2017年8月14日、アルジェリアの地中海沿岸にあるブーメルデスで行われていた西サハラ難民・夏期大学を見学しました。 日中の最高気温は36度ぐらいで、地中海の風が爽やかでした。 その夜11時、アルジェ空港から約2000キロメートル離れたアルジェリア西部のテインドゥーフに飛び、そこから約50キロメートル砂漠に入った西サハラ難民キャンプに行きました。 そして翌朝6時、太陽が昇ると気温はたちまち40度を超えて正午には50度に近づきました。 50度を超す午後は、もう寝るしかない、、
① コロナ明けの西サハラ難民夏期大学:
第11回西サハラ難民・夏期大学は2023年8月2日から14日まで、アルジェリア港湾リゾート地・ブーメルデスのモハメド・ブーカラ大学で開かれている。スポンサーはアルジェリアで、主催者はSADR(サハラウィ・アラブ民主共和国)とASPSC(アルジェリアとサハラウィー人民連帯委員会)になっている。学長は、ハマ・サラメSADR西サハラ難民国会議長でサイード・アヤチASPSC委員長が副学長を務める。
夏期大学の目的は、半世紀という長い難民生活に飽き飽きしている若者のガス抜きと、あまりに速い世の動きについていけない活動家たちの再教育にあった。その一方で、授業をする講師たちが、情報交換をする場にもなっていた。
主催者は、「2023年8月2日の開会式で、SADR大統領でポリサリオ戦線議長のブラヒム・ガリ、ブシュラヤ・ハムウディSADR首相、サイード・アヤチASPSC委員長、カデル・オマル駐アルジェリア西サハラ難民政府大使などが挨拶をし、<半世紀の不屈と不服従の独立闘争>を継続することを、360名の参加者を前にして誓った。夏期大学のテーマは、西サハラの問題、メディア、電子戦の問題に対する解決策を見つけることや、西サハラを巡るAUアフリカ連合とUN国連の検証などにある。参加者はまた、独立インティファーダ、占領地の人権状況、法廷闘争、天然資源、若者、リーダーシップの政策、モスクの役割についても話し合う」と、発表した。
これまでと違って今年の参加者は、5か所ある難民キャンプ群で選ばれたポリサリオ幹部に限定された。残念だ。
アルジェリアのブーメルデスで8月2日から14日にかけて行われた
西サハラ難民夏期大学の風景
② 講座 <モロッコとシオニスト>:
アブデルマジド・テブン・アルジェリア大統領は、<西サハラに対するモロッコの主権を認めるというイスラエルの決定>に関して初めて発言し、「西サハラに対するモロッコの主権に対するイスラエルの承認は、絵空事で架空の話」と、表現した。
8月5日土曜日の夜にアルジェリア国営テレビで放映されたインタビューで、「私にとって、この承認はありえないことだ、、彼らイスラエル人たちはパレスチナの土地を不法に占領している。パレスチナの土地を不法占領していることは、誰も認めていない。ましてや、不法占領を西サハラにまで拡大して認めようとしているのは、あまりに理不尽で許せい!」と、批難した。
アルジェリア大統領は、「イスラエルの承認は空虚な作り話であり、国際的に大問題であり、解決されなければならず、その解決策は国連、国際法、安全保障理事会を通じて行われなければならない」と、強調した。
アルジェリア大統領の明確な発言を受けて、夏期大学でも、<モロッコとシオニスト>の腐れ縁が様々な実例で証明され、大討論になった。
アルジェリアのアラジュ・スリマネ博士は講演で、「モロッコ政権は麻薬取引の収益にプロジェクトの資金調達を依存している。シオニストたちは、サヘル(砂漠とサバンナの間)とサハラ地域で商売をするため、AUアフリカ連合への侵入を試み、モロッコの助けでアフリカ連合のオブザーバーメンバーシップになろうとしている。一方モロッコは、シオニストの助けを借りて、麻薬と不法移民で密貿易を続けている」と、モロッコを糾弾した。
テブン・アルジェリア大統領が語る<西サハラに対するモロッコの主権に対するイスラエルの承認>とは、8月18日にモロッコ国王が、「ネタニヤフ・イスラエル首相から、<モロッコの西サハラ領有権を承認する>との手紙を受取った」と、発表したことを指す。
因みに、シオニストとは19世紀にはじまるシオニズム(パレスチナにユダヤ人の民族的拠点を設置しようとする思想・運動のこと)の熱烈な信奉者を指す。
③ アルジェリアとアメリカの共同声明:
「アルジェリア及び米国は、西サハラにおける紛争当事者が国連主導の政治プロセスに前提条件なしに真剣に関与できるようにするための、国連事務総長個人特使スタファン・デ・ミストラ氏の努力への支持を表明する」と、2023年8月9日にワシントンの国務首で行われた、アハメド・アタフ・アルジェリア外む大臣とアントニー・ブリンケン・アメリカ国務長官との会談後に、マシュー・ミラー・アメリカ国務省報道官が共同声明を発表した。報道官は、双方は地域情勢とパレスチナ問題についても議論したことを伝え、「ブリンケン・アメリカ国務長官はまた、アルジェリアが国連安全保障理事会の非常任理事国に選出された際に、カウンターパートのアタフ氏を祝福し、国連安全保障理事会が取り組むすべての問題についてアルジェリアと緊密に協力する意欲を明言した」と、言及した。
アメリカ国務長官がコミュニケーションプラットフォーム(ツイッター)の個人アカウントで公開したツイートによると、「アハメド・アタフ・アルジェリア外務大臣との会談中、西サハラ問題に関する国連の政治プロセスに対し強力な支持を再確認した、、西サハラ問題の政治的解決策を見つけることを目的とした関係者との面会に関して、国連事務総長の個人特使であるスタファン・デ・ミストラ氏の努力に支援を惜しまない、。さらに、共通の関心事であるさまざまな地域的および国際的問題について、二国間協力の現実と展望について意見を交換した、、相互に関心のある多くの問題、特にサヘルの状況について話し合った」と、ブリンケンは書いている。
ブリンケン・アメリカ国務長官が言う<特にサヘルの状況>とは、7月26日にニジェールで勃発した軍事クーデターと、それに反発するECOWAS(西アフリカ経済共同体)の対立を巡るサヘル地域の一発触発状況を指す。ブリンケン・アメリカ国務長官は8月4日の国連ステイクアウト(待ち受け)記者会見で、「ニジェール問題に関しては、強いECOWASに期待」と、アメリカのニジェール軍事政権クーデターへの関与を否定して見せた。
が、、 アメリカは既に、行動を起こしていた!
アメリカ国務省は8月7日、ニジェール軍事政権にビクトリア・ヌーランド・アメリカ国務次官を送り込みました。 ヌーランド国務次官は記者団に、「ニジェールの首都ニアメを訪れ、軍事政権側の幹部と会談し、開発や治安などの分野で1億ドル(約146億円)規模の支援を約束したが、一時停止をする」と、鋭い目で通達しました。
ヌーランド女史は、<ポワソン・ピロット(フランス語で先導する小魚)>と呼ばれる外交つわもので、2013年以来、ウクライナ戦争を先導してきました。
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。
著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、
定価:本体1,800円+税、
発行人:松田健二、
発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。
「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc
「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。
「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo
「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2023年8月12日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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