2017年5月4日、アルジェリア国会議員選挙が行われ、約23,000,000の有権者はブーテフリカ大統領が率いる与党を支持しました。 5月7日には39才のマクロン大統領が選ばれ、5月9日には韓国で北朝鮮との融和を主張する文在寅大統領が誕生しました。 選挙イベントはず~と続き、結局、選挙選挙でやみくもに忙しく踊らされ続けて、世の中の不幸はほったらかしにされたままです。 地中海では満員の移民ボートが沈みたくさんの移民が溺死、アフリカでは餓死が続出、、イラクやシリアでは戦死者が後を絶たず、難民避難民は増加の一途をたどっています。 そんな中、41年間も世界から忘れられてきた西サハラ難民は、今年もまた、プレスから無視されようとしていました。 が、国連内部取材を続けているリー記者のお蔭で、再登場出来ました。
(1) リー記者 VS モロッコ系記者ファシ:
2017年4月28日に国連安保理はアメリカが提出した、国連安保理西サハラ決議2351を全会一致で可決した。その後行われた会議場外での記者会見には、モロッコ大使とアルジェリア大使と西サハラ政府国連代表が発言した。しかし、西サハラ政府代表の記者会見映像だけが、国連ウェブサイトからカットされていた。2017年5月1日、2日、3日、4日、5日と、5か間続いて、定例記者会見でリー記者が、西サハラ国連代表の記者会見がカットされた理由を聞いた。「調査中だ。モロッコ代表からの解答待ちだ」と、報道官は同じ返事を繰り返した。
5月8日やっと、国連報道室に現れたモロッコ系のファシ記者が、「西サハラ国連安保理決議採択の後、会議場外でモロッコとアルジェリア大使の記者会見が終わって、20分間も西サハラ代表の発言を聞かされた。その映像はカットされていたが、今日にも再現されるようだ、、一体、会議場外での記者会見はどういう規則に基づいているのだ?あの場を利用できるのは、加盟国だけなのではないか?西サハラのいう独立外交官のロビー活動が許されていいのか?」と、文句をつけた。独立ジャーナリスト(フリー)のリー記者が、「去年は放映されるまでに一週間、今年は10日もかかった。こんな不公平なことが国連で起こっていいのか?西サハラは西サハラ問題の当該地だ。国連記者会見は勿論、国連安保理にどうして登場させないのか??」と正した。
(2) ヘイリー米国連大使 VS モゲリーニEU外交トップ:
5月9日、国連安保理はEUヨーロッパ連合とUN国際連合のEU-UN公開連帯会議を開いた。国連安保理5月議長国のウクライナ国連大使が議事進行を務め、EU外交トップ・モゲリーニ女史の演説をかわぎりに、日本を含む安保理15理事国が夫々演説をした。が、なんと言っても注目は、UN分担金削減や国連気候変動委員会などからの撤退を予告しているアメリカの国連大使と、それを阻止しようとするEU外交トップの激戦だった。しかし、外野の期待を裏切って、血を見るまでには至らなかった。
モゲリーニは、EUがいかにUNに貢献しているかを改めて強調し、「EUの道はUNの道と同じだ。我々は同じ原則を信じ、同じ価値観を持って、同じ基本的な理想を構築しようと努めている、、我々の友人である英国が去る事を決心したのは、本当に寂しいかぎりだ。が、セラヴィ(それも人生)、EUは生きていく、、」と語った。さらに、EUが変わらずUNPKO国連平和維持軍予算の40%を負担していることや、WFP世界食糧計画、UNICEF国連子ども基金、UNHCR国連難民高等弁務官などへの貢献を列挙した。そして、米国連大使ヘイリーに向かって、「さて、はっきりさせておきたい、直接、我々のお友達、アメリカにもの申したい。これらの国連機関に投資を続けていくことは、我々にとって非常に基本的なことなんだ。これらの機関は、世界の平和と安全を守っていくために非常に重要で、その出費は不可欠、いやもっと必要だ。我々ヨーロッパ人は、我々自身の安全を守るためにも、この国連機関の不可欠な出費を支援しなくてはならないと考えている」と、アメリカに迫った。
ヘイリーは、「EUが我々(アメリカ)に呼応して、シリア制裁に加担してくれていることに感謝している。が、もっと必要だ、、アメリカとEUは結託して、モスクワがミンスク合意(ウクライナとクリミア関連決議)を完全に受け入れるまで、制裁を続けなければならない、、我々はEUとその関係諸国に、北朝鮮に対するさらなる制裁を求める、、」と、アメリカの制裁に対して協力を強制した。一方、パレスチナ人侵害や占領政策に関しイスラエル非難を続けるEUとUNに対して、「人権委員会が固執している反イスラエルという偏見を取り除くことを求める」と、見直しを迫った。
(3) ブハリ西サハラ難民政府国連代表が国連ウェブサイトに復活:
リー記者の連日にわたるしつこい質疑に根負けして、国連報道局はカットしていたブハリ西サハラ難民政府国連代表の記者会見をウェブサイトに復活させた。
2017年5月9日、10日ぶりで国連ウェブサイトに復活したブハリ西サハラ難民政府国連代表の記者会見をお届けする。
ブハリ代表が、「ご存知のように、西サハラ国連安保理決議2351が安保理で採択された。私の方から基本的なことを2点、挙げておく。その1は、我々の国は1975年からモロッコに占領されままで、我々国民は自由と民族自決権とを獲得するために戦ってきたこと。その2は、一年前に国連安保理決議2285が採択され、国連事務総長とロス国連事務総長個人特使が中断していた両当事者交渉を再開しようと努力したが、モロッコが国連平和維持軍の文民要員を追放したり、8月には国連緩衝地帯に侵攻したりで、事態はますます悪化したことだ」と、2点を指摘した。4月27日、安保理決議案を準備していたヘイリー米国連大使に事実を説明する手紙を出したことを明らかにし、2017年の新国連安保理に対して、「①国連緩衝地帯での停戦協定の遵守、②MINURSO国連西サハラ住民投票監視団、国連事務総長と総長個人特使への全面的協力、③民族自決権を目指す平和的解決を推進」と、3点を列挙し、2週間前に指名されたまま放置されている国連事務総長個人特使の承認を急かした。
リー記者たちの「新国連体制への注文は?」という質問に、「モロッコは、国連提案を容認するが、結局従わないという戦略を取り続けてきた。あなた方はしっかりモロッコの策略を監視し、正して欲しい。我々は1991年の国連西サハラ住民投票提案に始まって、2002年のベーカー提案、2007年の和平交渉、2012年のロス国連特使拒否と、モロッコから苦い思いをさせられてきた。これ以上、モロッコのズルズル策略に騙されたくない」と、答えた。
さらに、「モロッコは国際法に反して、国連が不確定地域と指定するモロッコ占領地・西サハラで密漁密採掘を続けている。我々と一緒にモロッコの国際法違反を監視続けて欲しい。我々は自由と権利と自決権を獲得するまで、戦い続ける」と言及した。
マチュー・ルッセル・リー記者はフリーで国連内部を取材しています。 国連報道室の定例記者会見や国連安保理や国連総会などの取材は勿論、国連内部の不祥事にも目を光らせています。 かって、国連職員の汚職を暴いた時には国連を追い出され、段ボールを運びながら、下手なギターの伴奏で、「国連は誰のもの?」と自作の恨み節をバックに、プロモーションビデオを創りました。 しかし、マスコミが注目しない弱小国や虐げられた人々にとってリー記者はなくてはならない存在で、みんなが嘆願書を国連事務総長に出して、彼を国連に復活させました。 そして、世界に置き去りにされてきた西サハラを、リー記者は復活させました。 リーさん、ありがとう!
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名敏之 2017年5月12日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・エアソシーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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