モロッコ国王陛下は、このたび、中国に行幸されました。パナマ文書にお名前を連ねられる大金持ちでおわすのだから、どこに<大名旅行>をされようと都知事の政治資金規正法違反事件と違って、日本の庶民に関わり合いのない事かも知れません。が、中国と交わした契約がどんなものだったのか?西サハラに関する国王の謀略が含まれていないか?大いに気になります。両国の共同声明を検証してみましょう!
(1) モロッコ国王陛下が中国へ:
2016年5月12日付けMAP(マグレブ・アラブ・プレス)モロッコ王国通信によると、「モロッコ国王陛下は習主席の招待を受け、5月11日から中国を公式訪問された。国王陛下は、<モロッコは、アフリカとアラブで、中国の重要な協力者になる用意がある>と、述べられた」と、発表した。さらに、「共同声明は、双方の主権と領有権を尊重し内政に干渉しないということを大前提にして、地域の平和と安全を目指した戦略的パートナーシップを築き上げていこうと謳っている」と、MAPは報じた。
一方、新華社(中国国営通信)は、「戦略的パートナーシップは両国関係の歴史的一歩となる。それはあらゆる分野において、両国協力体制の礎となっていく。中国とモロッコは一緒に、<中国アラブ・フォーラム>や<中国アフリカ・フォーラム>を実現させていく。また、習主席は、観光や教育と並んで、モロッコとの軍事協力も強化したいと語った」と、伝えた。
(2)15項目の中国モロッコ契約覚書;
MAP(マグレブ・アラブ・プレス)モロッコ王国通信は、両首脳の会談と共同声明の後、両国間で契約覚書が取り交わされたと報じている。覚書の主題と契約者名を記しておく。
覚書①-モロッコ・タンジェ住宅街公園の建設:中国政府とモロッコ王国。 覚書➁-両国の投資と金融の協力同意:中国工業商業銀行とモロッコ政府。 覚書③-南北水輸送:中国港湾技術公社とモロッコ政府。 覚書④-契約書草案:中国SEPCOⅢ電力建設公社とモロッコ電気飲料水局。 覚書⑤-観光:中国国際旅行サービス公社(CITS)とモロッコ観光局。 覚書➅-132億円の契約草案:エネルギー投資会社(SIE)などと中央人民銀行。 覚書⑦-モロッコの太陽と水と熱の開発共同計画:リヌオ・リッターとSIEとケイプ・ホールディングとアッテイジャリワファ銀行などなど、、。 覚書⑧-121億円の契約草案:ヘレン・ソーラーとアッテイジャリワファ銀行。 覚書⑨-中国モロッコアフリカ開発:中国アフリカ開発財団(CAD)とアッテイジャリワファ銀行。 覚書⑩-中国モロッコ国際BMCEアフリカ銀行:中国とモロッコの合同金融技術開発団体。 覚書⑪-中国アフリカ開発財団(CAD)とBMCEアフリカ銀行。 覚書⑫-モロッコのセメント計画:モロッコ政府と中国政府。 覚書⑬-鉄道路と自動車路と航空路のためのハブ(中継地)開発:シチュアン・ヒュアティ建設会社と国営運輸商会(SNTL)とアッテイジャリワファ銀行。 覚書⑭-技術とインフラのノウハウ交換:中国港湾技術公社とアッテイジャリワファ銀行。 覚書⑮-中国アフリカ国境なきEマーケットの確立:クレヴィ中国とSNTLとアッテイジャリワファ銀行。
MAP(マグレブ・アラブ・プレス)モロッコ王国通信は、「中国モロッコ覚書のEマ-ケット計画は、中国産物資をより一層アフリカに浸透させるためにある。まさにアフリカへの玄関、つまり諸物資の出荷地となるモロッコのハブ・商売中継地は、中国アフリカ進出の拠点となるのだ」と、モロッコのハブ港ダハラを切り札にして、中国に売り込んだ。
禁じられているリン鉱石を採掘し輸入し続けるモロッコ。モロッコ占領地・西サハラのラユーン港に横付けされている外国の鉱石輸送船。
(3)モロッコと中国、似てないのに似た者同士:
中国の国家体制は、大統領を元首とする人民共和制だ。実際に国政を動かすのは中国共産党であり、共産党の最高指導集団である中央政治局常務委員会が権力を掌握している。
モロッコの国家体制は国王を元首とする立憲君主制だ。現国王はアラウィ―朝のムハンマド6世で、イスラム教最高指導者で、議会の解散権や条約の批准権など政治権力を掌握し、モロッコ軍最高司令官でもある。
モロッコは王権主義、中国は共産主義と、全く似ても似つかない両国だが、21世紀の世界では経済優先、自国の利益が最優先という共通点を持つ<似た者同士>だ。優先事項が一致すれば、もうお友達。モロッコ国王も中国最高指導者もパナマ文書に名を連ねる、大金持ちだし、報道に関しても国が牛耳っている。国営通信の新華社とMAPを見てみる。
新華社(新華通訊社)は、中華人民共和国の国営通信社だ。中国の一般ニュースを海外向けに配信するほか、政府要人の発言も独占的に配信することが多い。2006年9月、新華社は中華人民共和国国務院(内閣)の決定に従って、外国通信社の中国国内における配信を新華社管理下に置き、配信内容に制限を設けることを定めた。
MAP(マグレブ・アラブ通信)モロッコ王国通信は1959年5月31日に、モロッコの首都ラバトで、メハディ・ベノウナ によって創設された。そして同社は、1973年に国有化された。モロッコ国王陛下と王室ニュースを中心に、新聞、テレビ、ラジオなどに配信している。
モロッコは、西サハラをアフリカ大陸へのハブ地域として、中国に売り飛ばそうとしています。モロッコは西サハラを南サハラまたはモロッコ・サハラと呼んで、西サハラの地理的戦略的重要性を中国に売り込んでいます。そして、国際法が禁じている西サハラの天然資源や漁業資源、強烈な太陽光線や白砂までも、たたき売りの台に載せています。西サハラはモロッコの物でないのだから、モロッコは、盗品を中国に売りつけているのです。
中国はアフリカ大陸の経済的制覇を、モロッコは西サハラの完全制覇を目指しています。夫々が不法な領有権問題を抱えている両国は、あらかじめ内政干渉しないことを明文化したうえで、欲たけた商売契約を結びました。こんな狡い違法取引がまかり通っていいものでしょうか?
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名敏之 2016年5月17日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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