「モロッコ人はクズだ」と、2017年2月19日、オランダの極右国会議員ガート・ワイルダースが支持者を前に叫びました。 さらに議員は、モロッコ移民の追放とイスラム教礼拝所・モスクの閉鎖を約束しました。 確かに2016年2017年のヨーロッパ・テロ惨殺事件は、ISイスラム過激派と繋がるモロッコの移民二世たちが引き起こしました。 しかしモロッコ移民二世たちは酒は飲む麻薬はやる売春はやる、イスラム教が禁じていることに何でも手を出す悪ガキたちで、イスラム教徒ではありません。 ところがガート議員のイスラム教徒とアラブ人への憎悪は、オランダだけでなくヨーロッパ全土で熱狂的な支持を広げていきました。 各国の国粋主義者たちがこの機運を利用し、それぞれの選挙で勝利を目指しています。 <右翼・春の嵐>がヨーロッパに危機を巻き起こしているようです。
(1) モロッコ国王陛下はガーナ訪問:
2017年2月16日から18日にかけて、モロッコ国王モハンマドⅥ世殿下はガーナを公式訪問した。CORCAS(モロッコ王立サハラ問題諮問評議会)によると「輸送、観光、エネルギー、貿易、漁業農業などに於けるモロッコ・ガーナ二国間の経済協力、、ナイジェリアからモロッコに至るガス・パイプラインの設置計画などが取り上げられる」と、経済が主な訪問目的とある。鉱物資源に乏しいモロッコが考えそうなアフリカ経済侵略だ。
さらにモロッコが迫られているのは、ヨーロッパから追放されようとしているモロッコ人移民問題だ。約7,000万モロッコ総人口のうち、ヨーロッパに500万から700万のモロッコ移民がひしめいている。いまやオランダを始めヨーロッパの極右勢力が、モロッコ移民を追放しようとしている。モロッコ国王陛下はアフリカ内陸にモロッコ移民を入植させるつもりなんだろうか?
(2) 西サハラ難民大統領はモザンビークへ:
2017年2月21日から3日間、モザンビーク大統領フィリぺ・ニュシの正式招待を受けて、ブラヒム・ガリ西サハラ難民大統領は公式訪問をした。訪問の目的は、二国の友好関係を深め、様々な問題と共通の利益に関しての意見交換を行い、西サハラ独立運動への支援を確認することにある。大統領には、ワリド・サレク外務大臣、ブラヒム・ムハメド情報省局長、ファテイマ・メへデイ女性同盟会長などが同行した。
宗主国ポルトガル打倒を目指したモザンビークの独立戦争は、1964年に始まった。その10年後にポルトガル本国でカーネーション革命が勃発し、それをきっかけに1975年、ポルトガルから独立を勝ち取った。アントニオ・グテーレス新国連事務総長がポルトガル社会党に入党したのもこの頃だ。その後、若きグテーレスはカーネーション革命を推進し、1992年9月には社会主義インターナショナルの副議長に任命された。グテーレスの運動に呼応し、独立後も内戦が続いていたモザンビークにも1992年、やっと平和が訪れた。
(3)ポルトガル人国連事務総長の優先事項はヨーロッパ:
10年以上も続いたモザンビーク独立戦争を、目の当たりにしてきた前宗主国ポルトガル出身の政治家アントニオ・グテーレスは、1995年、ポルトガル首相に就任した。ポルトガル首相在任中の1999年に、ポルトガルの旧植民地だった東テイモールで国連東テイモール住民投票が行われた。グテーレス首相は東テイモールの独立運動を支援した。という訳で、元ポルトガル首相で元UNHCR国連難民高等弁務官のアントニオ・グテーレス新国連事務総長に、西サハラ難民政府は多大に期待している。
2017年2月22日に国連安保理で、モロッコによるMINURSO(国連西サハラ住民投票監視団)に対する妨害が検証される予定だった。しかし、安保理ではMINURSO検証を非公開にし、その後のプレス・ブリーフィングでも、討議の詳細は明らかにされなかった。未だにMINURSOの文民職員の多くがモロッコに追放されたままで、機能していない。さらに、モロッコは1991年のモロッコと西サハラの停戦協定を破って、国連緩衝地帯をモロッコ兵に侵犯させたままだ。ところが国連安保理は、国連に盾つくモロッコに何の制裁も加えない。国連決議を無視するイスラエルに制裁決議を国連が出せないのは、アメリカが拒否権を使ってイスラエルを庇うからで、モロッコの場合はフランスが庇う、モロッコとイスラエルに、国連はなめられている。
モロッコ国王と西サハラ難民大統領のアフリカ国訪問は非常に対照的です。 モロッコ国王は見せ金をちらつかせて貧しいアフリカ諸国を植民地にしようとしています。 一方、金のない西サハラ難民大統領は、独立だの民族自決権だの、、賞味期限が切れそうな言葉で支援を繋ぎ止めようとしています。
ちなみに、西サハラ問題が予定されていた2月22日の国連安保理では、新国連事務総長が西サハラ難民ではなくヨーロッパ危機に焦点を当てたようです。 「弱い人に寄り添っていく、、」なんて、国連事務総長就任式ではカッコつけていたのに、、やっぱりポルトガル人グテーレス国連事務総長の優先事項は地元ヨーロッパ問題なのでしょうね?
いつになったら、西サハラ問題が国連の中で優先事項になるのでしょうか?
西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名敏之 2017年2月24日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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