2024年12月8日、バシール・シリア大統領はロシアに逃亡し、シリアは、ISなどの武装組織が割拠した2011年に逆戻りしました。 IS(アルカイダ)、ヌスラ戦線、そしてHTS(ハヤト・タハリール・アルシャーム・シャーム解放機構)と名前を変えて生き延びてきたアブ・モハメド・アル・ジョラニが、シリアの首都ダマスカスのウマイヤ・モスク金曜礼拝で、アサドがロシアに亡命する前の12月6日に、勝利宣言をしました。
彼は、地方の救国戦線代表のムハンマド・バシールを2025年3月1日までの暫定政府首相に選び、前アサド政権首相からの承認も取り付けました。
欧米が言うように、本当に、アメリカに見守られて彼と彼の仲間が、2週間足らずでこの大仕事をやったのでしょうか? ジョラニ(ジャウラ二とも表記)は、アメリカとイギリスの立派な<テロリストお尋ね者>なんですけど、
シリア首都ダマスカスのウマイヤモスクで、勝利宣言をする アブ・ムハンマド・アル・ジョラニHTS指導者
① アメリカ現政権のシリア軍事介入:
バシール・前シリア大統領がロシアに亡命する前日、トランプ次期米大統領が、「アメリカは、シリア内戦に介入すべきではない」と、自身のSNSに書き込んだ。トランプ前大統領は在任中に、シリアからの米軍撤退を試みたが果たせなかった。その理由をトランプ陣営は、バイデンを操り戦争商売をする軍産共同体デイープステイトの妨害とした。
翌日の12月8日、バイデン現米大統領はトランプに反発して、「アメリカはシリアに軍事介入を続行する。米軍の駐留はそのままだ。テロ組織との戦いのためだ」と、語った。その後バイデンは、シリアの75か所を空爆した。テロ組織の軍事施設を破壊するためだと言った。シリア反政府組織は10以上ある。米軍が破壊したのはどの組織なのか?しかも、バイデンが承認しているシリア反政府組織群のリーダー<シャーム解放機構>は、バイデン政権から国際テロ組織のレッテルを貼られているのだ。このでたらめを、残り任期1か月でどう説明するのだろうか?そのまま<トボケ・トンズラ・パターン>なのかな?
バイデン末期は、バイデンがホワイトハウスでトランプに約束した、<スムーズな政権移行>とは、まったく真逆な<妨害に次ぐ妨害><対抗に次ぐ対抗>で明け暮れしている。
12月12日、トランプがアメリカ・タイムの今年の顔に選ばれるという栄誉に、バイデンは、息子に続いて39人の囚人に恩赦を与え1499人を減刑し、寛大なリーダーの顔を見せつけた。そしてトランプにあてつけて、トランプが交代を命じたCIA現長官を先駆けて辞職させた。
トランプが2025年1月20日の第47代大統領就任式前にガザ戦争停戦を実現させようとゴルフ仲間の不動産屋でトランプ中東特使ウィトコフをカタールやイスラエルに送ったら、バイデンは慌ててブリンケンをカタールに送り中断している停戦合意交渉を再開させようとした。停戦はバイデン自身のメンツのためだ。が、理由はどうあれ、早くガザ戦争を止めて欲しい。この瞬間もネタニヤフ・イスラエル軍は猛爆撃で、ガザの人々の命を奪い続けているのだ、、
② イスラエル現政権のシリア軍事介入:
12月9日、ネタニヤフ・イスラエル首相は、「シリア・アサド政権はないのだから、そこと結んだ停戦合意は無効だ。ゴラン高原のシリア・イスラエル国連緩衝地帯は存在しない」と、理由を付けて、ゴラン高原のシリア側に展開していたUNDOF(国連停戦監視団)PKOをIDF(イスラエル国防軍)に襲撃させ、占拠した。UNDOFは第4次中東戦争(1973年)後に国連が設けたPKO(平和維持軍)で、2012年まで日本の自衛隊も参加していた。第一次シリア内戦が激化したので、危険だからと自衛隊は退散した。国連は国連緩衝地帯へのイスラエル軍事介入を国際法違反だと批難したが、いま現在もイスラエル軍は居座っている。
12月10日、IDF(イスラエル国防軍)は声明で、同軍の艦船が9日夜、シリアのアル・バイダとラタキアの港を攻撃したと発表した。当時、二港には15隻の船が停泊していた。
カッツ・イスラエル国防相は声明で、IDF(イスラエル国防軍)の狙いは「イスラエル国家を脅かす戦略的能力の破壊のためだ」と説明し、「シリア艦隊を破壊する作戦は、大成功した」と、自画自賛した。また、IDF(イスラエル国防軍)は、「シリア全土で空爆を350回以上実施した」と、発表した。「シリアの首都ダマスカス、ホムス、タルトゥース、パルミラなどにある、飛行場、軍用車両、防空兵器、兵器生産施設、武器倉庫、弾薬庫、などなどを、艦対艦ミサイルなどで攻撃した」と、自慢したうえで、「それらが過激派の手に渡るのを防ぐためだ」と、説明した。
イスラエルに対し、迎え撃ってくる敵はいないのだ、、ゲーム感覚で兵器の在庫整理をしているとしか思えない。ベン・サウル国連人権報告特別代表は、「ますます悲惨になるガザのジェノサイドを止めるには、ネタニヤフに兵器を与えないことだ」とし、「イスラエル兵器の99%はアメリカに次いでドイツからのものだ。今すぐ、アメリカはイスラエルへの兵器供給をやめるべきだ」と、アメリカを非難した。
ネタニヤフはこれまで、「シリアの新政府と平和な関係を望む」と、表明している。シリアへの軍事介入については、防衛権を持ち出し自国を防衛するためだとしている。が、何処の国が、どの反政府組織がイスラエルが防衛を余儀なくされるような攻撃をしているのだろうか?第三者の素人目にも明らかに、軍産共同体、アメリカのデイープステイトの命令としか思えない。バイデン任期中の兵器消費戦場を、シリアに決めたのだ。
ネタニヤフとバイデンとシリア新政府、そしてデイープステイトは、話がついているようだ。
③ 南アフリカに行った国連事務総長:
12月9日、シリル・ラマポーザ南アフリカ大統領がアルジェリアを訪問し、アルジェリア大統領アブデルマジド・テブンと意見を交わした。二人は、パレスチナ主権国家承認への無条件な支援と、アフリカ最後の植民地・西サハラ紛争の解決をAUアフリカ連合加盟国として目指すことを確認した。その解決策として、国連和平提案<国連西サハラ人民投票>を支持すると、強調した。アフリカ大陸北端のアルジェリと南端の南アフリカは、夫々、多大な犠牲を払って民族の独立を勝ち取った。両国とも、未だに外国の占領下にあるパレスチナと西サハラに、限りなく支援を続けている。南アフリカは、イスラエルのガザ・ジェノサイドをICJ国際司法裁判所に提訴し、アルジェリアは国連安保理でパレスチナ国家承認とICC國際刑事裁判所のネタニヤフ戦争犯罪人逮捕の実現を目指している。
12月10日、–アルジェリア外務省は、「占領されたゴラン高原の緩衝地帯を支配したシオニスト・イスラエル軍のシリアの主権の侵害とその領土に対する侵略を強く非難する」と、イスラエル首相のシリア内戦につけ込んだ暴挙を非難する声明を出した。
12月12日、南アフリカを訪問した、グテーレス事務総長はシリル・ラマポーザ大統領と会談し、国際金融構造の改革、開発資金、気候変動対策、2025年のG20アジェンダ、ガザ戦争、シリア内戦など、共通の関心事を取り上げ意見交換した。その後、音響施設の貧しいプレトリアの記者会見室で、「私は連帯と正義の使命を帯びて、南アフリカに来た」と、述べ、「アフリカには金融正義、気候正義、技術的正義が必要である」と、事務総長は2025年G20の議長国に就任する南アフリカに、エールを送った。
さらに事務総長は、「アフリカは大きな可能性を秘めているが、植民地主義の歴史に深く根ざした不正によって、アフリカ大陸は依然として足かせを履かされている」と、言及した。
国連は、イスラエル・ネタニヤフ政権によるゴラン高原国連緩衝地帯での国連PKO襲撃と占拠事件やシリア無差別爆撃に対して非難声明を出し、アルジェリアもそれに続くと、やっと沈黙していた西サハラ難民政府も口を開いた。毎度のことながら、ホスト国アルジェリアの顔色を伺いながらものを言う西サハラ難民政府に歯がゆい思いをするけど、1975年以来、約半世紀にわたって何もかもお世話になりっぱなしなんだから、、仕方ないね、、
西サハラ難民政府は自らのSNSで、遠慮がちに、「誇り高いシリア国民が困難を乗り越え、自由、尊厳、民主主義という正当な目標を達成し、彼らの結束と団結を維持すると確信している」と、西サハラ難民政府はシリア政変に向けた声明を出しました。
そして、外国の干渉を牽制し、「シリア領土の統一と領土保全を尊重するように」と、世界に訴えました。
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。 著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、 定価:本体1,800円+税、 発行人:松田健二、 発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。 「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc 「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。 「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo 「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2024年12月14日 SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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