4月24日も、ガザの難民が避難する学校と、食料を求めて殺到する群衆を空爆し、ネタニヤフ・イスラエル首相は、50人の民間人を殺しました。

食料の配給を待つガザの子供たち、国連安保理はどうしてこの子たちを、 いつまでも見殺しにするのか?!
しかし、イスラエル非難提案はアメリカの拒否権で、またもや葬りさられていくのです。 何が安保理の問題か? それは拒否権です。 誰もが、拒否権が悪用されていると言います。 拒否権とは、安保理15か国メンバーのうち。5か国常任理事国にだけ与えられた「ノー」と言える特権です。 世界を仕切っているのは米英露中仏・常任理事5か国です。
国連に加盟している国を除いた(193―5)188か国は、どの国も常任理事国になりたいのです。
① そもそも、誰が、何のために、拒否権を作ったのか?:
安全保障理事会における拒否権は、国際連合憲章第27条の規定に由来する。国際連合憲章には<拒否権>と明記されていないが、第3項に「常任理事国の同意投票を含む」とあり、全ての常任理事国が賛成票を投じないと決議案が採択されない。つまり、常任理事国のいずれか1か国でも反対票を投じれば、決議案の採択は阻止されることになる。
国連憲章の中で、大国一致の原則とも呼ばれる拒否権は、ダンバートン・オークス会議(1944年8月から10月)やヤルタ会談(1945年2月)という国際連合結成のための交渉の中で、議論の結果生まれた。アメリカ、ソビエト連邦(当時)、イギリス、中華民国(当時)の第二次大戦戦勝4か国は、大国が共同で行動するとともに、自国の主権的権利や国益を守るために、大国一致の原則を支持した。1945年4月12日に第33代米大統領に就任したハリー・トルーマンは、「拒否権がなかったら、国連結成は、米上院を通過しなかった」と書いている。
そして4月25日から6月26日にかけて開かれたサンフランシスコ会議(国際機構に関する連合国会議)で、何故かフランスも割り込んできて、大国5か国は、自分たちに拒否権が与えられなければ国際連合が成立することは無いと明言した。
かくして1945年10月24日にUN国際連合が設立され、1946年から国連安保理が活動を開始した。
現在、5か国の常任理事国(アメリカ、中国、ロシア、イギリス、フランス)と、加盟国の中から総会で選ばれるの非常任理事10か国の計15か国から構成されている。非常任理事国は2年毎に更新される。
② 常任理事国になりたい日本:
歴代の外務大臣も国連大使も、日本の国連安保理常任理事国入りを目指し、そのために安保理改革の必要性を訴えてきた。外務省ホームページで、日本の主張を学んでみる。
「(国連発足以降)国際社会の構図は大きく変化した。加盟国数も1945年の51か国から現在の193か国に増加した。安保理の構成は、1965年の安保理改革で非常任理事国の数を6から10に拡大し、理事国総数が11から現在の15となったが、その後60年近く 変化なし。常任理事国の拒否権行使により、安保理がその機能 を果たすことができないこともあり、安保理を現在の世界を反映したものに改革する必要性がある。
国連への主要な貢献国の存在を含む今日の国際社会の現実を安保理の構成にも反映することにより、より正統性、実効性及び代表性のある安保理に改革することが必要である。安保理の意思決定への直接的・恒常的な関与の必要性 北朝鮮問題を含め、日本の国益・安全保障の観点から安保理の中でその意思決定に恒常的に関与することが極めて重要だ。現状では、日本は、非常任理事国選挙に立候補し、当選しなければ、安保理に入ることはできない。」と、国連分担金第3位の<主要な貢献国>日本を強調した。
「国連創設60周年の2005年7月、G4(日本、ブラジル、ドイツ、インド)、 アフリカ・グループ、コンセンサス・グループがそれぞれ決議案を総会に提出するも、いずれも採択に付されず。2か月後の9月に開催された国連首脳会合の成果文書におい て、国連全加盟国の首脳が<早期の安保理改革>への支持を表明した。各国の意見と利害が様々な論点で複雑に絡み合っているため、異なる立場を収れんするための場として、国連総会の下に政府間交渉の場が 置かれている。日本は、ブラジル、ドイツ及びインドとG4として緊密に連携し、議論を積極的にリード。」と、安保理改革に向けた努力を宣伝した。
アルジェリアが率いる55か国アフリカ・グループは、国連最大の地域グループで、アフリカ大陸から2か国以上の常任理事国入りを求めている。
③ IGN国連安保理改革政府間交渉議長の会見:
2025年4月17日、クウェートのアルバナイ大使は政府間交渉(IGN)の議長として、安全保障理事会の公平な代表と理事国の増加、および安保理に関連するその他の問題について記者会見をした。大使は、国連総会で行われている交渉の状況について話した。大使は、「未来へのパックは、多国間主義を強化し、グローバルガバナンスへの信頼を回復するために、改革された安全保障理事会が中心的であることを認識している。」と、グテーレス事務総長の抽象的な見解を代弁した。
「このパックには、1960年代以来、安全保障理事会の改革に対する最も進歩的で具体的なコミットメントが含まれていることだ。それは、アフリカに対する歴史的な不正義に対処することに特に重点を置いて、理事会の有効性と代表性を高めることを目的としている」
さらに大使は、安保理改革のこの分野は、3つの主要な行動に分かれているとし、「最初の行動は、アジア太平洋、ラテンアメリカ、カリブ海地域など、過小評価されている地域や代表されていない地域やグループの代表性の向上など、収束の分野と改革のパラメーターに取り組んでいる、、また、メンバーシップのカテゴリーの問題について合意を見つけるための努力を強化することも求めている」と、大使は言い訳の迷路に入り込んだ。
大使は2つ目の行動に言及し、「将来のモデルの開発と統合を視野に入れた追加モデルの提出を奨励する」とし、 さらに、「第3の行動は、当面の間、国際の平和と安全を維持するための理事会の能力を強化するための暫定的な具体的措置を提案しており、第273条および理事会の意思決定プロセスに関連する国連憲章のすべての規定の完全な実施と遵守を含む」と、ますます迷路に深く入っていった。
クウェート大使は、すべての加盟国と交渉グループに対し、新たな提案を提出するか、既存の提案を更新するよう促した。「改革の精神には勇気と創造性が必要であり、安保理改革の核心的な要素についてコンセンサスを見出すために、すべての代表団の積極的な関与が引き続き不可欠だ」と、具体的にはこの問題を取り上げたくない意向を滲ませた。
大使は意味不明な言い訳をしたが、結局、国連も事務総長も安保理自身も、安保理改革に関しては何もやらないやりたくないということが、分かってきた。
拒否権支持派は、拒否権を国際的な安定の促進とか、軍事介入に対する牽制という言い訳をしますが、拒否権を無視して、ガザ戦争やウクライナ戦争が止みません。
拒否権反対派は、拒否権について「国際連合の最も非民主的な要素であり、常任理事国の国益のためにのみ存在し、戦争犯罪や人道に対する罪を裁く国際連合の活動を妨害している」と、批難し、拒否権の廃止や厳格な制限を求めています。
しかし、素人考えでも、安保理改革を決議するためには、少なくとも常任理事5か国の賛成が必須で、拒否権という既得権を失いたくない国々が、拒否権を使って提案を潰すであろうことは、容易に推測できます。
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。 著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、 定価:本体1,800円+税、 発行人:松田健二、 発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。 「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc 「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。 「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo 「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2025年4月26日 SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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