SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】539 自称中東ナンバーワン民主国家のイスラエル民主主義?

 イスラエルのネタニヤフ首相は、反対する国民や野党の声を全く無視して、法改正案を強行採決しました。 中東ナンバーワン民主主義国家という仮面が、剥がれました。
 人々はネタニヤフ首相に反対の意思表示をし、抗議デモ・テントを張り続けています。 見事なイスラエル・テント村は、2002年にモロッコ占領地・西サハラで西サハラ被占領民が張った、約3000棟の西サハラ・テント村を連想させます。

① バイデンの停止も聞かず単独暴走するネタニヤフ・イスラエル首相:
 イスラエル市民が数週間にわたり、10万人から20万人の<法案改正反対デモ>を繰り広げてきた。にも拘わらず、何としてでも法案を通したいネタニヤフ・イスラエル首相は、7月23日の日曜日に心臓ペースメーカーが埋め込んで、7月24日月曜日のクネセト(イスラエル国会)に登庁し、<合理性の理由を廃止>する法案を通した。クネセトの外では市民や労働組合や軍人が、クネセトの中では議員や職員が、イスラエル国旗を振り怒号を上げた。警備員は暴動を恐れてクネセト入場者を関係者のみに絞り、異例の採決が行われた。
 ネタニヤフが提出している法案には、<合理性の理由を廃止>、<保護法>、<電子手錠法>など多々あるが、とりわけネタニヤフは、<合理性の理由の廃止>に固執している。
 <合理性の理由を廃止>とは、政府の決定について、最高裁が<合理性>を理由に無効とする権限をなくす法案を指す。つまり、この法案が通ると、司法は立法に<ノー>と言えなくなる。イスラエルは民主主義の根幹でもある<三権分立>を崩そうとしているのだ。
 

イスラエルで燃え広がる反ネタニヤフ強行採決デモ

 
 イスラエル日刊紙Yediothが、「<合理性の理由>を廃止する法律は、ヤリブ・レビン法務大臣が実施したい司法制度改正の一例に過ぎない」と説明した。さらに、同紙は、「ネタニヤフ首相は、7月30日までクネセトを開き、その後休会し、次の会期では、裁判官の拒否権の使用を防ぎ、裁判官選出のための委員会の構成を修正することにある。合意による法案可決を目指しているが、合意に至らなければ、ネタニヤフ政権は一方的な立法を通じて司法制度の変更実施を強行し続けるようだ」と、警告している。
 イスラエルのウェブサイト24は、「政府の決定を強化し最高裁判所の権限を縮小する法案の可決で、民主主義の根幹である三権分立は崩壊する。イスラエル軍内では、法案反対を表明した1,194人の空軍要員に加えて、約10,000人の予備軍も、法律が完了した場合には兵役に戻らないと意思表示した」と、伝えている。
 バイデン米大統領はヘルツォグ・イスラエル大統領をアメリカに呼んで、強行採決に関して意見をした。が、ネタニヤフは暴走し続けた。
 なぜ、ネタニヤフは<司法の権限を削ぐ法案>の強行採決を急いだのか?
 それは、彼自身が2019年に収賄や背任の罪で起訴され、その公判がまもなく始まるからだ。自分のために司法権を骨抜きにしたかったのだ、、つまり、私利私欲のために、ネタニヤフは中東一と自称している民主主義を潰そうとしている。
 イスラエルの民主主義なんて、その程度のものなんです、、

② イスラエルとモロッコは古いお付き合い:
 ネタニヤフ首相は、バイデン大統領の言うことを聞かないだけではない、国連決議も国連安保理も無視している。核弾頭を保有しているのに批難されることもなく、パレスチナ人を毎日のように虐殺し、パレスチナ人の家を壊し国連に逆らってイスラエル入植地を拡大しても、国連安保理はイスラエル非難決議を出せないでいる。それは、アメリカがことごとく拒否権を使って批難決議を握り潰しているからだ。それをいいことに、イスラエルはパレスチナの先住民であるパレスチナ人を根こそぎ追い払おうと、爆撃を続けている。
 さて、イスラエルとモロッコの関係は、公式に発表された<トランプ前大統領のモロッコ・イスラエル二国間交換取引>2020年に始まったのではない。今から67年前、1956年のモロッコ独立以来、裏の世界で続いてきた。モロッコ独立当時のムハンマドⅤ世は1961年に崩御し、息子の故ハサンⅡ世の時代も、フランスとアメリカの諜報機関が後ろ盾となって、モサド(イスラエル海外)諜報機関)がモロッコ秘密諜報機関を指導してきた。そして、今日まで指導されっぱなしというわけだ。当時、この活動を<ケープ1>と呼んでいた。モロッコ諜報機関の元将校の証言などを基に書かれた<陛下の将校>(アハメド・アル・ブハリ著)が、モロッコ秘密諜報機関とイスラエル対外諜報機関モサドとの古い関係を暴露している。
 故ハサンⅡ世時代のアラブ世界は、<イスラエル・ボイコット>だった。反イスラエル運動の旗を振っていた、パレスチナ庇護者急先鋒(自称)の故ハサンⅡ世モロッコ先王は、明らかに、パレスチナ人とアラブ人を裏切っていた。
 なぜ、モロッコはイスラエルと西サハラを餌に取引できたのか?
 モロッコとイスラエルの西サハラを巡る交換外交は、2020年、ユダヤ系アメリカ人でトランプ米大統領(当時)娘婿による<モロッコの西サハラ領有権の米国承認>と<イスラエルとの国交正常化>との取引きが、礎になっていると思っていた。が、実は、年月をかけた裏世界の被密情報機関がお膳立てをして、♠素人大統領を動かしたのだ。
 モロッコ国王は、西サハラを手に入れるためなら、何でもする。「イスラエルがいったん手にしたものは絶対に手放さない」と、豪語するシオニストと同じだ。

③ 独裁に反対のイスラエル市民、そしてモロッコ占領に反対の西サハラ難民被占領民:
 司法権限縮小の法案に反対するイスラエル市民は、クネセト(イスラエル国会)前にテントを張った。イスラエル空軍兵士は反政府デモの続行を誓い、航空関係者はゼネストを示唆した。
 イスラエルの小型テントは、イスラエル国旗をもじって青い線が入りお洒落だが、アルジェリアのチンドゥーフにある西サハラ難民キャンプのテントは、ボロボロだ。2010年にモロッコ占領地・西サハラのグデイムイジクで張られた抗議テントは、もっとボロだ。
  2010年10月13日、モロッコ占領地・西サハラの首都ラユーンに住む西サハラ住民約4万人が、15キロメートル砂漠に入ったグデイム・イジクで約3,000棟のテントを張った。モロッコ占領当局の非人間的な扱いに耐えかねて、町を集団脱出したのだ。ラユーンには約5万人の被占領西サハラ人がいると言われているから、子供や老人も含め住民の大部分がデモに参加したことになる。ラユーンでは、デモも集会も、被占領民西サハラ人には禁じられているので、「みんなでやれば怖くない」と、テントで集団生活をし、「モロッコ占領反対!西サハラ独立!!」と叫んだ。
 しかし、約一か月後の11月8日にモロッコ治安軍がテント・デモを襲い、焼き尽くした。
 2013年2月1日、モロッコの首都ラバトで、2010年のテント・デモ関係で逮捕した24人の軍事裁判が始まった。24人は裁判なしで既に約2年間、悪名高いサレNo1刑務所に収容されていて拷問や虐待を受けていた。そして、現在もその大部分が収監されたままだ。
 2023年7月24日、シデイ・オマル西サハラ国連代表は、国連安保理7月議長のバーバラ・ウッドワード大使に、モロッコ占領当局によるラシッド・スガイヤ西サハラ人活動家の暗殺未遂を糾弾する、報告書を送った。 ラシッド・スガイヤーは、グデイム・イジク・テント抗議デモで逮捕され今も収監されたままの西サハラ政治囚の釈放を求める活動を続けていた。2023年7月17日に突然、モロッコ占領軍に逮捕され拷問を受け、瀕死の状態でラユーン占領警察に収監された。家族の嘆願に占領当局から返事はなく、彼は行方不明のままだ。「ラシッド・スガイヤ行方不明事件は一例にすぎない。西サハラ被占領民に対するモロッコ占領当局の暴虐は、目に余るものがある」と、オマル代表は結んでいる。

 2023年3月のモロッコ占領地西サハラのダハラにおける<ネゲブ・サミット>は失敗しました。 立案者のブリタ・モロッコ外務大臣は、「劇的な外交事変勃発で、<ネゲブ・サミット>は、9月にダハラで復活する」と、不気味な予告をしました。
 <劇的な外交事変>とは、何でしょうね? やられっぱなしの西サハラには、何も対案がないんでしょうか??
 
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861

同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。

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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU

Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa]  英語版URL:   https://youtu.be/au5p6mxvheo

WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十  2023年7月29日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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