツームの刑務所が23日に混乱状態に陥り、自身と元高官多数が同刑務所を離れた」と、語った。 警察関係者がCNN米TVに、「食料や水が不足して受刑者がこの刑務所の敷地内で車2台を燃やす暴動を起こし、当局が受刑者を解放した」と、明かした。受刑者による脱獄ではないそうだ。
ある情報筋がアル・ハダスTVに、「元スーダン大統領オマル・アル・バシールと彼の腹心バクリ・ハッサン・サレハ、元国防相アブドゥル・ラヒム・モハメド・フセイン、人民会議の指導者、アリ・アル・ハッジ、イブラヒム・アル・セヌッシなどが、医療兵器病院にいることを確認した」と、報じた。ただし、首都ハルツームでは多数の病院が開店休業状態で、いくつかの病院は軍が基地にしていて詳細はつかめない。コベル刑務所では、アル・バシールと15人の軍隊将校、8人の民間人が、1989年6月30日のクーデターに参加し憲法秩序を弱体化させた罪で服役中だった。
4月26日の国連定例記者会見で、「プーチン大統領のようにICC国際刑事裁判所から逮捕状が出ていた、バシール元スーダン大統領の消息は?」と、質問が出た。ファルハン副報道官は、「私たちの懸念は、スーダン国軍とRSF準軍事組織の間の全体的な緊張と全体的な戦闘についてだ」と、バシール元スーダン大統領の運命には興味を示さなかった。
副報道官ファルハンは「アフリカ連合、アラブ連盟、欧州連合、政府間開発機構(IGAD)などの地域パートナーと協力して避難作業を継続中、、事務総長は過去数日間、アブデルファッタ・アル・ブルハン将軍とモハメドハムダン・ダガロ将軍の両方と話し合っており、ハイレベルの連絡を継続中だが、…現場の状況からわかるように、戦闘が衰えない、、」と、スーダンの首都ハルツーム戦況を報告している。ウクライナ戦争と同様に、事務総長は停戦和平に逃げ腰だ。
② バシール元スーダン大統領:
1989年9月1日、故カダフィ大佐はリビアで開催された<アフリカ統一機構(AUアフリカ連合の前身)>大会に、クーデター成功直後のバシール・ス―ダン大統領を招待した。千夜一夜の盗賊を連想させる迫力のバシールに、故カダフィ大佐も圧倒されていた。
バシールは1944年1月1日、スーダン・ナイル川州で生まれた。1989年にクーデターで政権を掌握すると、全ての政党や労働組合などを禁止し、報道を抑圧し、議会を解散させた。救国革命指導評議会を設けると、自ら元首、首相、軍司令官、防衛相を兼務した。
湾岸戦争の際に米軍への基地貸与に反対してサウジを追放されたビンラディンをスーダンは匿うことになり、1996年までビンラデインはスーダンで事業を経営していた。他にもサンチェスやアブニダルなど多数の活動家が当時スーダンに居を構えていて、アメリカは1993年にスーダンをテロ支援国家に指定した。
2003年からスーダン西部ダルフールで、スーダン政府軍とアラブ系住民による非アラブ系住民への集団虐殺が始まり、2008年頃まで続いた。600万の人口のうちおよそ45万人が殺害されたり餓死したとされ、200万人が難民となった 2009年、オランダ・ハーグにあるICC国際刑事裁判所 はバシールを、ダルフールにおける人道に対する罪、ジェノサイド罪で起訴し、逮捕状を発行した。バシールは逮捕状発行後、エリトリアとエジプトとリビアを訪問し、アフリカ連合の議長だったカダフィ大佐から支援を取り付けた。その後バシールはカタールで開催された第2回南米・アラブ諸国首脳会議に出席した。バシールの要請を受けたアラブ連盟とアフリカ連合は、常任理事国の中国とロシアの後押しを受けて、米英仏などに国際刑事裁判所によるバシールの逮捕決定を保留する権利を行使するよう訴えた。
2019年4月11日、バシール大統領(当時)はスーダン国防軍や治安機関から出された辞職勧告を受諾し、国防軍によって身柄を拘束された。現在、戦闘を続けるブルハン、ダガロ両氏も、2019年には民主勢力と組んでクーデータを主導し、バシール元スーダン大統領の打倒に貢献した。
暫定政権下の司法当局は同年5月13日、前年からの抗議デモ参加者の殺害への関与・扇動容疑でバシールを訴追し収監したことを明らかにした。ただし、暫定政権は国際刑事裁判所への引き渡しは拒否している。
UAEとサウジアラビアはスーダンでの衝突の余波がより広い地域に及ぶことを懸念し、スーダンに事態の鎮静化を求めている。それでも、外国勢力はこの紛争への介入を既に始めている。
③ 北スーダン難民が流れ込む南スーダン:
4月26日、国連定例記者会見でファルハン副報道官が、「スーダンの戦闘は続き、国連は中央アフリカ共和国、チャド、エジプト、エチオピア、南スーダンなど、地域全体の国々への難民の流入に備えている。UNHCR(国連難民高等弁務官)事務所は、約27万人が南スーダンとチャドに単独で逃げることができると推定した」と、報じた。
鉱物資源が潜在する南スーダンは、2011年7月9日にアメリカなどの支援でスーダンから独立を勝ち取った、アフリカで一番新しい独立国だ。RASD西サハラ民主共和国は真っ先に南スーダンを国家承認し、南スーダンもRASD を国家承認している。
独立当初に南スーダンで井戸掘りに汗を流していた石川雄史氏は、南スーダンの状況を的確に描写している。
「2011年7月9日、独立国南スーダンには重要な諸問題が存在し続けています。北スーダンからの独立に絡む南北の対立とは別に、部族紛争の問題があります。南スーダンには、多くの部族が存在します。それぞれの部族には自分たちの部族語があり、文化も異なります。ある特定の部族間の遺恨は非常に根深いもので、毎年のように彼らの重要な財産である牛の奪い合いが起こり、それは時に殺し合いにも発展します。この文章を書いているたった今でも、私が今働いているジョングレイ州で部族間の抗争が起きており、数百人が亡くなっているというニュースが入ってきています。
そして、水や食糧の不足に苦しむ人々がいます。首都となる予定のジュバには、最近地方から猛烈な勢いで人が流入してきています。人口もここ数年で倍増したそうで、町はかなりの勢いで発展し続けています。しかし一方、地方に行けばまだまだ人々は、基本的なモノ、つまり食糧や水さえも事欠くような状態です。私は活動を通じ、地方の村々で泥水を飲んで暮らさざるを得ない状況の人達とたくさん出会いました。雨季と乾季がはっきりと分かれるジョングレイ州では、乾季には水が無くなり川も干上がる程で、水不足は顕著です。水だけでなく食糧不足が深刻な村も多く、国連機関が配給する食糧に頼っている人々も大勢います。水や食糧という基本的なニーズさえ、外国からの援助に頼っている状態なのです、、」(2011年7月8日付け日刊べリタ)
石川氏の語る南スーダンは今も変わらない。そんな怨念の地へ、北スーダン(スーダン)の難民や避難民を国連は送り込む予定だ、
4月26日に、「UNMISS(国連南スーダン・ミッション) は、ダルフールから南スーダンへの国連職員と援助要員の空路避難を成功させた。17人の避難者は本日、無事にジュバに到着」と発表しました。
南スーダンは今も、UNMISS(国連南スーダン・ミッション)・PKOやUNHCR(国連難民高等弁務官)の援助を必要としている国なのです、、自国の難民や避難民はどうなるのでしょうね?
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2023年4月28日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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