「今回はとても残念ではありましたが、平田さん、ベイサットさんが謝る必要は全くありません。、、」と、JNPC日本記者クラブからのメールをいただいた時、ホッとし心から感謝の思いがこみ上げてきました。 8月25日に予定していたJNPC日本記者クラブ でのベイサット西サハラ外相記者会見が、前々日の23日に心ならずも強制出国させられ、中止せざるをえなかったからです。 そして、同じく25日に予定していた面談に関しては、福島瑞穂・社民党党首殿と山添拓・共産党参議院議員殿に平田の代行を許していただき、西サハラの現状を僅かながらもお伝えすることができました。 日本人の優しさに触れた面談でした。
① 西サハラ難民大統領が国連事務総長に直訴状:
2025年8月20日、ブラヒム・ガリ・西サハラ大統領兼ポリサリオ戦線事務総長は、アントニオ・グテーレス国連事務総長に書簡を送り、西サハラ問題の最新の動向やモロッコ占領地・西サハラの状況について説明し、早急の解決を促した。
冒頭、ガリ大統領は、創立80周年を迎えた国連が、国連憲章と多国間システムを礎とする、平和と安全の保証人であり、人権と人民の権利の擁護者であることを、期待感を持って讃えた。
そして、「世界の平和、安全、安定の基盤を確立し、人権と人民の権利の尊重を確保し、抑圧された人々を擁護し、自由と尊厳を持って生きる権利を実現する上で、国連の役割は依然として最も重要である」と、強調した。
ガリ西サハラ大統領は、サハラ問題が国連総会及びその補助機関である脱植民地化委員会の未解決問題であることに言及し、今年は、1975年10月31日にモロッコ占領国が西サハラに侵攻してから50年を迎えると述べた。
その一方で、モロッコ占領当局は、西サハラ被占領民に対して、剥奪、排除、人種差別の政策を続け、西サハラ人の天然資源を盗掘し、外国勢力と共謀して西サハラ人の富や土地の略奪を続け、さらに、西サハラ人を故郷から根こそぎに追い出そうという焦土化政策を強行していると、付け加えた。2020年11月13日の停戦違反以来、モロッコ占領軍はドローンを含むあらゆる種類の武器を使用し続け、多数の西サハラ民間人と周辺国の民間人を殺害している事にも言及した。
ガリ西サハラ大統領は、1991年に紛争両当事者であるポリサリオ戦線とモロッコが受け入れた、安全保障理事会の決議第658号が、国連とアフリカ統一機構との合同解決策である国連安保理決議<国連西サハラ人民投票>であり、唯一の実際的かつ合理的な合意であることを、再度、強調した。
その上でガリ西サハラ大統領は、「ポリサリオ戦線は、誠実に安保理決議に従ってきた。安保理が設立した、MINURSO(ミヌルソ・国連西サハラ人民投票監視団) が、その本来の役職に就くのをひたすら待った。が、四半世紀経っても、未だに実現されていない。しかし、西サハラの人々は、西サハラの脱植民地化を目指す、国連およびアフリカ連合との協力を、いささかもやぶさかしない)と、改めて表明した。
ガリ西サハラ大統領は、「国連およびアフリカ連合の決議および関連する国際法の原則に従って、国連の後援の下に、誠実に前提条件や命令なしに、モロッコと直接的、真剣かつ信頼できる交渉を行うことに、我々、ポリサリオ戦線は用意万端整っている」と、書簡を締めくくった。
② TICAD9西サハラ代表団は国連事務総長に直談判できず:
8月21日の国連事務総長記者会見で、「1991年に国連が設定した<国連西サハラ人民投票>は、未だに行われていないが、いつやるのか?」と、筆者が質問した時、国連事務総長は、「西サハラ紛争の平和的解決に向けて、絶え間ない努力を続けている。」と、答え、「バイバイ!」とふざけながら会場を去り、そのまま大阪万博に出かけた。結局、西サハラTICAD9代表団はTICAD9にいたグテーレス国連事務総長に直談判できなかった。
筆者は、ニューヨーク駐在の西サハラ難民政府国連代表でMINURSO(ミヌルソ国連西サハラ人民投票監視団)調整官のオマル博士に、TICAD9の顛末を報せた。
オマル代表は、第80回国連総会で提出された西サハラに関する年次報告書を公表した。年次報告書の中で国連事務総長は、2025年3月20日に国連特別組織がモロッコに送った書簡を、引用した。書簡は「モロッコ占領国による大規模な土地保有、私有財産の破壊、避難を伴う沿岸開発プロジェクトは、著しく、物的侵害と人権侵害と国際法侵害の恐れがある」と、強く警告を発している。西サハラは、未だに、1960年の国連総会決議が定めた<未確定地域>(植民地)であり、未確定地域の領土、領海、資源は他国(占領国モロッコ)のものではなく、西サハラ被占領民のものなのだ。
モロッコは、まず西サハラの地位を確定して、西サハラの天然ガスや魚やリゾート開発に、手をつければいい。そのためには、まず、国連西サハラ人民投票をやるべきだ。ガザのリビエラ・リゾート開発やグリーンランドの地下資源を狙う「初めに欲ありき」トランプ政治を西サハラに適応させないよう、アントニオ・グテーレス国連事務総長殿、お願いします!
さらに報告書は、サハラ難民キャンプで17万人以上の西サハラ難民が日々体験している人道危機の悪化についても警告している。
報告書は、「(アメリカによる)人道支援の減少が食料、ガス、教育、水、衛生、栄養に影響を及ぼし、受け入れ国アルジェリアがWFPの割り当ての30%削減部分をカバーする援助を繰り返したにもかかわらず、栄養失調率は13%に達した、、2025年には1億390万ドルの資金不足が見込まれる。」と、指摘している。
数十年にわたる苦しみを終わらせるための公正な政治的解決策がない中で、サハラ難民が国際援助に依存せざるを得ないことを、物語っている。
③ ベイサット外務大臣はアルジェリア外務大臣にTICAD9報告、西サハラ難民はボランテイア砂漠清掃:
8月27日(SPS)-モハメド・ヤスラム・ベイサット西サハラ外務・アフリカ問題大臣は、アルジェリアのアフメド・アッタフ外務・海外共同体・アフリカ問題大臣に会うため、アルジェの外務省に出かけた。
アルジェリア外務省の声明によると、ベイサット外相のTICAD9報告に続いて、国連事務総長が最近発表し現在総会に提出されている報告書に基づき、外交レベルで西サハラ問題を解決する方策を話し合った。声明は、「国際的正当性の決議によって確認され、今後も確認されているように、西サハラの人々が民族自決権の行使を目指す、国連事務総長とその個人特使の努力を支持する」と、付け加えた。会議には、ハトリ・アドウ駐アルジェリア・西サハラ大使、モハメド・シェイク西サハラ・アルジェ大使館一等書記官が、参加した。アルジェリアからは、外務省高官が出席した。

左にベイサット西サハラ外相、右にアッタフ・アルジェリア外相、アルジェリア外務省にて
8月27日、ベイサット外務大臣がアルジェのアルジェリア外務省で、アッタフ・アルジェリア外務大臣にTICAD[9の報告をしていた頃、西サハラ難民キャンプでは、ボランテイア砂漠清掃が始まっていた。アル・シャヒード・アル・ハフェズと言う名の西サハラ難民キャンプとアウセルドと言う名の難民キャンプを結ぶ約40キロの砂漠の道をお掃除だ。
ブジドゥールと言う名の難民キャンプとスマラと言う名の難民キャンプを結ぶ約35キロの道の清掃も同時に始まった。道といっても、舗装された道路のことではない。轍の跡があるラフロードのことを言う。50度を超えた炎天下で、358人のボランテイアが砂漠清掃に参加した。
西サハラ難民キャンプは、アルジェリアの西端チンドウーフ州砂漠の6か所に点在している。西サハラ難民政府のあるラボニセンターから、30キロ、40キロ、50キロ、、と、伝染病の蔓延を避けるため離されている。友人のシェイクさんはラボニセンターから約160キロ砂漠に奥深く入ったダハラと言う名の難民キャンプでリーダーをしている。やっとつながったメールに、「50度なんてとっくに超えて、危険だからうちはボランテイア砂漠清掃を取り止めた」と、返信がきた。
「状況のひどさには違いがあるとはいえ、ガザの状況と西サハラの状況は重なって見えます。ベイサットさんには、お気になさらないようお伝えください。」と、日本記者クラブのメールは結んでありました。 深謝あるのみです。
パレスチナのアッバス議長は、9月の国連総会一般討論で例年のように、世界の首脳の一員として、演説する予定です。が、「トランプ米政権は、パレスチナ外交関係者に一切ビザを出さない」と、キューバ移民二世のルビオ米国務長官が、8月29日に発表しました。
国連総会でアッバスPLO議長の演説が聞けることを、祈ってます。
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「サラー西サハラ難民アスリート」の出版情報です。 著者:平田伊都子、写真構成:川名生十、画像提供:アマイダン・サラー、SPS、 定価:本体1,800円+税、 発行人:松田健二、 発行所:株式会社 社会評論社、東京都文京区本郷2―3―10、電話:03-3814-3861
同じ「社会評論社」が出版してくださった「ラストコロニー西サハラ(2015年)」、「アリ 西サハラの難民と被占領民(2020年2月)」にも、お目を通してください。
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Youtube2018年7月アップの「人民投票」(Referendum)もご案内。 「人民投票」日本語版 URL :https://youtu.be/Skx5CP3lMLc 「Referendum」英語版 URL: https://youtu.be/v0awSc25BUU
Youtubeに2018年4月アップした「ラストコロニー西サハラ」もよろしくお願いします。 「ラストコロニー西サハラ 日本語版URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo 「Last Colony in Africa] 英語版URL: https://youtu.be/au5p6mxvheo
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名生十 2025年8月30日 SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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