SJJA& WSJPO【西サハラ最新情報】646 「オデッセイ」が国連紛争地で撮影

 モロッコ国連外交団に親西サハラだと国連から追い出されたマチュー。リー記者から「オデッセイ・撮影反対の声が沸騰しているのを知ってるか?」と、メールが入りました。

 日本では殆ど取り上げられていませんが、英国の新聞、タイムズ紙、ガーディアン紙、フォーブス紙、テレグラフ紙、そして、ミドル・イースト・アイなどの国際ウェブサイト、さらにソーシャルメディアなどが<オデッセイ紛争地撮影反対運動>を取り上げています。 

 オデッセイは古代ギリシャ長編叙事詩オデュッセイアの英語呼称です。 問題になっているのは、それの映画を作る監督が、モロッコに売り込まれて、モロッコ占領地西サハラのダハラという国連指定の非自治地域で、撮影を始めたからです。 住民の許可なく、占領国という他国が、国連紛争地を無断で使用したから、大問題になっているのです。

① 映画<オデッセイ>は2026年7月公開予定:

 <オデッセイ>はマット・デイモン、シャーリーズ・セロン、トム・ホランド、ゼンデイヤ、アン・ハサウェイ、ルピタ・ニョンゴが出演し、クリストファー・ノーランが監督する、ホメーロスの叙事詩「オデッセイ」の映画化だ。配給は、ノーラン監督と<オッペンハイマー>で組んだ、ユニバーサル・ピクチャーズが担当している。全編IMAXフィルムカメラで「世界中を巡る神話的なアクション叙事詩」と、宣伝している。欧米人にはワクワクするテーマのようだ。フィルムカメラ IMAXとは70mmフィルムを水平方向に送ることで、1コマに使うフィルムの面積を通常の映画より広くし、高精細度の映像が得られるようにしたシステムだとか、、

 ノーラン監督の前作<オッペンハイマー>は、<原爆の父>と呼ばれた物理学者ロバート・オッペンハイマーの知られざる人生を描いた歴史ドラマで、96回アカデミー賞では7冠に輝いた。

 古代ギリシャの詩人ホメーロスは、神の呪いを受けて長年さまよい故郷に帰還し、自分の家にはびこる敵を倒した<オデッセイ>と言う名の英雄を描いた。トロイ戦争に参戦した他の英雄たちが腕自慢の豪傑であるのに対し、オデッセイは頭を使って勝負するタイプの知将とされた。<足の速いオデッセイ><策略巧みなオデッセイ>などと呼ばれている。女神アテーナーに寵愛された英雄で、妻はペーネロペー、息子はテーレマコスである。。

 トロイ戦争でオデッセイは、トロイの木馬作戦を立案し、ギリシャ連合軍を勝利に導いた。ギリシア側は、この「木馬」内部に兵士らをひそませて敵方トロイアの城壁外に放置、トロイア側が油断してこれを城内に引き入れると、人々が寝静まったころ中から兵士が現れて城壁を開け放ったため城は容易に陥落し、10年来続いたトロイア戦争は終結した、と伝えられている。

 現在では、内通者などを忍び込ませて巧妙に相手をおとしいれるを「トロイの木馬」と呼ぶ。悪意をもってパソコンへ侵入するコンピューター・プログラムを指すこともある。

モロッコ占領地・西サハラ、ダハラで撮影中の「オデッサ」、左にクリストファー・ノーランド監督、右に古代ギリシャ戦士に扮した出演者

② 何故、約2億5000万ドルの予算でダハラ市近郊でギリシャ神話を撮影したのか?:

 この映画はノーラン監督のこれまでで最大の映画プロジェクトで、ロケ地はギリシャ、イタリア、モロッコ占領地ダハラなど数カ所が選ばれているという。国際法違反を指摘する報告書では、ダハラでの撮影は、モロッコの政治的および法的な作為に満ちているとある。国際機関は、モロッコ当局が国連人権高等弁務官を含む国際監視団が占領下のサハラウィ領土に入るのを長年阻止していることにも言及している。アムネスティ・インターナショナル、国境なき記者団、フロントライン、ヒューマン・ライツ・ウォッチなども、国際調査陣を拒否し、モロッコ占領地内のジャーナリストや活動家に対する恣意的な逮捕、拷問、厳格な検閲など、組織的な弾圧の実践を継続しているモロッコ占領当局を、非難している。

 西サハラ難民政府は、西サハラ先住民族や国際法的地位の尊重なしに占領地で撮影される映画は「占領の正当化を助長することになる」と、強く異議を申し立てた。そして、モロッコ占領地・西サハラ・ダハラでの撮影を中止し、国際法の原則と関連する国連決議を遵守するよう求めた。

 一方、活動家やオブザーバーは、モロッコが占領を正常化する上でこの類の文化活動を製造し悪用していることを糾弾している。モロッコ文化大臣が撮影現場を訪問したことも指摘した。モロッコ占領政権が、ノーランのような才能を持つ芸術家や監督に、土地、資源、祖国に対する自由と主権に対する西サハラ人の権利を侵害させていると、強く非難した。西サハラは国連の監督下にある脱植民地化の対象となる地域であり続けている。

 西サハラ民族の正当な代表であるポリサリオ戦線は、国際法と脱植民地化と国連総会決議に則って、民族自決権行使になる国連西サハラ人民投票の開催を、改めて求めている

③ 映画の撮影現場ダハラは、ガザ・リビエラの前例?:

 MAP モロッコ国営通信は、「スペインの出版物は<カイトサーフィンの楽園ダフラ>と題する記事の中で、サハラ砂漠の端、モロッコ占領大西洋岸沿いの狭い半島に位置するこのダハラをウォータースポーツ愛好家にとって<理想的な桃源郷>と書いている。ダハラの透き通った海は、絶え間なく安定した風に吹かれており、カイトサーフィン、ウィンドサーフィン、サーフィンなど、一年中ウォータースポーツに理想的な条件を提供していると絶賛している」と、夏の観光シーズンに向け、大宣伝をした。「ダハラがホテルや商業部門で大きなブームを巻き起こしている」と、観光投資家を煽った。

 筆者が10数年前に訪れたダハラは、ひなびた漁村だった。ガザの昔も、沖に出れない漁師さんたちが投網で漁をする貧しい、が、長閑な暮らしをしていた。ただ、両漁村とも、夫々、モロッコ軍とイスラエル軍に占領されていて、息の詰まる生活を強いられていた、、ダハラ市民もガザ市民も、夫々の独立国家を目指し、国連決議と国連憲章を礎に、国際社会の支援を呼び続けてきた。

 しかし、2025年8月7日、ガザではイスラエル首相ネタニヤフによる完全制圧が宣言された。一方、ダハラではハリウッド映画の撮影が進行し、ますます、トランプを筆頭とする観光不動屋さんの<リビエラ開発>が加速している。

 ガザ停戦を豪語した<平和の大統領>トランプ氏は、ガザの難民や漁師を一掃し、更地にしたガザを地中海のリゾート地<リビエラ>にならった観光地開発を目指している。平和の大統領は米国から移民難民そして流民ホームレスを追い出し、ノーベル平和賞を一途に目指す。平和賞を企画するノールウェーの首相を、関税をだしに賞をせがんだとか、、ノーベル平和賞を取れなかったら、トランプ平和賞を作るのかな?

 8月15日の米露首脳会談を評して元トランプ一期大統領補佐官のジョンボルトン氏は、「ノーベル平和賞が欲しくてプーチン会談を設定ただけだ。」とCNNTV で語った。

 その元トランプ補佐官で元国連大使のジョン。ボルト氏が8月12日、スペイン・ラジオで、スペイン人ジャーナリスト、ヘクター・サントルムとインタビューをした。その中でボルトン氏は、「1991年に我々が行ったことは、サハラの人々に自分たちの将来がどうなるかを決定する機会を与えることだった」と述べ、「モロッコと西サハラは決して一つの国ではない」と、断言し、 <国連西サハラ人民投票>の再開を呼びかけた。

 「西サハラ人を難民キャンプに閉じ込めることは、受け入れられる解決策ではない。公正で永続的な解決策が必要である」と考えた。同氏は「モロッコ政府は1991年に承認したにもかかわらず、自決に関する人民投票の実施を望んでいない」と付け加え、「安保理決議はサハラ民族の自決に関する国民投票を組織することが最初から明確だった」と、強調した。

 元米国外交官で元米大統領国家安全保障担当補佐官のジョン・ボルトン氏は、未解決の西サハラ紛争がアフリカとヨーロッパの安全と安定に影響を与えると指摘し、地域の安全を守るために西サハラで<民族自決人民投票>を国連が開催するよう呼びかけ始めました。

 ガザはイスラエルのものではありません。

 ダハラはモロッコのものではありません。

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 「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。                                 著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、                    定価:本体1,800円+税、                                               発行人:松田健二、                                                      発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861

同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。

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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。                    「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc                         「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU

Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。                   「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo                      「Last Colony in Africa]  英語版URL:   https://youtu.be/au5p6mxvheo

WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十  2025年8月16日                    SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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